特集
協働で支えるヤングボランティア推進事業
生涯学習課
えひめ「高校生学力向上ネットワーク」構築事業
高校教育課
人権教育研究指定校事業報告1  新居浜市立金子小学校
人権教育研究指定校事業報告2  宇和島市立三間中学校
人権教育研究指定校事業報告3  愛媛県立川之江高等学校
人権教育課
通級による指導担当教員研修会
特別支援教育課

協働で支えるヤングボランティア推進事業
生涯学習課

1 はじめに

 ヤングボランティアセンターは愛媛県美術館南館内に設置されており、平成24年1月現在19校199名の高校生スタッフが様々なボランティア活動を企画・実施しています。平成22年度からはNPOと協働することで活動の一層の充実と広がりを目指しており、学識経験者・学校関係者・ボランティア関係者・NPO関係者などで構成する「ヤングボランティアセンターサポート委員会」がヤングボランティアセンターの運営・成果について評価・検証を行い、支援団体とのコーディネートを行っています。
ヤングボランティアセンター
ヤングボランティアセンター
企画を話し合う高校生の様子
企画を話し合う高校生

2 平成23年度の主な活動紹介

(1)東日本大震災への取組
 福音公園づくりボランティア活動において、震災被災地への応援メッセージパネルを設置しました(3月26日)。ハートの手形やメッセージは福音小学校の児童が制作協力してくれました。
公園の橋脚にパネルを設置する様子
公園の橋脚にパネルを設置
応援メッセージパネル
応援メッセージパネル

 第1回ヤングボランティアスタッフ会議で、「震災について」を活動のテーマとして取り上げることを決定しました(5月29日)。スタッフ会議は高校生スタッフが、ボランティア活動の企画や運営の方法について話し合う会議です。
スタッフ会議の様子
スタッフ会議の様子

 東日本大震災復興支援を考える高校生講座を実施しました(7月2日)。被災地の状況をもっと知りたいという高校生スタッフの意見を汲み、宮城県へ派遣された上田知子先生(松山東高等学校養護教諭)を講師に招き、震災の状況について学ぶとともに、今後自分たちにできることについて意見交換を行いました。
講座の様子
講座の様子
意見を交換する高校生の様子
意見を交換する高校生

 シャッターボランティアin松山城の活動を通して、被災地からの修学旅行生(岩手県立大槌高校)と交流を図りました。記念品として高校生スタッフがデザインしたクリアファイルを作成し、メッセージカードを入れて手渡しました(10月30日)。
本丸広場で迎える様子
本丸広場で迎える様子
甲冑の着付けも体験
甲冑の着付けも体験

(2)シャッターボランティアと甲冑着付けボランティア
 平成22年度から、観光地で観光客と言葉を交わしながら記念撮影のお手伝いをするシャッターボランティアに取り組んでいます。今年度はゴールデンウィーク(5月3・4日)、夏休み(7月31日、8月7日)、秋の観光シーズン(10月30日)、松山城の誕生記念日(1月15日)と回数を増やして季節ごとに実施しました。松山城ではシャッターボランティアとあわせて甲冑着付けの手伝いも実施しています。

来島海峡展望台(今治)
来島海峡展望台(今治)
松山城天守閣下
松山城天守閣下
天守閣内での甲冑着付けの様子
天守閣内での甲冑着付け
ちびっこ試着体験のお手伝いの様子
ちびっこ試着体験のお手伝い

(3)読み聞かせボランティア活動

 平成21年度から継続して読み聞かせボランティア活動に取り組んでいます。絵本や紙芝居の読み聞かせを学ぶために講習会を行い(7月30日)、県立図書館で実演(8月6日)し、アイテムえひめで開催されたキッズフェスタ(10月15・16日)に参加しました。
読み聞かせ講習会
読み聞かせ講習会
お話し会(県立図書館)
お話し会(県立図書館)
キッズフェスタ
キッズフェスタ

(4)椿小学校区通学合宿
 余土公民館市坪分館を会場に、高校生スタッフ9名と椿小学校の20名(4から6年生)が協力しながら寝食を共にしました。高校生は合宿のテーマ「仲間と明日をつくろう」のもとに話し合いを重ね、食事のメニューやレクリエーションの内容等を決めるために、8月から7回のミーティングを重ねました。9月28日に椿小学校の4から6年生へ案内をしました。高校生は説明会に行くことができないので、ビデオレターを製作して参加呼びかけをしました。
市坪分館を見学
市坪分館を見学
食事メニューを考える高校生の様子
食事メニューを考える高校生
椿小学校への説明会
椿小学校への説明会

 10月26日から10月29日の3泊4日で通学合宿を実施しました。高校生は食事作り、入浴、ふれあいタイム(レクリエーション)、小学生の宿題指導、球技大会と多くの場面で活躍しました。
朝食作りの様子
朝食作りの様子
宿題を指導する高校生
宿題を指導する高校生
ふれあいタイムの様子
ふれあいタイムの様子

 3泊4日の通学合宿を終えて、楽しい思い出とともに心に残ったものがありました。

<小学生の感想>
 私はこの合宿に参加して仲間と集団でくらしていろんな事を学びました。仲間と買い物をして、遊んで、料理を作って、楽しいことだらけでした。新しい友達もできて話しかけられなかった人にも話しかけられるようになり、とてもうれしかったです。これからも新しい友達をつくり、みんなで協力したいです。(5年生女子)

<高校生の感想>
 今回の合宿で二つのことを学びました。一つ目は子どもに対する指導法です。二つ目はチームワークの重要性です。高校生スタッフの誰か一人でも欠けていれば、この合宿を成し遂げることはできなかったと思います。精神面での疲労も、夜の語り合いで解消することができました。ボランティアは、人のためでもあるけれど、本当は自分の成長の糧になることを知りました。(2年生男子)


(5)献血呼びかけボランティア
 愛媛県赤十字血液センターの協力を得て、今年度は大街道献血ルーム(6月11日・9月25日)、エミフル松前(7月16日・1月9日)、サティ今治(9月11日)で、献血呼びかけボランティア活動を行いました。今後も血液不足解消に貢献したいと考えています。
サティ今治店の様子
サティ今治店
大街道献血ルーム前
大街道献血ルーム前
エミフル松前の様子
エミフル松前

(6)福音公園づくりボランティア
 国道11号線小坂交差点の高架下にある福音公園を安全で、よりよい公園にしていく活動をNPO法人えひめ子どもチャレンジ支援機構、福音小学校などと協力して取り組んでいます。第1回の企画会議(12月18日)では、児童一人一人の気持ちのこもった「ありがとう」のメッセージを一つのモニュメントとして制作する「ありがとうの樹」プロジェクトのアイデアと、福音公園で地域の方に昔の遊びを教えてもらうイベントを開催するという2つの案が出されました。
公園を視察する高校生スタッフの様子
公園を視察する高校生スタッフ
アイデアを検討する様子
アイデアを検討する様子

(7)その他のボランティア活動

 <ボランティア交流活動>
 県内のボランティアを含む多様な活動を実践している高校生を取材・交流する活動として、長浜高校水族館部を訪問しました(6月18日)。長浜高校水族館部は長浜高校内にある水族館の運営と維持・管理を行い、飼育魚の繁殖にも成功しています。毎月第3土曜日は一般に開放し、部員が自分の担当の水槽について解説しており、メディアでも大きく取り上げられています。インタビューを通して県内の高校生の活動にふれて大きな刺激を受けました。
来館者に説明する水族館部員の様子
来館者に説明する水族館部員
部員にインタビューするヤンボラスタッフの様子
部員にインタビューするヤンボラスタッフ


<みなら特別支援学校ニコニコ広場>
 みなら特別支援学校のPTA行事「ニコニコ広場」のボランティア(7月9日・12月3日)に参加しました。7月には七夕飾りを、12月にはミニクリスマスツリーの製作を一緒に行うなど、特別支援学校の生徒たちとふれあうことができました。
七夕の飾り付け(7月)の様子
七夕の飾り付け(7月)
ミニツリーの製作(12月)の様子
ミニツリーの製作(12月)


<余土南払川第一町内会クリスマス会>
 町内会のクリスマス会に、レクリエーション協会のインストラクターの方と共に参加しました(12月10日)。子どもたちと一緒に楽しみながら、レクリエーションを体験できました。
参加したヤンボラスタッフの様子
参加したヤンボラスタッフ
ラダーゲッターに挑戦
ラダーゲッターに挑戦


<赤い羽根共同募金歳末たすけあい街頭募金ボランティア>
 9月のスタッフ会議で募金活動をやりたいという意見が出ました。高校生だけの募金活動は難しいため、赤い羽根共同募金街頭募金活動に参加しました(12月9日)。
募金を呼びかける高校生の様子
募金を呼びかける高校生

3 おわりに

 今年度は東日本大震災の影響があり、ボランティアへの意識が例年以上に高まりを見せました。そのような中、何か人の役に立ちたい、自分にできることを少しでもやってみたいと考える高校生がヤングボランティアセンターに集まって、ボランティアの企画や活動への参加を行いました。学校ではできない活動や他校生との交流を経験することで、コミュニケーション能力や企画力を少しずつ身に付け、成長できたと思います。また、シャッターボランティアなど回数を重ね、認知度が高まりつつある活動があります。愛媛の高校生によるボランティア「ヤンボラ」を、もっと多くの人に知っていただき、活動の幅を広げていきたいと思います。


えひめ「高校生学力向上ネットワーク」構築事業
高校教育課

《事業の概要》
 本事業は、近隣の県立高等学校等が連携して、大学による合同の模擬講義や生徒の合同学習会、教職員の相互授業研修会などの「ネットワーク企画」を実施し、高校生の学力向上を目指すものです。学校の枠を超えて、生徒、教員同士が切磋琢磨することを通して、高校生の学力向上のためのネットワークづくりに努めています。

えひめ「高校生学力向上ネットワーク」構築事業の概要

《実施方法について》
 県立高校等を、6ブロックに分け、各ブロックの「ネットワーク拠点校」を中心に、合同大学模擬講義、相互授業研修会、指導力向上講座などの「ネットワーク企画」を実施します。
【県立高校等のブロック分け】
ブロック 拠点校 ブロック校
四国中央・新居浜 新居浜西 川之江、三島、土居、新居浜東、新居浜南、
新居浜工業、新居浜商業
西条・今治 今治西 西条、西条農業、小松、東予、丹原、今治南、今治北、
今治北大三島、今治工業、伯方、弓削、今治東中等
松山 松山南 北条、松山東、松山南砥部、松山北、松山北中島、
松山中央、松山工業、松山商業、松山西中等
東温・伊予・上浮穴 伊予 東温、上浮穴、小田、伊予農業、中山
大洲・八幡浜 八幡浜 大洲、大洲農業、長浜、内子、八幡浜工業、川之石、
三崎、三瓶
宇和島 宇和島東 宇和、野村、宇和島水産、吉田、三間、北宇和、
津島、南宇和、宇和島南中等

【「ネットワーク企画」実施例】

○合同大学模擬講義 大学等から講師を招へいし、合同の模擬講義を実施することを通して、生徒の進路意識の高揚を図るとともに、参加教員の指導力向上に役立てています。学校の枠を超えて共同で実施することによって、より多くの生徒が、大学の先生の生きた講義を受けることができるようになりました。
合同大学模擬講義の様子 今年度は愛媛大学や九州大学から講師を招き、生徒や教員を対象に各分野の専門的な講座を開催しました。


○合同学習会 ブロック内の進路希望が共通する生徒が一校に集まり、合同学習会を実施しています。同じ目標や興味を持つ生徒同士がコミュニケーションを取ることにより、学習意欲の高まりが見られました。
合同学習会の様子
参加希望生徒を対象に合同の学習会を実施し、学校の枠を超えて切磋琢磨しました。
集団面接の練習の様子
参加希望生徒に対して、集団面接の練習を行いました。他校の生徒と、討論する力を磨き合いました。

○相互授業研修会 
 ブロック内各校のベテラン教員や招へいした大学教員等が
   ・教科指導の在り方
   ・小論文指導の在り方
   ・各種検定に向けた指導の在り方
   ・進路指導に関するホームルーム活動の在り方
   ・進路学習に重点を置いた「総合的な学習の時間」の在り方
 など、進路指導の方法や技術に関する授業研修会を実施し、授業力の向上や優れた学習指導方法の普及と継承を図っています。
相互授業研修会の様子
推薦・AO入試等における小論文の指導について、教員対象の対策講座を実施しました。
若手教員には、特に好評でした。
相互授業研修会の様子
大学から講師を招き、教員を対象に各分野の専門的な講座を開催しました。

○進路的行事の公開
 進路指導に関する各校の特色ある取組を見学し、ノウハウを学ぶことにより、自校の進路指導の改善に生かしています。
  ・「自学自習の会」公開及び参加
  ・「保護者進路説明会」公開
  ・「進路学習会」公開 など

「自学自習の会」の様子
同じ進路希望を持つ生徒たちが集まる「自学自習の会」を公開しました。

《参加した教員の声、生徒の反応》
【合同学習会参加教員】センター試験対策合同学習会では、ポイントを何度も繰り返して示すなど、生徒に印象付ける工夫が随所になされていて、非常に参考になりました。生徒にも大変好評で、機会があればまた参加したいという希望が出ていました。

【愛媛大学出張講義参加生徒】愛媛大学医学部の出張講義や学部説明会では、自分と同じ医学科志望の他校生が積極的に質問しているのを見て、自分も頑張らないといけないという気持ちになりました。

【合同学習会参加教員】他校の生徒とともに学習したり講座を受けたりするだけでなく、生徒同士の交流もあり、学ぶ仲間として進路意識を高め合うことができました。他校生が講師の先生に質問に行っている様子を見て、刺激を受けました。

【合同学習会参加教員】合同学習会(就職希望者対象)に参加した生徒は、他校生徒との交流を通して、就職に対する心構えをしっかり持つことができたようです。また、参加した教員同士で、情報交換を行うなど、大変意義深い取組でした。

【今治西高校「金曜特別講座」参加教員】インターネット回線によるウェブ会議システムを利用して参加する、高校生のための金曜特別講座(東京大学主催)は、講義内容がやや高度でしたが、研究のおもしろさや、奥深さが分かりやすく解説されていました。また、全国の高校生と、インターネット回線を通して交流でき、参加した生徒には、今後の進路を考える上で、有意義なものとなりました。

【松山北高校「自学自習の会」参加教員】「自学自習の会」を参観し、卒業生をスタッフとして招へいするなど、生徒の学習をサポートするための先進的な取組を学ぶことができました。今後、本校でも取り入れていきたいと思います。

《おわりに》
 えひめ「高校生学力向上ネットワーク」構築事業を通して、近隣の県立高等学校等が連携して学力向上や教員研修に取り組むネットワークづくりを進めることができました。また、学校の枠を超えて、生徒が交流しながら、進路に対する意欲を高め、自主的に学習に取り組むことができました。
 今後とも、愛媛の高校生の学力向上のために、県立高校の教員総ぐるみで取り組むとともに、学校の枠を超えて、生徒、教員同士が切磋琢磨し、共に高め合うことのできるネットワークづくりを推進してまいります。



人権教育研究指定校事業報告1
豊かな人間感覚を身に付け、身近な生活の中の不合理や差別に気付き、みんなで解決していこうとする児童の育成
新居浜市立金子小学校

1 はじめに

 本校は市内の中心部に位置しており、今年創立125年目を迎えます。学級数25、児童数726名の市内では比較的規模の大きい学校です。校舎
 本校では、「豊かな心をもち、たくましく生きる金子のよい子を育てる」を学校の教育目標とし、その具現化を図るために全教職員共通理解のもと、日々の教育活動に取り組んでおります。
 また、人権・同和教育に関しては、児童の「人権に関する知的理解」を深め、「人権感覚」を高めることにより、自分の大切さとともに他の人の大切さを認め、お互いの人権を守ろうとする実践的な態度が身に付くと考え、研究を進めてきました。

2 児童の実態から

 研究を進める上で必要な児童の実態を知るために、本校独自の質問紙を使い、意識調査を実施しました。調査結果から、本校の児童は、学校・家庭・地域など自分を取り巻く人々との関係が良好で、穏やかに毎日を過ごしている様子がうかがえました。しかし、全般的に表現力に自信がない児童や、周りに流されてしまう傾向の強い児童が多かったので、コミュニケーション能力や自ら考えて実行する力を身に付けるため、「話すこと」「聞くこと」に関する指導に重点を置くことにしました。

3 伝え合い、支え合う仲間づくり
 
 まず、伝え合い、支え合う仲間づくりを目指した学習活動や交流活動・集団活動などを実践することにより、自己表現力を身に付け、自分も他者も大切な存在と認識できる自尊感情を高められるであろうと考えました。そこで、全校を96の異年齢集団の班に分け、学級や学年の枠を越え、男女が協力して活動に取り組む縦割り班活動を実践しました。ふれあい遊び、ゲーム集会、なかま集会、交流給食など様々な活動を通して、班長である6年生は、高学年としての自覚と誇りを味わい、コミュニケーション能力や自己有用感を身に付けるよい機会となっています。また、児童相互の心のつながりが強まり、より一層好ましい人間関係が育まれてきました。

ふれあい遊び
〈ふれあい遊び〉
なかま集会
〈なかま集会〉
交流給食
〈交流給食〉


 次に、自己理解や他者理解を促進し、コミュニケーション能力などを身に付けさせるために、「構成的グループエンカウンター」を中心とした仲間づくり活動にも取り組みました。自分も含めてだれもがクラスの一員として大切な存在であるという自尊感情の高まりを実感し、それにより、集団の質も高まり、個人もさらに成長していけるものと考えています。

グーチョキパージャンケン
〈グーチョキジャンケン〉
人間空気いす
〈人間空気いす〉

4 相手意識・目的意識をもった表現力の育成

 学習の場面においては、相手を意識した「話し方」「聞き方」ができるようになることが、学習指導の充実にもつながると考えました。そこで「話すこと」「聞くこと」の教室掲示図を作成しました。これにより児童は、自分の「話し方」「聞き方」を意識したり、自分の声のボリュームを意識したりして、相手に自分の考えや思いを伝えることができるようになってきました。

教室掲示図(話そう) 教室掲示図(きこう) 教室掲示図(声の大きさ)


5 地域との連携

 生活科や総合的な学習の時間に、老人会や婦人会の方と一緒に伝統的な遊びをしたり、地域に伝わる民話について学んだりすることにより、地域の人とのつながりが強まり、地域に対して愛着を感じる児童も増えてきました。

6 主な成果と課題

○異学年での交流活動を進めたことで、児童同士のかかわり合いが深まってきました。また、「仲間づくり活動」を充実させたことで、一人ひとりの児童が、周りの友達にそれぞれ受け入れられるという心地よい体験を多く積むことができました。

○「話し方」「聞き方」に重点を置き指導した結果、相手意識・目的意識をもった表現力が少しずつ育ってきました。

○地域の人々との交流を通して、児童は保護者だけでなく、地域の多くの人々によって見守られ、支えられていることを知り、「自分たちは大切な存在である」ことを感じることができるようになってきました。

○「仲間づくり活動」のエクササイズを行うに当たっての教師自身のスキルを高めたり、児童が互いの意見を交換したり、考えを練り合ったりする学習活動をより充実させていきたいと考えています。また、地域の人々とのよりよい連携の在り方についても探っていきたいと思います。



人権教育研究指定校事業報告2
ふるさとを誇りに思い、仲間とよりよく生きようとする生徒の育成
宇和島市立三間中学校

1 はじめに

 今回の指定を受け、まず授業や学校行事、生徒会活動において生徒の活躍の場をできるだけ多く設定することにしました。そして、生徒同士や地域、施設の人々との交流を通して表現力やコミュニケーション能力の向上を図り、自尊感情・他者尊重の意識を高めることを目指しました。こうした取組により、学校やふるさとを誇りに思い、積極的に他者と関わって友達と共によりよく生きようとする生徒を育てたいと考え、取り組んだ2年間の歩みの一端を紹介します。

≪教科等指導部会の取組≫
○人権意識を高める横断的・総合的な学習の実践学級活動の様子
 人権に関する知的理解や人権感覚を身に付けるためには、道徳を中心に各教科や特別活動、総合的な学習の時間をどのように関連させて学習すれば相乗効果が得られるか、全教職員で教材研究を行い実践しました。

○年間指導計画のデータベース化
 今回、年間指導計画を見直すに当たって、電子化することによって関連する教材が一目で分かるようにしました。また、年間指導計画の実用性と授業の質の向上、集積した教材資源の有効活用のために年間指導計画を教材データベースとリンクさせる試みを始めています。

≪教科外活動部会の取組≫
○人権尊重の視点に立った環境づくり
(1)キーパーソンによる取組
 キーパーソンになった教員は、集まった情報を基に生徒との人間関係向上の取組を行いました。また、情報は、学級担任から個人懇談等を通して保護者にも伝えるようにしました。

(2)個人の特技や活躍を全校に紹介する取組
イラストが得意な生徒の個展の様子
〈イラストが得意な生徒の個展〉
海洋生物が好きな生徒の磯の生物紹介の様子
〈海洋生物が好きな生徒の磯の生物紹介〉


○人権尊重の視点に立った仲間づくり
(1)生徒玄関の掲示掲示板
 生徒玄関の掲示板を使って、機会を捉えて先輩と後輩の絆を深める活動を行いました。
(2)文化祭での取組
 異学年でクイズ、仲間づくり、人権劇などに分かれて活動しました。また、学年や全校で合唱を行いました。
クイズの様子
〈クイズ〉
キャップ積み上げゲームの様子
〈キャップ積み上げゲーム〉
人権劇の様子
〈人権劇〉


(3)全校給食
 生徒会長の公約「全校生徒による仲間づくりのための全校給食」を実現しました。全校給食


(4)中山池イルミネーション 
 部品の調達と装飾を全校生徒で行って「フレンドシップ」を完成させました。
中山池イルミネーション
(5)集会や行事での取組
遠足の様子
〈遠足〉
グループワークゲームの様子
〈グループワークゲーム〉
体育祭の様子
〈体育祭〉
 

○人権委員会の創設と活動の推進人権ソング合唱
 人権委員会の取組のひとつとして、「人権の木」に友達の「よいところ」や「よい行い」を葉に書き入れて貼り付け、一人ひとりを大切にする雰囲気づくりを行っています。さらに、人権ソング作成実行委員会がつくられ、文化祭や人権あったかコンサートで、全校生徒による合唱を披露しました。これからも、自分たちの手作りの人権ソングを大切に歌い継いでいきたいと意気込んでいます。

≪ふるさと連携部会の取組≫
○ふるさとのよさを生かした教材の開発
(1)お接待活動
 三間町には四国八十八ヶ所の札所が二カ所あり、お遍路さんへのお接待の文化が定着しています。この特色を生かして、お遍路さんへのお接待の体験学習を1年生の総合的な学習の時間を使って行いました。ふるさとの文化「お遍路接待」の体験を通して、ふるさとの文化を理解し、コミュニケーション能力を高め、優しい心を育むことをねらいとしました。
お接待の様子
〈お接待の様子〉
お遍路さんからの手紙
〈お遍路さんからの手紙〉

(2)職場体験学習                    
 三間町内の事業所に依頼して、2年生は職場体験学習に取り組んでいます。この学習を通して、ふるさとの産業や働いている人々について理解を深め、自らの将来の生き方について考えることにもつながっています。職場体験学習の様子


(3)ふるさとの歴史と史跡の学習
 3年生は、今までのふるさと学習の集大成として、三間の歴史と史跡を紹介するガイドブックを制作することにしました。畦地梅太郎画伯の出身地であることや、1年生のときにお遍路さんをテーマに木版画を制作した経験を生かそうと、挿絵は版画にしました。
講演と史跡めぐりの様子
〈講演と史跡めぐり〉
史跡のスケッチの様子
〈史跡のスケッチ〉
版画製作の様子
〈版画製作〉

おわりに

 本校では、平成22.23年度文部科学省指定人権教育研究指定校として試行錯誤を繰り返しながら研究を進めてきました。どうすれば、生徒はふるさとに誇りがもてるのか、どうすれば自尊感情は育つのか、2年間かけてやっとそのヒントが見つかり、今まさに研究に着手したような気持ちです。道半ばで、研究成果は十分とはいえませんが、本校の教職員の人権に対する知識、技能、態度が高まり、生徒たちの意識も高まりつつあります。今後も人権・同和教育に本校教職員一同力を入れていきたいと思います。



人権教育研究指定校事業報告3
生徒一人一人の人権意識を高め、生きる力を育てる人権教育の推進
愛媛県立川之江高等学校

1 はじめに

 本校は、創立103周年を迎えた歴史と伝統に培われた学校で、全日制・定時制合わせて約900名の生徒が学んでいます。

 これまで、人権についての知的理解を深め、それが具体的な行動に生かされるように人権教育を行ってきました。この度、平成22・23年度に文部科学省より研究指定を受け、生徒の人権意識を高めるとともに、生きる力を育てる研究を進めましたので、その内容を紹介します。

2 研究の概要について

 今回の研究では、次の4つの柱をもとに研究を進めていきました。
 (1)人権感覚を高める指導方法についての研究
 (2)教職員研修の充実
 (3)人権が尊重される教育環境づくり
 (4)保護者・地域社会への働き掛け

3 実践事例について

実際に取り組んできた実践について、いくつか御紹介します。

(1)フィールドワークによる教材の開発
 生徒が興味・関心を抱ける学習教材を開発したいと考え、地域教材の活用を昨年度より行ってきました。具体的には、差別解消に取り組んだ郷土の先人(安藤正楽・岩崎伊三郎)を取り上げて授業を行いました。生徒から「自分の身近なこととして考えやすかった」「先人より学ぶものがたくさんあった」「学習したことを周りの人に伝えて、行動していける人になりたい」などの感想が出ました。参加した教職員からも、「書籍や資料を提示するホームルーム活動の何倍も生徒の心に訴えかけることができた。これが差別を許さない人間を育てる、差別をなくす側の人間を育てる原動力になると思う」という意見が返ってきました。
ア 安藤正楽の聞き取り調査
 暁雨(ぎょうう)館で学芸員による説明を受けた後、八坂神社で石碑の拓本を取りました。このフィールドワークでは、正楽の親族にインタビューができるなど、思わぬ成果もみられました。
日露戦没紀念碑
日露戦没紀念碑
安藤正楽学習課会の様子
安藤正楽学習会(拓本取り)

イ 岩崎伊三郎の教材発掘
 幼稚園(保育園)や小・中学校との交流を行う中で、明治期に差別解消に取り組んだ郷土の先人岩崎伊三郎の資料も手に入れることができました。さらに、伊三郎のことにくわしい地域の方を紹介していただき、学習会を開くことにもつながりました。
岩崎伊三郎学習会の様子 岩崎伊三郎学習会の様子

ウ 国立療養所大島青松園への訪問
 今年度は、生徒と教職員が、国立療養所大島青松園を訪問することができました。当日は、施設を見学するだけでなく、ハンセン病回復者の方との交流も行い、参加した生徒や教職員は、書籍で学ぶことができない貴重な体験をしました。それぞれが差別解消への思いを強めた訪問となりました。「一人でも多くの人に、ハンセン病の歴史について知って欲しいし、自分から動いて伝えていかなければならないと思った」という生徒の感想は、参加した全員の思いでもあります。
国立療養所大島青松園の訪問の様子 国立療養所大島青松園の訪問の様子

(2)人権劇鑑賞会人権劇鑑賞会
  今年度は演劇部の協力を得て、いじめ問題や生命の尊さを学ぶことができる「チェンジ・ザ・ワールド」という作品を全校生徒で鑑賞しました。保護者にも座席を開放し、多くの方が鑑賞されました。上演後は、人権委員が司会進行を行い、人権集会を実施しました。自主的に手を挙げて自分の意見を言う生徒も見られ、人権問題について考える良い機会となりました。「自分も知らないうちに人を傷つけているかもしれないと考えるいい機会になった」などの感想が出ました。

(3)人権委員学習会in広島
 昨年度の文化祭で、人権委員より、千羽鶴を作成して広島や長崎に届けようという企画がもち上がりました。そこで、今年度は各クラスに折り紙を配布して協力を依頼し、千羽鶴を完成させることができました。当初は、宅配便で送ることを考えていましたが、この企画をきちんと完結させたいという委員の声から、広島に届けることになりました。広島に行くにあたり、実際に原爆の被害に遭った方の話を聞きたいということになり、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館にて広島在住の方から話を聞きました。その後、原爆の子の像周辺に千羽鶴を掛け、広島平和記念資料館の見学を行いました。「講話を聞き、改めて核兵器の恐ろしさを感じた。自分のできる範囲で他の人に今日聞いた話を伝えていきたい」という感想を書く生徒もいました。
「原爆の子の像」周辺で千羽鶴を掛ける人権委員の様子
「原爆の子の像」周辺で千羽鶴を掛ける人権委員
原爆被害者の方の講話の様子
原爆被害者の方の講話

(4)その他人権啓発活動の様子
 今年度は、市内3高校人権委員交流会が行われ、ハローワークの方や市内在住の方より、就職差別についての話を伺った後、それぞれの学校の取組を報告しました。それ以外にも、地域の行事に積極的に参加しました。特に身元調査お断り運動では、有意義な時間を過ごすことができました。人権委員会の取組をまとめたプリントを入れたティッシュを市内の商業施設の店頭で配布し、身元調査お断り運動への協力をお願いしました。生徒は当初戸惑っていましたが、自分たちの活動に手応えを感じていたようです。

3 おわりに

 フィールドワークや地域の研修会等に積極的に参加した結果、新たな発見や出会いがあり、それが生徒・教職員の人権意識の向上につながったと思います。特に、地域教材の開発については、クラス単位でフィールドワークを行うなど、教職員の意欲の高まりが感じられました。これらの活動を通して育まれた他者との共感や、コミュニケーション能力、差別解消に向けた意欲や態度は、教職員の意識を変えるとともに、生徒の「生きる力」の育成につながったと考えています。
 また、今回の取組で、教職員と地域の方との人間関係が深まり、信頼関係が構築されたことは、今後の取組を進めていく上でも大きな財産になりました。なお、幼・保・小・中学校の公開授業から学んだことは、今後の推進計画に生かしていきたいと思います。 
 現職教育については、研修の在り方や方法など、まだまだ改善すべき点が多いのですが、今後とも、様々な研修の機会を提供することによって、教職員の人権意識を高めていきたいと考えています。



通級による指導担当教員研修会
特別支援教育課

 通級による指導担当教員としての専門性と実践力の向上を図るため、県内に設置されている通級指導教室の担当者52名が7月に県庁に集い、事例発表や課題別協議等を行いました。協議では、児童生徒の学習指導や他の機関との連携の様々な課題について、活発な意見交換があり、指導効果のあった実践例についての情報交換も行われました。

 また、東京都杉並区立済美教育センター指導教授、月森久江先生による講演も行われ、障害の特性を理解し、児童生徒一人一人の特性を生かした指導が重要であると具体的な指導事例を通してご示唆をいただきました。

【「通級による指導」とは】
 小学校または中学校の通常の学級に在籍している軽度の障害のある児童生徒に対して、障害に応じた指導を行いながら、教科等の指導やことば、他者とのかかわり方、コミュニケーションの指導などを特別の指導の場(通級指導教室)で行う指導形態です。それぞれの教室に在籍する児童生徒の特性に合わせた指導を行っています。
*課題別協議・講演会の様子*
協議の様子 協議の様子
協議の様子 協議の様子

研修会に参加した担当者の感想の一部を紹介します。
  *主な意見*
○事例発表では、個に応じた教材・教具を具体的に紹介していただいたので、大変参考になった。特に、パソコンソフトを活用した学習教材は、児童生徒 特性に合った教材として指導の効果が上がるものだと思う。

○課題別にグループで協議を行うことで、日頃の悩みを他の担当者と共有し、具体的な指導方法について、情報交換を行うことができた。

○ 月森先生による専門的見地からの具体的で実践的な助言や提言をいただき、児童生徒の実態把握や障害の特性を考慮した指導方法について理解できた。

 課題別に行ったグループでの協議では、それぞれの教室の課題や成果について話し合い、お互いの実践からよいところを学び合おうとしていました。


 協議で話し合った内容について一部を紹介します。
【通級指導教室での指導内容・方法について】 
○口形指導では、個に応じた教材や教具を使って楽しく発声練習ができるように工夫している。音楽に合わせて「口の体操」を行ったり、パソコンを活用した教材を積極的に取り入れたりして、児童の学習意欲を喚起する取組が成果を上げている。

○一人一人の学びのスタイルに合った教材を準備して指導に当たっている。学習の成果を視覚的に理解できる評価カードを取り入れることで、自信を持って学習に取り組むようになってきた。

○個別指導により課題を解決した生徒が達成感を味わい、自信を持って学習している姿が見られるようになってきた。高校への進学についてもサポートし、高校入学後も高校の担任等と情報交換等を行っている事例もあった。今後も連携を図りたい。

【関係機関や校内の連携について】
○就学に向けて関係機関や学校間の連携がとれるようになり、児童生徒がスムーズに新しい学校生活をスタートさせることができるようになってきた。

 今回の研修では、それぞれの課題や成果を共有し、解決策を話し合う時間を持ったことで、担当者は、日々の授業や教室運営をさらによりよいものにしようとする意欲を高めることができました。今後も通級指導教室の運営や指導を充実させ、担当者の専門性や実践力の向上を図り、子どもたちの困り感に寄り添い、支援するためのスキルアップの機会にしたいと考えています。

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