私の教育実践
いつでも支援できるよう力をつけて見守り続けたい
西条市立周布小学校 校長 礒 明
「小中一体」を目指して
今治市立関前中学校 校長 田房 亮介
いつでも支援できるよう力をつけて見守り続けたい
西条市立周布小学校 校長 礒 明

 私の教諭時代は、ほとんどが特別支援教育(当時は、特殊教育や障害児教育と呼ばれていた。)である。聾学校の教員を目指し大学に入ったが、養護学校の義務化がまだの時代で就職には狭き門であり、小学校でスタートすることになった。しかし、そのことが通常の学級の子どもたちの発達を知った上で、障害児教育をすることとなり大変役に立った。その後、障害児教育への思いは捨てがたく、難聴学級の担任を希望した時、言語障害通級指導教室の開設の話が持ち上がり、担任者候補として1年間の大学研修をさせてもらえることとなった。

 帰ってきてからの1年は、開設の準備に追われる毎日であった。当時の通級指導教室経営は、法的整備ができていないため特殊学級として在籍児童を置き、通級指導をおこなう変則的なものであった。また、県内各市に1教室程度しかない状況であり、相談機関としての機能も併せ持っていた。早期発見・早期教育が叫ばれる中、早期障害児教育の場として、教育相談の時間を設けて幼児も多く受け入れした。早期相談・教育の場がないため、「ことばがうまく話せない。」といえば全ての障害の子どもが紹介されてきた。また、力量のない私にもかかわらず期待は大きく、空き時間には、幼稚園や保育所の相談会・研修会に指導者として呼ばれ、児童相談所の愛育学級の相談員として休日に呼ばれることもあった。休む間もない忙しい毎日ではあったが、保護者の悩みや担任の悩みなどを知ることができ、限られた時間しか関わることのできない通級指導で、表面に現れた障害の部分だけでなく、広くその子や家庭を見る中でどのような指導が効果的であるかを学ぶことができた。

 通級指導は他校通級の児童も多く来る。その場合は、次の時間まで家庭でしてもらいたいことを学んでもらうため、引率保護者を横に置き、指導方法を見てもらいながらの指導であった。毎時間が参観授業であり、自分より年上で、障害児教育についてよく勉強し、教室の開設運動に取り組んできた保護者がほとんどなので、気の抜けない真剣勝負の毎日であった。でも、その姿を見て「こうしてみたんだけど、うまくいかなかったんです。」「こうしてみたらどうだろうと思うんだけど。」等と指導後の保護者との話し合いで優しく語ってくれた。非力な私を思いやりながらも頼ってくれる保護者と児童が目の前にいると思うと、どんなにつらくてしんどくても逃げ出すことができなかった。

 この思いに答えるためにも自分に力をつけなければと、大学に仕事が終わった後通ったり、医師・保健師・児童相談所の心理判定員・福祉施設職員等多くの方と人的つながりを持ち、事例をもとに指導法を教わった。また、つたない事例をもとに全国大会でも発表をし、新しい視点や指導法を学んで帰り、日々の指導に生かすようにした。

 治療教育といわれる分野で障害のある児童と関わり、それまでの特殊教育になかった発想も学び、病院と同じように選ばれる教育の現場を体験し、特殊教育から障害児教育そして特別支援教育へと、どこで・どのような教育を受けるかは、保護者と児童・生徒が選ぶ時代となることを、昭和50年代に予感することができ、その後の学校経営に役立てることができた。今後、特殊なものであったり、障害児のためだけの教育であったりする教育から、治療教育の基本である、「あなたが必要とするときに、最高の支援を提供できるよう日々努力し、見守り続ける姿勢」を続けていきたいと思う。



「小中一体」を目指して
今治市立関前中学校 校長 田房 亮介

 本校は、へき地2級の小規模校である。同じ校舎の1階が岡村小学校、2階が中学校になっており、両校を兼務している。数年前までは、それぞれの学校に校長がおり、校門・玄関も別々で、当然1階にも2階にも校長室・職員室があった。
 島の過疎・高齢化が進み、現在小学生7名、中学生5名、教職員も小中合わせて12名という構成である。
 本年4月に赴任し、最初の小中合同職員会で、今年度のスローガンを「小中一体」と掲げ、以下のような提案をした。

 「小中連携」ということがよく言われるが、連携というと、もともと別々のものがいっしょに何かをやっていくという感じを受ける。また、「小中一貫」は、小学校1年生から中学校3年生まで、系統的に段階をおって進めていくという発想である。本校の場合は児童生徒数が極端に少ないので、学年の発達段階を考えるというよりも、一人一人の児童生徒の発達段階に応じて柔軟に授業を展開していく必要があるのではないか。3年生だから3年生の教科書の内容をするというのは、子ども一人一人に寄り添っていない。あわせて、小学校から中学校へスパイラルなカリキュラムになっていることを考慮して、各教科の特性に応じて他学年といっしょに授業したり、小学生と中学生がいっしょに授業したりして、教え合い、学び合い、互いに切磋琢磨する環境が作れるのではないか。小規模校のデメリットをメリットに変える発想の転換をしていこう。行事を合同で行うということはこれまでもあったが、学校の教育活動のメインはあくまでも日々の授業である。行事と同じような感覚で、学年・学校の枠を超えて、授業を組み立てられないか。昨年度・今年度と小中の教科書が新しくなった今が絶好のチャンスでもある。「チャンス・チャレンジ・チェンジ」という本校の合い言葉を実践に移そう。これから小中の教職員がいっしょに考えていってほしい。

 1学期を終えたが、これまでの授業の中で、いくつかの意欲的な試みがなされ、成果が見られた。小中の教職員交流も深まってきた。しかし、ねらいの明確化や評価の問題など、クリアすべき課題も多い。夏季休業中の研修を通して、2学期の授業実践の計画を立てている段階である。

 この取組を通しての目標は、もちろん「義務教育9年間を見通した確かな学力の定着と向上」である。ただ、その大前提として、教職員が小中の所属意識を離れて、どれだけ意識を共有できるかが重要になってくる。自分自身も、一昨年度に初めて小学校を経験し、小中の文化・風土の違いに驚きを感じるとともに、これまでの中学校教員としての取組で反省すべき点が多々見つかった。「中一ギャップ」は、制度の問題ではなく、教職員の意識の違いが最大の要因だと思っている。本校の特色を最大限生かして「小中一体」の取組を進める中で、子どもたちの健やかな成長を保障するとともに、教職員一人一人の資質・能力の向上に結びつくことを願っている。


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