特集


生涯学習センター「愛媛人物博物館」常設展示における偉人の追加について
生涯学習課

英語教育の充実について
(グローバル人材育成推進事業、英語教育改善プラン推進事業)
高校教育課

文部科学省人権教育指定校事業報告
 1 大洲市立粟津小学校   2 愛媛県立大洲高等学校
人権教育課

特別支援学校教員による医療的ケア実施の体制整備について
特別支援教育課


生涯学習センター「愛媛人物博物館」
常設展示における偉人の追加について

 愛媛県教育委員会生涯学習課では、より多くの県民の皆様のニーズや要望にお応えするため、愛媛県生涯学習センター内の「愛媛人物博物館」の常設展示で新たに追加展示する人物を検討し、この度、それらの人物を次のとおり決定いたしました。
 今後は、新たに追加展示する人物に関する、資料の調査・収集作業を進め、愛媛に深いゆかりのある偉人の遺品や業績を展示、紹介する事業に取り組んで参ります。
 ご理解とご協力を、よろしくお願いいたします。

分 野 新たに追加展示する人物(計23名)
学 問  佐伯 矩(さいき ただす)【栄養学者】
 細川 一(ほそかわ はじめ)【医師・水俣病公式発見者】
 江島為信(えじま ためのぶ)【今治藩家老・兵学者・作家】
教 育  大原 観山(おおはら かんざん)【明教館教授】
 米田 吉盛(よねだ よしもり)【神奈川大学創立者】
政治・行政  加藤 拓川(かとう たくせん)【外交官・政治家】
産 業  伊佐庭 如矢(いさにわ ゆきや)【初代道後湯之町町長】
 岡田 温(おかだ ゆたか) 【農業技師(四阪島の煙害問題解決に尽力)】
社 会

 武左衛門(ぶざえもん)【吉田騒動一揆指導者】
 宮本 武之輔(みやもと たけのすけ)【土木技師・技術官僚】
 村上 武吉(むらかみ たけよし)【能島水軍頭領】

芸 術  村上 三島(むらかみ さんとう)【書家】
 丹下 健三(たんげけんぞう)【建築家】
 今井 久仁恵(いまい くにえ)【オペラ歌手】
 伊藤 五百亀(いとう いおき)【彫刻家】
 真鍋 博(まなべ ひろし) 【イラストレーター】
文 芸  坂村 真民(さかむら しんみん)【詩人】
 前田 伍健(まえだ ごけん)【愛媛川柳の第一人者・野球拳の創始者】
 西村 清臣(にしむら きよおみ)【歌人】
芸 能

 伊丹 十三(いたみ じゅうぞう)【映画監督】
 松山 恵子(まつやま けいこ)【演歌歌手】

スポーツ  藤田 元司(ふじた もとし)【プロ野球監督】
 武田 義孝(たけだ よしたか)【県人初の五輪選手(体操競技)】


英語教育の充実について
(グローバル人材育成推進事業、英語教育改善プラン推進事業)

 本県では、高等学校における英語教育の改善を図る事業など様々な取組を行って、国際的な視野を持った将来の愛媛の発展を支えるグローバル人材の育成に努めています。 今回は、「グローバル人材育成推進事業」と「英語教育改善プラン推進事業」について紹介します。

グローバル人材育成推進事業
  国際的に活躍できる「グローバル人材」を継続的に育成していくことが求められていることを踏まえ、高校生の留学促進のため、「高校生の留学経費の支援」、「留学フェアの開催」、「留学経験者や海外勤務経験者等による講演」等を行う「グローバル人材育成推進事業」を実施しています。
 
 
 高校生海外留学フェア(平成25年8月5日(月)にぎたつ会館)
 外国の高等学校への留学を希望する生徒や保護者、高等学校の留学担当者に対して、海外留学への気運を高めることを目的に、高校生海外留学フェアを開催しました。
  同フェアは、県教育委員会による高校生海外留学支援金の制度についての説明、公益財団法人 YFU日本国際交流財団専務理事の江夏啓子先生による海外交換留学についての講義、愛媛大学の学生さんによる海外留学体験留学談発表、そして各留学交流団体による個別相談など、盛りだくさんの内容で、当日は、高校生、保護者、高校教員など総勢70名を超える方々に参加いただきました。県民の皆さんの、海外留学に対する関心の高さを感じる一日となりました。

 海外留学についての講演(YFU専務理事 江夏 啓子 先生)  愛媛大学の学生による海外留学体験談
海外留学についての講演
(YFU専務理事 江夏 啓子 先生)

愛媛大学の学生による海外留学体験談

 
 グローバル語り部派遣
 グローバル語り部派遣とは、留学経験者や海外勤務経験者、国際機関等の勤務経験者等を県立学校に派遣し、留学や海外勤務の経験などについて講演を行うことにより、生徒の国際的視野の涵養を図ることを目的として実施するものです。
今年度は、派遣希望のあった学校の中から6校を選び、語り部を派遣しました。
 
 実施日 高校名  講  師  講演テーマ 
10/30(水) 今治北 村上 和宏 先生
(愛媛大学国際連携推進機構准教授)
歩く・見る・聞く、そして話す
11/7(木) 松山中央 髙橋 志野 先生
(愛媛大学国際連携推進機構准教授)
カナダでの留学体験から
12/13(金) 松山工業 竹内 よし子 先生
(特定非営利法人
えひめグローバルネットワーク代表)
工業技術を生かした国際貢献
1/21(火) 新居浜工業 松下 文治 先生
(NPO法人国際交流支援協会理事長)
地球サイズの友情を求めて
2/14(金) 宇和島東 渡部 珠雄 先生
(協和発酵キリン(株)事業開発部長)
米国留学および海外ビジネスを通して学んだこと
2/20(木) 松山商業 佐伯 三麻子 先生
(松山東雲女子大学人文科学部教授)
「世界」の中の「自分」との出会い
~海外経験を通して考える~
 
 ◇講演会の様子
 講演会の様子(今治北高校)  講演会の様子(松山中央高校)
 今治北高校

松山中央高校

 
 講演会の様子(松山工業高校)  講演会の様子(新居浜工業高校)
松山工業高校

 
 新居浜工業高校

 講演会の様子(宇和島東高校)  講演会の様子(松山商業高校)
 宇和島東高校

松山商業高校 

 〔生徒の感想〕
旅行でも留学でも何でもいいから、まずは現地へ行って、自分自身でその場を体験することが大切だということが分かった。様々な文化、考え方を理解していきたい。(今治北)

留学によるメリットは、語学力の向上だけではなく、自己表現力の向上、様々な文化に対する許容性の拡大など、自分の能力を向上させられることがよく分かった。(松山中央)

今回の講演で、国際的な問題に私たちも関心を持たなければいけないのだと言うことが分かった。自分も国際的な知識を深め、社会的に成長したい。(松山工業)

「柔道や工業の技術一つでも持っていれば、世界で戦える」と聞いて、工業高校に入学して良かったと思った。先生の話は役に立つことばかりで、本当に勉強になった。(新居浜工業)

海外経験など、これまでとは違う体験が人間形成に役立つことが分かった。人や本との出会いを大切にし、新しいことにチャレンジしていきたい。(宇和島東)

留学してどんなことをするのかあまりよく知らなかったので、とても勉強になった。「自立」という言葉がとても心に響いた。私もきちんと「自立」して責任を持てる人間になりたい。(松山商業)

 県教育委員会では、今後とも、英語教育の充実や高校生の海外留学支援に取り組み、本県のグローバル人材育成に努めてまいります。
 

 英語教育改善プラン推進事業
 「英語教育改善プラン推進事業」は、国の委託を受け、英語の使用機会の大幅な拡充や英語学習に対するモチベーションの一層の向上を図るための研究実践を行う拠点校を設け、その成果を県全体に普及するものであり、平成24年度から実施しています。本年度は松山東高校が拠点校として研究開発に取り組んできました。
 
 
◇平成25年10月22日に実施された、文部科学省による実地調査の様子
 生徒たちは積極的に発言していました。(1年)  英語で自分の考えを伝え合う活動です。(1年)
 生徒たちは積極的に発言していました。(1年)

 英語で自分の考えを伝え合う活動です。(1年)

 発表を聞く態度も、真剣そのものです(2年)  文部科学省・向後教科調査官(中央)から、指導助言をいただきました。
発表を聞く態度も、真剣そのものです(2年)

 
文部科学省・向後教科調査官(中央)から、
指導助言をいただきました。
 

 今年度、松山東高校では、「CAN-DOリストの形での学習到達目標」を作成し、それに基づき授業改善や評価改善を行うなど、学校一丸となって英語教育改善に取り組みました。その結果、英語の授業は言語活動を中心とした活気のある授業へと進化し、10月に行われた文部科学省の実地調査においても、向後教科調査官から、「高校1年生の授業において、ここまで充実した言語活動を実践されている学校は、全国でも少ない。よく頑張っている。」との講評をいただきました。今後は、松山東高校で得た成果の県下の高校への普及に努めていきたいと思います。


文部科学省人権教育指定校事業報告

自分も友達も大切にし、自他の人権を守るために主体的に行動する
  子どもの育成 ~気づき・考え・行動する子~(大洲市立粟津小学校)


1 はじめに
 本校は、大洲市中心部から約8㎞の肱川下流域、市の北西部に位置し、学級数7、児童数88名の小規模校です。「ふるさとを愛し、あかるくやさしくたくましい粟津の子を育てる」という教育目標の下、全校児童のつながりや互いの助け合いを求める諸活動に取り組んでいます。本校では、人権教育の指導方法等のあり方について[第三次とりまとめ]の趣旨を踏まえ、人権に関する知的理解を深めるとともに、様々な交流体験を意図的に取り入れる中で、互いのよさを認め合える仲間づくりを促進し、それを支えるコミュニケーション能力や人間関係を調整する能力の向上も図りたいと考え、実践をしてきました。その一部を御紹介いたします。

2 人権が尊重される学習の推進
(1) 人権・同和教育年間指導計画の改善
 まず、本校の実態を把握するために、児童と保護者対象にアンケートを行いました。また、全ての教育活動において人権・同和教育に取り組むため、各教科、道徳、総合的な学習の時間、特別活動の内容を盛り込むとともに、学校行事との関連についても見直しを行い、人権・同和教育の年間計画を作成しました。その際、五つの視点(生命、人権、仲間、地域、勤労)を設定し、単元や教材を選定しました。

(2) 人権意識を高める授業改善

生命尊重の授業では、地域の獣医師をゲストティーチャーとして招き、直接話をしていただくなど、児童がかけがえのない生命を尊び感動をもって理解できるように授業構成を工夫しました。
 人権の歴史や現状を学ぶ授業では、人権に関する歴史を学び、正義の実現に向かって活動しようとする意欲や態度を育てるための学習を行いました。主に6年生において行い、社会科、総合的な学習の時間、道徳、学級活動で多面的に学び、人権についての知的理解を深めました。6年生では、渋染一揆を取り上げ、差別解消に向けて立ち上がった人々の思いに触れる授業を行いました。
 地域の人々と積極的に関わる授業では、校外学習を積極的に取り入れるとともに、地域の方を学校にお招きして、直接御指導いただく機会を増やし、自分たちの地域の自然や文化等を体験的に学んでいます。特に、総合的な学習の時間では、地域に受け継がれている和太鼓演奏を体験したり、地域の福祉施設と交流したりする中で、地域に貢献しようとする気持ちを育むことができました。

第1学年 生活科の学習 第3学年 総合的な学習の時間 第6学年 道徳の学習
第1学年 生活科の学習   第3学年 総合的な学習の時間  第6学年 道徳の学習

(3) 伝え合う力を伸ばすための取組
 言語環境の整備では、「話す・聞く」力を育てるために、教室の前面に「聞き名人・話し名人」を掲示しています。また、朝の会では、学年ごとにテーマを決めて輪番でスピーチをし、発表後には、感想発表や教師の講評を行っています。講評の中で、発表した児童や聞いていた児童のよいところをほめることにより、児童は自信をもって発表するようになりました。さらに、自分の考えを伝えるための語彙が広がっていくように、「使えるようにしたい言葉カード」を上・下学年と発達段階に応じて作成し、児童一人一人に配布して活用しています。

 また、地域の読み聞かせボランティアの方々に、学期に2~3回、テーマを設定して、発達段階に応じた本の読み聞かせをしていただいています。様々なジャンルの本を読んでいただくので、読書の幅を広げるきっかけとなっています。児童は、自分たちのために準備し、来てくださることに感謝の気持ちをもち、「また来てほしい」と次回を心待ちにしています。

3 伝え合い認め合う仲間づくり
(1) 「気づき・考え・実行する」青少年赤十字活動の充実
 本校では、毎月一週間をJRC週間とし、あいさつ運動や募金活動を行っています。しかし、教師も児童もこれまでの活動を踏襲するだけになっていたため、活動のねらいを教職員間で再確認しました。そして、日常生活の中での実践活動を通して、「やさしさ」や「思いやり」の心を育てることを目的とし、自主的で自立した生活態度を養うために、「気づき・考え・実行する」という三つの態度目標を掲げて、児童の活動を進めていくことにしました。また、児童からは、全校奉仕活動や全校遊び、保健委員会の活動などをしたいという意見が出てきたので、それらの意見をもとに、業間を設定するなどして活動時間を確保したり、掲示物を工夫したりしました。 読み聞かせボランティアの様子
読み聞かせボランティア

(2) 互いを認め合う集会活動
 なかよし集会では、集会のはじめに、「今月の歌」や「今月の詩」を、全校で声を合わせて歌ったり朗読したりしています。歌や詩は、日本の四季を感じられるもの、児童の心に響くものを選んでいます。朝の会でも、各教室から歌や朗読の声が聞こえ、毎朝、みんなが同じ歌や詩を読むことで、気持ちをひとつにすることができています。毎月、校長先生に「今月の詩」の暗唱を聞いてもらうことで、児童は意欲や自信をもって取り組んでいます。
 また、日頃お世話になっている地域の方々や指導者の方々に感謝の気持ちを表すため、「ありがとう集会」を行いました。児童は、心を込めて招待状や感謝状、出し物、プレゼント等を用意しました。出し物の準備をしていた児童の中には、「走るゲームはやめよう」「こんなクイズが喜んでもらえるかな」といったように、招待者の年齢を考えた言動も見られました。招待者の方々にも喜んでいただき、お互いの気持ちが通じ合う、とてもよい集会となりました。 ありがとう集会の様子
ありがとう集会
4 家庭・地域との連携
 1・2年生は、寿会(地域の老人会)の方に昔の遊びを教えていただきました。昔のおもちゃのおもしさや手作りのよさに気付き、人と関わり親しみを深めることを目的として、生活科の時間に昔の遊びにチャレンジしました。グループごとに、昔の遊びコーナー(はねつき、こま回し、竹とんぼ、竹馬、めんこ、お手玉)を回り、一生懸命チャレンジできたらシールを貼ってもらいます。児童は、寿会の方とコミュニケーションをとりながら昔の遊びを楽しみ、活動後、感想発表や歌のプレゼントをしたり、感謝の気持ちを込めてお礼のあいさつをしたりしました。また、寿会の方には、運動会にも来ていただき、児童と一緒に大玉ころがしに参加していただくなど、交流を続けています。
 
 JRC活動の一環として、毎年「手つなぎボランティア」を実施しています。異年齢集団(あいグループ)に分かれて、地域の赤十字奉仕団の方々と一緒に八多喜の町を掃除します。1時間程度の奉仕作業でしたが、ごみ拾いや草ひきなどをしていると、あっと言う間に時間が過ぎていきました。終わりの会の感想発表では、子どもたちの充実した思いをたくさん聞くことができました。また、地域をもっときれいにするために、自分たちにできることはないかという思いから、代表委員会で話合いを行いました。「ごみ箱を置いたらいい」「ごみが落ちていたら拾う」「ごみを落とさないように気を付ける」など、たくさんの意見が出ました。その中で、「ポスターを作って呼びかける」という提案があり、みんなでポスターを作って、駅前や公園などに掲示しました。 手つなぎボランティアの様子
 手つなぎボランティア


5 成果と課題
 人権が尊重される学習の推進では、人権が尊重される手立てを意識した授業を展開することで、一人一人の活躍の場面が確保され、児童は、充実感や達成感を味わい、大切にされていると感じるようになってきました。また、道徳や学級活動などで役割演技を取り入れることにより、他者の気持ちに気付いたり、同じ場面でも人によって感じ方が違うことに気付いたりすることができるようになってきました。そして、人権に関する歴史や差別の現実を様々な場面で学ぶことにより、人権の問題を自分のこととして考える児童が増えてきました。

 伝え合い認め合う仲間づくりでは、異学年との関わりが増え、様々な場面で気遣いや思いやりの心をもった言動が見られるようになりました。その結果、学年を超えて互いのよさを積極的に認め合うことができるようになっています。また、学年に応じて、みんなのために自分ができることを実践しようという態度も育ってきています。

 家庭・地域との連携では、協力してくださる地域の方が増え、児童と直接関わっていただく機会も多くなったことで、児童は、地域行事への関心を高め、触れ合いを大切にし、地域の一員として共に活動に取り組むようになりました。

 これまで、自他の人権の大切さに「気付き・考える」子どもの育成に努めてきましたが、まだ十分とは言えないところもあります。さらに、児童の人権意識を高める活動を考え、主体的に行動できる子どもを育てていきたいと思います。


生徒一人一人の人権感覚を磨き、実践力を育てる人権教育の推進
(愛媛県立大洲高等学校)

1 はじめに
 本校は、江戸時代初期の陽明学者中江藤樹の邸宅跡が校内にあります。そのため、藤樹の唱えた「知行合一」を校風の中心とし、得られた知識が行動や実践につながらなければ、本当に知ったことにはならないと常日頃教えています。しかし、人権・同和教育に関する意識調査等を見ると、様々な人権問題などについての知的理解は深まっていると考えられますが、それが実際の生活や行動面に生かされていない場面も見られます。そこで、あらゆる教育活動を通して豊かな人権感覚を培い、自分の人権及び他者の人権を守るための実践行動力を育成するために、上記の研究主題を設定しました。

2 研究の内容
次の四点について研究実践を行いました。

(1) 人権感覚を磨き、実践力を育てる指導方法についての研究
(2) 教職員研修
(3) 人権が尊重される教育環境づくり
(4) 保護者・地域社会への働きかけ

3 実践例
研究実践の具体例をいくつか紹介します。
(1) 人権委員会の活動
ア 人権委員会夏季研修会
 毎年、8月初旬に、うちこ福祉館で、大洲・喜多地区合同の夏季研修会を行っています。研修内容は、各校人権委員会の取組内容報告、内の子手話サークルの皆さんによる手話講座、講演、映写会、フィールドワークなど様々です。
イ 聞き取り学習
 2学期末に、人権委員と教職員等が、様々な方から人権問題に関する話を聞く機会を設けています。様々な人権問題等に関わってきた方に学校に来ていただき、少人数で直接話を伺うことは、講演会等に比べると、その苦労や思いがよく伝わり、生徒の人権意識を高めることができました。
ウ 人権集会
 毎年2月に人権集会を実施し、聞き取り学習の成果を中心に発表を行っています。21回目となるこの集会は、大洲高校の伝統的な行事として定着しています。集会では人権作文の発表をはじめ、様々な人権問題に関する研究発表や報告が行われました。
夏期研修会の様子 人権集会の様子
夏期研修会 人権集会

(2) 地域教材の開発

 中江藤樹が唱えた「知行合一」の教えを全校生徒に周知するために、藤樹をモチーフにしたマスコットキャラクターを作成し、様々な機会を活用して啓発に努めています。
 また、差別解消のために尽した郷土の先人近田英雄や西村兵太郎、水平社喜多郡支部等を授業で取り上げ、生徒の人権意識の高揚に努めました。


(3) 環境づくり
手洗い場 学校が少しでも安らげる場所になるように、手洗い場や中庭などを中心に、心を癒す環境づくりに取り組みました。手洗い場の鏡には、「鏡からのメッセージ」を掲示しています。鏡の向こうの世界から、励まされたり癒されたりする言葉として、誰もが日に何度か利用する手洗い場を明るい雰囲気にしようと、保健委員が空き瓶にペイントを施した手作りの花瓶とポトスなど緑の植物を設置しました。
 どんなときも 君は君らしく                      
 あなたの頑張りは きっと誰かが見てくれているから
 振り向くな 前を見ろ
 大丈夫 きっとうまくいく
 私は私 自分を信じて

(4) 教職員研修
 職員会議後の時間を使って、職員の人権意識を高め、共通理解を図るために、研修会等の報告や人権・同和教育に関わる動向を連絡しています。また、ホームルーム活動前の研修会や、講演会等を通じて教職員の資質・能力の向上に努めています。

(5) 保護者・地域・関係機関等との連携
 教職員が、地域の研修会に参加したり、保護者や関係機関等の方々と一 緒に研究大会等に参加したりすることにより、人権教育の新たな視点や、課題を教えていただくことができました。また、公開授業や研修会を通じて、幼稚園(保育園)や小・中学校との交流を行うことができました。その成果を、発達段階に応じた人権・同和教育の推進に生かしていきたいと思います。
 今後とも、保護者・地域・関係機関等との連携を深め、地域に根ざした人権・同和教育を進めていきたいと考えています。

4 終わりに

 今回の研究実践を通して、藤樹の「知行合一」の教えが全ての教育活動の中で体現され、「自分の頭で考え、選び行動するために学ぶ」ことが、教科指導の中にも反映されてきました。また、現職教育と校内外の研修を通じて、全教職員が同和問題をはじめとする様々な人権問題に対する理解と認識を深めることができました。その成果を、ふだんの教育活動でどのように生かしていくかが今後の課題です。
 本校では、授業や学校行事等を通じて、教職員や生徒相互の信頼関係を深めています。その成果が、いじめの予防や早期発見、安心安全な学校生活の実現につながるのではないかと期待されます。実践力の育成については、生徒個々によって個人差が見られますが、一人の百歩でなく、百人の一歩を目指して、今後とも全ての生徒の人権意識の高揚を目指した取組を実践していきたいと考えています。



特別支援学校教員による
医療的ケア実施の体制整備について

 特別支援学校に在籍する子どもたちの中には、自力で痰などの分泌物を吐き出すことができないため、吸引器で痰を吸引したり、口から食事を摂ることが難しく、鼻などから管を通して栄養を注入したりする行為が必要な子どもがいます。
 これらの行為を「医療的ケア」と言い、本県では、平成15年度から特別支援学校に看護師を配置し、医療的ケアの対応に当たってきました。
 近年、医療的ケアの必要な子どもの数が増加していること、制度改正により、一定の研修を受けた教員も看護師の指導の下で医療的ケアを実施できるようになったことを受け、今年度から看護師と教員の連携による医療的ケア実施体制を整備することとしました。

 教員が医療的ケアを実施するためには、まず、法令で定められた研修を受講する必要があります。
 去る平成26年1月7~9日、県立医療技術大学の御協力のもと、基本研修が行われ、特別支援学校の教員5名が受講しました。
 研修では、同大学保健科学部の先生方による丁寧な講義で必要な知識を身に付けた後、シミュレーターを使った演習を行いました。演習には、各教員の指導に当たる看護師も参加し、看護師の助言を受けながら、繰り返し手技の練習に臨みました

痰の吸引の演習風景
 口腔内や鼻腔内、気管カニューレ内に溜まった唾液や鼻水、痰などを吸引します。衛生面には特に注意が必要です。
痰の吸引の演習風景 痰の吸引の演習風景

経管栄養の演習風景
 鼻から胃の中に挿入したチューブから栄養を注入する経鼻経管栄養、お腹に小さな穴をあけて胃や腸にチューブを通す胃ろう、腸ろうによる経管栄養それぞれについて、手技を学びました。
経管栄養の演習風景 経管栄養の演習風景

 研修を受講した教員は、各特別支援学校で看護師の指導を受けながら実地研修を行い、研修修了の後、県から「特定認定行為業務従事者」として認定を受けて各特別支援学校で医療的ケアを実施することとなります。
※教員が実施するのは、特定の子どもに対する特定の行為のみです。

 特別支援学校における教育活動の一層の充実に向け、医師や看護師、保護者の方々と十分連携を図りながら、医療的ケア実施の体制整備に取り組んでまいります。