特集
「地域人材を活用した土曜教育推進事業」~愛南町の取組について~
生涯学習課

美術館企画展「生誕140年 杉浦非水展 開花するモダンデザイン」開催告知
文化財保護課

文部科学省人権教育研究指定校事業報告
人権教育課

いじめSTOP愛顔(えがお)の子どもフォーラム
人権教育課

特別支援学校文化芸術支援事業
特別支援教育課


「地域人材を活用した土曜教育推進事業」
~愛南町の取組について~
 本事業は,地域の多様な経験や技能を持つ人材・企業等の豊かな社会資源を活用して、体系的・継続的なプログラムを実施し、子どもたちにとってより豊かで有意義な土曜日を実現できるよう平成26年度から県立高等学校で実施しています。  
 28年度は、愛南町で市町補助事業としてスタートしました。その取組の様子を紹介します。 〇活動名 
 ワクワク体験教室
〇教育活動の目的  
 土曜日等を活用して、地域の貴重な遺跡や豊かな自然を舞台として、専門的な知識を持つ 指導者から学ぶ機会を提供することで、子どもたちに郷土愛を醸成することを目的とします。 〇対象 
愛南町の小中学生
〇プログラムの内容(※丸数字は実施順)
1 火起こし「自分で火を起こそう」
(① H28.6.11 山出憩いの里温泉周辺 ③ H28.7.23 旧満倉小学校)
 火打石やマイギリで火を起こすのは、子どもた ちにとって難しいようでしたが、種火から燃え 上がった瞬間、歓声が上がりました。
2 微細貝探し「砂の宝物を探そう」(② H28.6.25 御荘文化センター)
 小指の爪の先ほどの小さな貝殻がたくさん含まれた砂を観察しながら、子どもたちは愛南町の自然の豊かさを再認識しました。
3 シーカヤック「海に漕ぎ出そう」(④ H28.8.10 須ノ川海岸)
 最初は同じところをグルグル回っていた子どもたちも、最後には所定の位置でピタッと整列できるまでに上達しました。
4 石絵「石に絵を描こう」(⑤ H28.8.17 内海中学校)
 石絵は自分で気に入った石を拾うところから始めました。完成した子どもたちの作品は、力作揃いとなりました。
5 ツリーイング「自分の力で木に登ろう」(⑥ H28.10.29 山出憩いの里温泉周辺)
 子どもたちは、自分よりもずっと高い木の上からの景色を楽しんでいる様子でした。
6 平城貝塚「縄文人に会いに行こう」(⑦ H28.11.5 平城公民館)
 子どもたちは、縄文土器を実際に触ったり、図案を写し取ったりして楽しんでいました。
7 木工教室「ハンモックを作ろう」、竹細工「竹で昔のおもちゃを作ろう」
(⑧ H28.11.26 長月 ⑨ H28.12.17 旧西海中学校)
 子どもたちは、使い慣れないナイフに四苦八苦しながら、一生懸命竹を削っていました。
8 星空観測「星空を眺めよう」
(⑩ H29.1.21 一本松中学校 ⑪ H29.2.18 一本松中学校)
 子どもたちは、自分の身体の倍ほどもある大きな望遠鏡を覗いては「見えた!すごい!」と歓声を上げていました。肉眼では点に見えていた金星が、望遠鏡を通して見ると実は半月のように欠けていることを発見したり、赤っぽい星の方が実は表面温度が低いことなどを教えてもらったりしました。グラウンドにも出て、星座を探しながら星にまつ わる話をしてもらい、宇宙への興味を深めていま した。
  
美術館企画展
「生誕140年杉浦非水 開花するモダンデザイン」
開催告知
 美術館では、平成29年2月22日から3月30日まで、企画展「生誕140年 杉浦非水 開花するモダンデザイン」を開催します。 松山市出身で、日本におけるモダンデザインの第一人者として高く評価される杉浦非水の活動と作品を一望する展覧会です。非水の名を知らしめた三越のポスターをはじめ、装丁、雑誌表紙、パッケージ、図案集などの作品から、スケッチや写真など創作の背景を知るための資料、収集した美術工芸品や遺愛の品々に至るまで、当館が誇る7,000点に及ぶコレクションを軸に、その多彩な仕事を紹介します。
杉浦非水《三越呉服店 春の新柄陳列会》
大正3年(1914) 当館蔵
杉浦非水《東洋唯一の地下鉄道 上野浅草間開通》
昭和2年(1927) 当館蔵
 
  
文部科学省人権教育指定校事業報告
 
 
自他の人権の大切さを認め合い、
共に学び合う児童の育成

宇和島市立吉田小学校
 
1 はじめに
 本校では、「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]」の趣旨を踏まえ、人権・同和教育に関する指導方法の改善及び充実を目指して、「自他の人権の大切さを認め合い、共に学び合う児童の育成」に取り組みました。特に、その中で、児童の主体性を重視した児童会活動の工夫や仲間づくり活動の充実、体験活動を重視した総合単元的な人権学習や人権の視点を取り入れた学習の工夫を進めてきました。
 
2 実践内容
(1)仲間づくり部の取組(支え合い認め合う集団づくり)
 ア 児童の主体性を重視した児童会活動の工夫
 児童会で決めたスローガン「笑顔かがやく学校」にするため、児童会の呼び掛けで、各委員会がそのスローガンを達成するための活動を提案しました。(一委員会一提案)自分たちができることをしようという意欲が高まり、各委員会や学級などがつながり、その輪を全校に広げました。  
   <構成的グループエンカウンター>
 イ 相互に認め合い、関わり合う仲間づくり活動
 全校集会においても、各学級や委員会が人権尊重をテーマにした発表を行いました。集会の中に、構成的グループエンカウンターによる仲間づくりの活動を位置付け、全校での共通体験の機会を増やしました。このような活動は、児童の自尊感情の高まりにつながりました。
 ウ 異学年集団や特別支援学級との交流の活性化
  接することの少ない異学年集団で活動させる機会を意図的に増やしたり、特別支援学級との交流を設定したりするなど、互いを理解し、支え合える仲間関係を育てる取組を行いました。交流を機会に、互いを尊重し合う意識が少しずつ育ってきました。
 
(2)学習づくり部の取組(共に学び合う学習活動の推進)
ア 年間指導計画の改善 
 人権・同和教育年間指導計画を、「他の教育活動との関連を図る」という総合単元的な視点で見直しました。教材を複数関わらせ、単発的でなく、継続的に、反復しながら厚みのある学習を展開することができました。  
   <体験活動>
イ 体験活動を重視した総合単元的な人権学習の展開
  課題を解決するために多様な人やものと能動的に関 わらせ、教科を超えて、知識と体験を行き来するよう な学習を設定しました。人権学習を一過性にせず、広 がりと継続性をもたせました。
ウ 人権教育の視点を明確にした授業づくり
  授業の中で人権教育の視点を明確にするため、指導案の中に[第三次とりまとめ]の「人 権が尊重される授業づくりの視点例」を参考にして、「児童の人権が重視される授業にするための指導上の工夫」を明記しました。教科や単元を問わず、人権が尊重される授業を積み重ねることによって、能動的・共同的に学ぼうという気運を高めることができました。
エ 学力向上と進路保障のための取組
 目に見える現象だけに捉われず、子ども一人ひとりに寄り添い、家庭環境など、その背景にあるものに目を向け、児童が、将来につながる基礎的・基本的な知識や技能を身に付け、自信をもって学習に取り組めるよう工夫しました。授業終末の「まとめ」の工夫や多様なテーマでの作文によって、書くことが苦手な児童に改善が見られました。
オ 保護者向け人権・同和教育だより「笑顔かがやき」の発行
 学校の研究推進の方向性を保護者にも理解していただき、協力して児童を育てるために保護者向け人権・同和教育だより「笑顔かがやき」を発行し、ホームページにも掲載しました。学校全体の取組を保護者に知ってもらうよい機会になりました。
 
(3)環境づくり
 仲間づくり部と学習づくり部の取組を校内の各所で見られるようにし、児童が自他を認める意識を高め、学習の成果を振り返ることのできる環境づくりを心掛けました。一委員会一提案で取り組んだ「笑顔かがや木」は、児童玄関を入ると正面にあり、木の生長に自分たちの成長を重ねました。
   <笑顔かがや木>
(4)現職教育の充実と地域と連携した取組
 教職員向け人権・同和教育通信「あゆみ」を発行したり、現地研修を行ったりして、教職員の人権意識の高揚を図りました。
 特に、校区にある40年以上続く「遠見子ども会」への教職員の参加は、地域に学び差別の現実に触れる研修のよい機会となりました。6年生の道徳では、地域を取材し、地域の方の声を聞きながら、地域の史実を教材化して自作資料を作成し、授業実践を行いました。このような取組は、児童が地域を誇りに思い、愛着をもつことにつながりました。
 
<現地研修>
 
3 おわりに
 本校のシンボルツリーである「笑顔かがや木」には、現在も友達を称賛する言葉、自分がうれしかったことなどがぎっしりと飾られています。2年間にわたる取組を通して、児童はもちろん、教職員自身の人権意識の高まりも実感しているところです。
 しかし、「人権が尊重される人間関係づくりの継続的な推進」「外部との対応スキルの習得」など、本校の取組は、まだ課題が残されています。児童とともに、今後もより一層、人権教育の推進に取り組み、自分が大好き、友達が大好きな児童であふれ、笑顔かがやく吉田小学校を目指しま す。
 
   <笑顔かがや木に花を貼る児童>
 
 
人権感覚を磨き、正義を通す実践力をもつ
生徒を育成する

東温市立重信中学校
 
1 はじめに
  正義を通すということを「差別をしない・差別に負けない・差別を許さない」ことと捉え、「差別をしない生徒・差別に負けない生徒・差別を許さない生徒」を目指す生徒像とし、その具現化に向けて研究を推進しました。
 
2 教科指導研究部会の取組
(1) 人権・同和教育の視点に立った各教科等年間指導計画の作成
 各教科等の年間指導計画を改めて見直し、人権・同和教育との関連を明確にしました。
(2) 授業構成表を活用した授業改善
 人権・同和教育の視点に立ち、互いの意見が尊重され、安心して自分の考えを発表できるような「分かる授業」になるよう、考えを練り合い表現し合える場を設定するなど、言語活動の取り入れ方や学習形態などを工夫しました。
(3) 東温市授業評価シートを活用した授業改善
 東温市研修委員会で作成され、授業研究の際に参観者が用いています。一人ひとりを大切にする授業構成と、人権・同和教育の視点を含めた改善をねらいました。
(4) 家庭学習の習慣付け
 学力向上推進計画と関連させて、学年別に目標時間を設定し、実態調査等に継続して取り組みました。
(5) 教職員研修
 [第三次とりまとめ]やハンセン病問題、Q-U等、様々な内容について研修し、教科指導等に生かしました。また、全国水平社支部(のちの愛媛県水平社本部)を温泉郡(現東温市)に立ち上げた松浪彦四郎(まつなみひこしろう)らの活動に関する研修を重ね、授業研究も行いました。
 
3 心を育む研究部会の取組
(1) 人権・同和教育年間指導計画の作成
 道徳、特別活動、教科で人権・同和教育に関わる内容を明記し、教育活動全体での系統性を明確にするとともに、生徒が3年間で系統的かつ効果的に学習を積み重ねることができるようにしました。
(2) 道徳の時間の充実
 人権課題を扱う道徳の時間を研修の機会とし、学年道徳担当者が中心となって授業研究をしました。指導者による学習内容の差が生じないよう、学習指導案(略案)・授業構成表・板書計画・ワークシート等について事前に審議し、授業後は発問に対する生徒の反応等について意見を交換しました。
(3) 人権参観日を中心とした取組
 7月、全学級で人権・同和教育の視点に立った授業を実施しました。また、HIV感染など病気への差別や偏見をなくするために、正しく学習する大切さを伝える人権啓発劇『Start Line~踏み出す一歩~』を披露しました。
(4) 人権感覚を磨く環境づくり
 各学級に人権コーナーを設置したり、校舎内に人権標語や人権に関する掲示物を掲示したりと、日々の生活の中で人権感覚が磨かれるよう環境を整備しました。
(5) 道徳アンケート・人権意識に関するアンケートの分析
 道徳アンケートは4月に実施し、各学級の実態を把握して学級別の道徳指導計画を作成しました。人権意識に関するアンケートは4月と各学期末に実施し、研究の方向性を考えるとともに評価や改善に役立てました。  
     
【参観授業1年】  【人権劇】 【図書館の人権コーナー】 
4 実践活動研究部会の取組 
(1) 人権に関する話合い活動・探究活動の充実
 情報モラルやいじめなど人権問題を扱う学級活動を行いました。3年生では、差別解消に立ち上がった松浪彦四郎らを郷土の誇りとして取り上げ、人権意識の高い学校・東温市にしていく話合い活動をしました。また、「いじめSTOP」「生きる」をテーマとした人権集会や、生徒会役員立候補者によるいじめに関する討論会など、集会活動を充実させました。
(2) 人権に関する実践力・行動力を育てる活動の充実
 『東温市いじめSTOP子ども会議』に参加し、市内の小・中学校の代表者でいじめ防止を目的とした話合い活動をしたり、『いじめSTOP愛顔の子どもフォーラム』に参加して東温市の取組を発表したりしました。「福祉」に関する学習の一環としては、近隣の特別支援学校との交流をとおして相互理解に努めました。また、校内ボランティアリーダーを中心に、地域の福祉施設や開発途上国の子どもに寄付や支援を行うボランティア活動にも取り組みました。呼び掛けに協力する生徒が大幅に増え、自分が役に立ち必要とされているという自己有用感を高めることにつながりました。
     
 【討論会】 【いじめSTOP子ども会議】  【支援学校との交流】 
 
5 おわりに 
 よりよい社会の実現に向けて行動を起こすためには、身の回りの差別や偏見をおかしいと思える人権感覚が必要です。今後も、実践を重ねながら、豊かな人権感覚をさらに磨くことができる取組を続けていきたいと思います。そして、差別解消に向けて立ち上がった先人を郷土の誇りとし、その思いや行動を受け継いでいけるよう、正義を通す実践力の育成に努めたいと思います。 
 
 
互いの人権が尊重される社会、
町民一人ひとりにとって住みやすい町の創造をめざして
上島町教育委員会 
 
1 はじめに 
 上島町では、合併後初となる社会意識調査を平成24年度に実施しました。その結果、合併後一つの町として人権・同和教育を推進してきましたが、住民の関心・意欲が十分に高まっていないこと、また、学校教育では一定の成果が得られているのに対して社会教育の取組が遅れていること、という二つの課題が明らかになりました。そこで、平成26年度より文部科学省の地域指定を受け、人権・同和教育の推進に取り組み、課題を克服し、町全体の人権意識を高めていくことにしました。その事業の一環として新しく立ち上げたのが子どもから大人までが共に学ぶことのできる「地域ふれあい学習会」です。
 
2 子どもから大人まで 地域がつながる取組へ
 合併前には各地区に残っていた地区別懇談会は合併後に実  施されておらず、地域全体で人権・同和教育について話し合 う機会がなくなっていました。しかし、社会教育において、 地区別懇談会のような小集団学習会は必要です。そこで、本 町でも地区別懇談会に代わる新しい形の学習会をつくりたい と考えました。学習会を立ち上げるにあたって、他の自治体 でも課題になっている、会のマンネリ化、参加者の高齢化、 固定化といった今までの課題もクリアできるものにしたいと 考え、子どもを中心にして、地域みんなで話し合える会にしようということになりました。
 
(1) 学校教育との連携
 学習会を社会教育主体として地域に根付いたものにしたいという思いはありましたが、実際開催するとなると、子どもたちをどういう形で巻き込むか、また広く参加者を募るにはどうしたらよいかという点で行き詰まりました。そこで、学校教育としては一定の成果が得られていることに注目し、学校教育で取り組んできた内容を、保護者や地域の人にも発信していけばいいのではないかと考えました。子どもから発信することで、保護者や地域の人の参加が得られるだけでなく、子どもの言葉を通じて大人たちが、人権のこと、地域のことについて真剣に話し合うことができると考えました。
ア 岩城地区地域ふれあい学習会  【中学生との交流会】
 平成27年度にモデルケースとして岩城地区における学習会を開催しました。岩城中学校人権・同和教育参観日を活用し、町内の中学3年生が実施している大島青松園現地研修で学んだハンセン病問題について、各グループで発表を行い、そこから地域の人権課題につなげてグループ学習を行いました。参加者からは、子どもたちが真剣に学んでいる姿を見て、自分たちの学習の必要性に気付いたという意見や、正しいことを知ること、それを伝えていくことの大切さに気付かされたなどの感想があり、この学習会は大人にとっても子どもにとっても互いに効果があることが分かりました。
 平成28年度の学習会では、テーマに同和問題を取り上げました。中学生から同和問題について学習してきた内容の発表、問題提起が行われました。その後のグループ学習では、子どもたちが堂々と意見を述べる様子や、地域の大人が自分の経験を語る様子が見られました。初めて参加した保護者や地域の大人が、子どもたちと共に学び、自分の思いを語る姿も多く見られ、回を重ねるごとに地域の輪が広がりつつあると感じています。
イ 弓削地区地域ふれあい学習会  【高校生との学習会】
 平成28年6月に開催した弓削高等学校でのふれあい学習会は、弓削中学校で実施したいじめ問題のテーマを引き継ぎ、公開授業参観後に、生徒、保護者、地域の方でグループ協議を行いました。今回は観衆や傍観者の立場からいじめ問題を考えました。観衆や傍観者は、結局はいじめを認めていることであり、加害者と同じであることから、自分たちのとるべき行動について意見交換をしました。高校生はしっかりと自分の意見を述べ、地域の大人からは、今までの経験に基づいた意見やアドバイスも出ており、大変活発な話合いができていました。地元の高校と地域の結び付きを深めるという点でも、この学習会は大変有効でした。
ウ 生名地区地域ふれあい学習会
 平成28年10月に開催した生名地区の学習会では、障がい者問題を取り上げました。生名小学校の児童が障がいのある方との交流について発表し、そこから障がい者も高齢者も住みよいまちとはどんなまちか、私たちにどんなことができるのかを話し合いました。障がいの有無に関らず、一人ひとりの個性を認め合い、互いに支え合う地域づくりを進めていこうという意識が高まったと思います。  
   【小学校でのワークショップ】
 
(2) リーダーの育成
 年数回のリーダー養成講座を開催し、リーダーの育成に努めています。この講座は、地域ふれあい学習会の事前学習会にあわせて実施し、学校での児童・生徒の学習内容や取組について学び、正しく知ることから始めて、地域の人権課題について考えています。対象は行政職員が中心で、受講者は各地区の地域ふれあい学習会の進行係や記録係を務めることとし、学習会の中で実践しています。人権・同和教育を推進する上で、話合いやグループ学習を進めるには、正しい知識と豊富な経験が必要になりますが、それを積み重ねる場として、この地域ふれあい学習会の役割は大きいと感じています。実際に地域住民と向き合い、地域の人権課題についてともに話し合うことで、行政職員としての資質向上も図られ、大変有意義な研修の場となっています。
   【養成講座の資料】  
 
3 おわりに
 この取組を通じて学校教育との連携が図れたこと、リーダー育成のしくみができたことは大きな成果です。多くの人と出会い、同じ志をもつ仲間と出会えたことで、人とのつながり、地域とのつながりを深めることが、差別解消に向けた大きなエネルギーになることを実感しました。今は学校教育の力を借りている部分が大きいですが、将来的には社会教育における地域に根付いた取組として熟成させたいと考えています。年間を通して系統性のあるテーマの設定や学習方法を取り入れていくこと、またそれに伴うリーダーの育成をさらに進めていくことが今の課題です。それらを解決しながら、今後も長く継続できる取組として、また本町の人権・同和教育推進の柱として、これからも粘り強く大切に実践していきたいと思います。
いじめSTOP愛顔(えがお)の子どもフォーラム
 12月17日に砥部町文化会館において「いじめSTOP愛顔(えがお)の子どもフォーラム」を開催しました。 このフォーラムの目的は、愛媛県の児童生徒が主体的に行っている、いじめを防止する活動の充実を図るものです。今年度は高校生のいじめ防止のための取組の発表も交え、県内の児童生徒の代表者、教職員・保護者等850人が集まる行事となりました。  
 
子どもフォーラムの概要 
 
【開会行事】 
  開会行事は、今回のフォーラムでパネリストを務めた、金生第一小学校6年、真鍋新太(まなべあらた)さんと猪川愛華(いのかわあいか)さんが「いじめのない、みんなが愛顔で過ごせる学校にしていきましょう。今日のフォーラムを通して、いじめをなくしていく仲間となりましょう」という力強い開会宣言を行いスタートしました。  
   (小学生による開会宣言)
  また、井上正教育長の挨拶では、伯方高校の生徒が作ったいじめ防止ソングの歌詞を例に挙げ、「君はひとりじゃないよと友達に声をかけてもらったなら、どんなにうれしく、どんなに勇気がわくことでしょう。今日のフォーラムでは、一人ひとりが主役となって、いじめ問題にどう立ち向かうか考えていきましょう。皆さんがリーダーになってかけがえのない仲間を守る学校づくり、地域づくりに取り掛かってくれることを願っています」というメッセージをいただきました。
       (教育長挨拶)  
 
【人権劇】
 開会式の後、大洲高校の皆さんによる人権劇「立ち向かおう 声を上げよう~Stand up,Speak up~」が演じられました。物語の内容は、クラスで起きたいじめに対して、過去にいじめられた経験のある生徒が勇気をもって立ち上がるというもので、いじめの傍観者にならない勇気の大切さがメッセージとして伝わってきました。生徒たちの迫真の演技に、参加者からは「感動した。自分も勇気を もっていじめを止めていきたい」と いった力強い感想が多く寄せられました。  
  (人権劇のワンシーン)
 
【パネルディスカッション】
   
 (意見を述べるパネラーの皆さん)  (会場からの意見)
 全体会では、鳴門教育大学の阪根健二教授をコーディネーターに、金生第一小学校、津島中学校、松山南高校の代表児童生徒がパネリストとして、自校のいじめ防止の取組を交えながら意見交換を行いました。会場からも様々な意見や感想が出され、県内の児童生徒が取り組んでいるいじめ防止の活動を共有する貴重な時間になりました。 その他にも今治西高校が制作した放送番組の上映や川之江高校が作成したハンドブックの紹介もありました。
 
【閉会行事】
  閉会行事では、伯方高校の皆さんが、自分たちが制作したいじめSTOPソング「愛顔(えがお)のために」を合唱した後、参加者全員で歌いました。  
 歌詞に込められた思いからいじめ防止を胸に誓い、会場がひとつになった瞬間でした。  
 最後に松山南高等学校2年、清家悠斗(せいけゆうと)さんが「私たち自身の力で、いじめをなくす勇気と願いを、友達、家族、先生、地域の人たちにつなげていきましょう」と力強く閉会を宣言し幕を閉じました。
 
終わりに
 今回のフォーラムは、小中学生に加え高校生も多数参加しました。また司会進行を中学生(川内中学校・湯山中学校)が務め、その様子を北条高校生の皆さんが取材し新聞にまとめるなど、まさに子どもたちによる、子どもたちのためのいじめ防止の取組となりました。本当に愛媛の子どもたちの素晴らしさを実感する1日になりました。
  今後は、参加者がフォーラムの学びを各学校、地域に持ち帰り、社会総ぐるみのいじめ防止の取組が推進されるよう期待しています。
       (司会進行の中学生の皆さん)
             
特別支援学校文化芸術支援事業
 
 県教育委員会では、坊っちゃん劇場の協力のもと、劇団員による実技指導や歌唱指導などのワークショップを通じて、特別支援学校生徒の生きる力や主体的に自立し社会参加していく態度の育成を目指し、本年度新規事業として特別支援学校文化芸術支援事業に取り組んできました。
 
本年度の取組
 本年度は、県立みなら特別支援学校高等部3年生を対象に、計18回のワークショップを実施するとともに、活動を通して創り上げたオリジナルミュージカル「雨ニモ負ケズ~賢治誕生~」を坊っちゃん劇場で公演しました。
事業開始前の生徒の様子
 みなら特別支援学校高等部3年生(61名)は、学習やスポーツに熱心に取り組む一方、友達との人間関係で悩んだりコミュニケーションに自信が持てず消極的になったりする生徒もいました。そこで、本事業の取組を通して、生徒全員がオリジナルミュージカル上演という目標を持って取り組むことにより、仲間同士の信頼関係や協調性、自己表現力の向上につながり、将来への自信に結び付くのではないかと考えました。
ワークショップを計画的・継続的に行うための工夫
 坊っちゃん劇場の劇団員の方に定期的に来校していただき、ワークショップを実施するために、音楽や国語、生活単元学習、総合的な学習の時間などにワークショップの時間を設定し時間割を編成しました。その結果、演技や歌唱練習、小道具などの制作活動を年間を通じて段階的、計画的に行うことが可能となりました。
ワークショップの活動内容
 ワークショップの活動内容を実施時期により、①導入、②展開、③成果・まとめに分けて紹介します。
 
【①導入】
○活動内容:講師による朗読劇、歌唱の鑑賞。演技練習、歌唱練習の実施。
   
 朗読、群読の様子  歌唱練習の様子
 
○生徒の様子
 朗読劇の鑑賞では、劇団員の方が、表情や声色を変化させて登場人物の心模様までも表現する様子を間近に見ることによりミュージカルの魅力に気づき、期待感を高めることができました。
 
【②展開】
○活動内容:台本の読み合わせ、歌唱練習。演技、踊りの練習。文化祭でのリハーサル発表。
   
 歌唱練習の様子  演技練習の様子
 
○生徒の様子
 台本の読み合わせでは、恥ずかしさからうつむき加減で小声の生徒もいましたが、ワークショップを重ねるにつれて、自分たちでミュージカルを創り上げようとする意欲が高まり、劇の流れを把握し、自分の役割を自覚した演技や歌唱ができるようになりました。また、配役ごとにグループ分けすることで、グループごとの一体感が生まれ、仲間同士の信頼感や協調性を高めることができました。
 
【③成果・まとめ】
○活動内容:坊ちゃん劇場でのミュージカル公演
   
 案内パンフレット  ミュージカル本公演の一場面
  
○生徒、観客の様子
 坊っちゃん劇場を埋め尽くした約450人の観客から称賛の拍手や言葉を掛けられ、生徒たちは練習の成果を最大限発揮できた喜びにあふれ、大きな達成感を感じることができました。
  観客からは生徒たちのひたむきで熱のこもった演技に「生徒一人一人が個性的で、ミュージカルではそれが十分引き出されていて素晴らしかった」、「生徒の皆さんの気持ちのこもった演技に感動した」など生徒の演技を称賛する感想が多く聞かれました。
 
おわりに
 本事業に参加した生徒たちは、オリジナルミュージカルを創り上げる経験や、大舞台での発表体験から、自己有用感を高め、卒業後の生活への自信に結び付けることができました。また、坊っちゃん劇場での成果発表を広く地域に発信することにより、障がい者理解の促進につながったのではないかと感じています。