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1 はじめに |
平成30年3月に告示された新学習指導要領では、講義形式で知識を学ぶだけでなく、主体的・対話的で深い学び(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)の視点に立った授業改善を行うことで、学校教育における質の高い学びを実現するとともに、生徒が学習内容を深く理解し、必要な資質・能力を身に付け、生涯にわたって能動的に学び続けるようにすることが求められています。 アクティブ・ラーニング型授業を充実させるためには、教育におけるICT(情報通信技術)の活用が極めて重要です。高校教育課では、平成29年度に「アクティブ・ラーニング型授業環境整備事業」を立ち上げ、県立学校におけるICT環境整備を行ってきました。 本事業は、平成29年度に整備したICT機器を活用した授業の在り方について検証するとともに、今後の学校におけるICT環境整備計画を定めることを目的として行うものです。 |
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2 「アクティブ・ラーニング型授業環境整備事業」による整備 |
全県立学校にそれぞれ電子黒板1台以上の整備を実施しました。また、効果的な検証を実施するため、高校における重点整備校2校には全普通教室へ電子黒板を整備しました。 |
(1) 高等学校及び中等教育学校(108セット) |
電子黒板機能付きプロジェクタの常設化、映写対応ホワイトボード整備 |
・ 重点整備校2校(松山東・松山商業)各27セット(54セット) |
・ その他の学校54校各1セット(54セット) |
(2) 特別支援学校(10台) |
テレビ型電子黒板の導入 |
・ 10校各1台(10台) |
電子黒板機能付きプロジェクタ |
テレビ型電子黒板 |
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3 平成30年度実施内容 |
(1) えひめインタラクティブ学習フェスタ |
6月20日(水)に、松山東高校と松山商業高校を会場として開催しました。両校は、電子黒板機能付きプロジェクタの重点整備校です。フェスタでは、電子黒板を活用した公開授業を行い、県立高校、中等教育学校の教員等70名が参観しました。 公開授業では、次のような電子黒板を活用した授業が行われていました。 |
○ 国語では、漢文をスクリーンに映し出して、板書の時間を短縮する。電子ペンで返り点や送り仮名などを書き込み、解説する。 |
○ 地理では、インターネット上の地図をスクリーンに映し、電子ペンでポイントとなる地点を書き込む。 |
○ 理科ではタブレットを併用。実験の様子を動画で撮影し、繰り返し再生して変化を確認する。代表班の画像を電子黒板に映し出して共有する。 |
○ 英語では、ネイティブの発音動画を再生し、発声を学習する。また、新出単語のフラッシュカードをプレゼンテーションソフトで作成し、スライドショーを行う。 |
○ 商業では、生徒が作成したプログラミングの画面を映し出して、発表する。 |
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実践報告、研究協議では、重点整備校による報告や、電子黒板の効果的な活用方法について意見交換を行いました。 |
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また、各校が提出した次のような授業実践事例の報告もありました。 |
○ 地理では、地形図やインターネット上の航空写真をプロジェクタに投影し、電子黒板上に考察の過程を書き込むことを通して、村落の形成について理解を深める。 |
○ 数学では、方程式が表すグラフを予想し、ホワイトボードにかいた後、正解のグラフを重ねて表示する。 |
○ 理科では、2画面機能を使い、実験動画と反応式を同時に映して説明する。 |
○ 英語では、アプリを活用して英文を提示し、ストップウォッチ機能を利用した音読タイムトライアルを行う。 |
○ 工業では、部品や工具の実物写真を投影し、電子ペンで解説を加える。 |
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(2) ICT環境整備に係る視察 |
今後の学校におけるICT環境の整備計画を定めるために、先進的に整備されている徳島県及び奈良市を訪問し、聞き取り調査を実施しました。 |
ア 徳島県立総合教育センター |
5月23日(水)に、徳島県立総合教育センターを訪問しました。徳島県では、県立学校の高度情報化に関する施策の推進や予算要求、ネットワーク管理、機器の設置や保守等については、全て総合教育センター教育情報課が一元的に行っています。平成29年度末までに次のような設備が整えられており、先進的な取組を知ることができました。 |
・ 県立学校全ての教員に、校務系端末(ノートパソコン)及び学習系端末(タブレット)を配付。 |
・ 県立学校の全ての普通教室、職員室、特別教室のうち6教室、一部の体育館に学習系ネットワークの無線アクセスポイントを設置。無線アクセスポイント1台当たり200台の端末が接続可能。 |
・ 県立学校の普通教室に、スライド式の電子黒板を順次設置。 |
・ 県独自の校務支援システムを導入。開発プログラムを総合教育センターが作成し、地元業者が製品化。 |
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無線アクセスポイント |
テレビ会議システム |
一元管理のサーバルーム |
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イ 奈良市立一条高等学校 |
6月12日(火)に、奈良市立一条高等学校を訪問しました。同校は、スーパースマートスクール(SSS)と称した、デジタルが得意な分野はデジタルに任せ、人間が行うべき分野は教職員が行うことで、学校教育の質の向上を目指した取組を進めています。平成29年度末現在、次のような設備が整えられていました。 |
・ 校内にWi-Fiを整備し、全ての普通教室にアクセスポイントを設置。 |
・ 生徒の端末はBYOD(自己端末の持込)とし、全ての教室で使用できる環境にある。自己端末を持っていない生徒に対しては、学校で購入したiPod touchを貸し出している。 |
・ 全教室に固定式のプロジェクタを設置している。プロジェクタ利用時は、黒板にロールスクリーンを貼って、画面を表示させている。 |
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4 おわりに |
本事業では、えひめインタラクティブ学習フェスタ及びICT環境整備に係る視察を通して、ICT環境整備計画策定を目的としてきました。 えひめインタラクティブ学習フェスタで行われた公開授業では、ICT機器を活用して、動画教材を映したり、2画面を同時に映して比較したりすることで、生徒の関心を高め、理解を深める授業が実践できることが確認されました。また、導入当初は機器操作に不安感を持っていた教員も、毎日機器のある環境で授業を行うことで、機器操作に慣れ、不安感が払しょくされることが分かり、機器の常設が教員のICT活用指導力を向上させることが明らかになりました。 ICT環境整備に係る視察からは、機器整備による効果だけでなく、苦労したこと、気を付けなければならないことなども教えていただきました。先行して実施している自治体の事例を参考にしていきたいと思います。 文部科学省は、「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」において、目標とされている水準を示しています。その中には、普通教室において、「大型提示装置100%整備」、「無線LAN及び高速インターネット100%整備」などがあります。本事業を通して、学校におけるICT環境整備の今後の在り方を十分に検討し、充実した授業活動が展開できるよう努めます。
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