私の教育実践



四国中央市立川之江幼稚園 教諭 鈴木愛

体を動かす楽しさを味わいながら、育つもの

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 本園が位置する川之江町は四国中央市の東部にあり、製紙業や紙加工業などを中心とした紙の町です。近くには城山公園・川之江城や川之江漁港があり、自然にも恵まれています。本園から500メートルほどの所には川之江商店街が、また、その周辺には小学校や中学校、高等学校、JR川之江駅があり、人の行き来の多い環境にあります。
 本園は、来年度から隣接している川之江保育園と合併し、川之江こども園として新しくスタートすることになっています。こども園への移行に伴う工事のため、H30年1月から園庭が使用できない状態でした。今私は年長組の担任をしていますが、戸外で体を動かす機会がぐっと減ったため、幼児の運動不足、体力低下を感じていました。また幼児の中には、少し体を動かしただけで「疲れた」と言う、靴を履き替える時に座り込む、姿勢保持ができにくく集中が続かないなどの姿が見られていました。さらに自己主張が強く、友達と合わせにくい姿もありました。そこで、友達と一緒に体を動かす楽しさや心地よさを感じながら、様々な活動への意欲をもち、協調性やコミュニケーション能力を育くみたいと考え、運動遊びの工夫を園全体で取り組んできました。

<リズム運動を通して>

 本園では、朝の全園児の活動として、できるだけ毎日リズム運動に取り組んでいます。リズム運動は、ピアノの音に合わせて、歩いたり、止まったり、跳んだり、這ったり、走ったりと、多様な動きをすることで、全身の筋肉を使うように工夫されており、バランスよく全身を発達させることができます。リズム運動に取り組むことで、しなやかな体の動きが身に付き、姿勢を保持する力、手先を器用に動かすことなどにもつながっていきます。また、音に合わせ、人の動きに合わせることで、協調性や調整力が育くまれ、社会性やコミュニケーション能力も身に付いていきます。全園児で取り組むことで、3・4歳児は5歳児の姿を見て学び、5歳児は年長児としての自覚ももつことができているように感じます。リズム運動は、無理をせず、毎日楽しく続けることを第一に考えています。目に見えてすぐに成果が出るものではありませんが、継続することで体幹が鍛えられ、姿勢保持の力や集中力、社会性が育っていきます。今後も継続して取り組んでいきたいと思います。

<園外へ出掛ける>

 今は車社会となっており、どこへ行くにも車を使うため、歩く機会が減っています。担任している年長組の幼児は、4月から小学校に通うことになりますが、『歩く』という基本的なことが身に付いていないと感じ、園外へ出掛ける機会を増やしていきました。1学期にはカレーパーティーの材料をスーパーに買いに行ったり、2学期には城山公園周辺で秋探しをしたり、3学期には川之江小学校まで歩いて行ったりと、積極的に園外へ出掛けました。最初は、少しの距離を歩くだけでも時間がかかり、ふらふらと危なっかしい様子でしたが、何度も出掛けるうちに足取りもしっかりして、3・4歳児をリードしながら歩けるようになってきました。散歩中に出会う方とあいさつを交わすことで地域の方と交流ができたり、身近な自然の移り変わりを感じたりして感性も豊かになってきたと思います。
 幼児が体を動かすことを好きになるためには、教師自身が体を動かすことの心地よさを実感する姿を見せ一緒に楽しむことが大切だと感じます。今後も幼児の発達段階や経験を踏まえ、心体両面の育ちを促すことができるような、遊びや活動を工夫しながら、共に楽しめる教師でありたいと思います。

松山南高校 校長 染田祥孝

自分の世界を広げる オール松山南の風をパートⅡ

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 本校は、今年度で128年目を迎える、県下有数の伝統校です。その前身は、「県女」と呼ばれる、愛媛県高等女学校で、爾来、女子高の伝統を受け継ぎながら、戦後、新制の男女共学となり、幾多の変遷を経て今日に至るまで、自由と温かい人間性を重んじる校風を培ってまいりました。
 「自らを律せよ」を校訓とし、のびのびとした雰囲気の中、生徒は大きく成長していきます。そのような「南高」には、三つの顔があります。末広町には、①全日制の普通科・理数科と②定時制の普通科、砥部町には③デザイン科があります。それぞれが特色を持ち、とりわけ①は、県下有数の進学校、文部科学省指定のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)として、②は単位制の3年で卒業可能なフレキシブルな定時制として、③は砥部焼の担い手やデザイン界のリーダーを育成する専門学科として、これまで目覚ましい発展を遂げてきました。三つの顔を併せ持つ「南高」ですが、もっと、お互いを深く知るという機会を設け、「オール松山南」という意識を高めていこうではないかと、3年前に、畑野智司前校長先生が提唱され、本校全日制第一期入学生で、現在、多摩美術大学の名誉教授をなさっている、わたなべひろこ先生を講師にお招きして、初めて三つの「南高」が一緒になった合同イベントが開催されました。イベントでは、生徒たちは「南高」としての一体感を強く感じ、互いの良さを更に知らねばと思うようになりました。畑野校長先生は、その年を「「オール松山南 元年」と位置づけ、魅力のある学校づくりをいっそう推進されました。
 私は、2年前の4月からバトンを受け継ぎましたが、全日制、定時制、デザイン科の生徒の、また、保護者の方々の、交流が一層活発になることを願い、それぞれの生徒会、PTAに引き続き、「オール松山南」のアイデンティティの醸成をお願いしてまいりました。
 平成30年夏の高校野球選手権大会愛媛県大会で「南高」野球部は39年ぶりのベスト8に入ることができましたが、その時のスタンドでは、デザイン科の生徒も一体となって応援をしてくれました。また、デザイン科とSSHのコラボによる、銀杏から紫色の釉薬をつくるという研究を数年にわたって継続的に行い、昨年度その釉薬を使った砥部焼の制作に成功しました。「銀杏ガールズ」による、その研究は全国的にも高い評価を受け、数多くの賞を獲得し、「七折の梅」を用いた釉薬の開発にもつながっていきました。昨年度2月に実施しました、全日制の「芸術・文化発表会」でも、デザイン科、定時制から作品が寄せられ、共同しての展示が行われました。
 徐々に徐々に機運が盛り上がっていく中で、今年度は「芸術・文化発表会」をオール松山南で取り組もうということになり、8月に三つの「南高」のPTAの方々の合同懇親会を行い、それを皮切りに何度か打ち合わせ会をもって、令和2年2月1日(土)に松山市民会館で「オール松山南 芸術・文化発表会」を実施いたしました。
 「芸術・文化発表会」では、オープニングで定時制と全日制のコラボによるバンドの演奏を行い、見事な指さばきのギターとリズミカルでテンポのよいドラム、熱い思いのボーカルが心地よく響き合いました。また、デザイン科は、文化祭の目玉である「ファッションショー」を「芸術・文化発表会」バージョンにアレンジし、斬新な衣装と魅力満載の演技で1000人を超す大観衆の目を虜にしました。全日制、定時制の生徒にとって初めて見るデザイン科の「ファッションショー」は圧巻で、大歓声が上がり、賞賛の拍手が惜しみなく送られました。また、7年連続県大会優勝のダンス部や3年連続四国大会金賞の吹奏楽部の演奏などを、デザイン科や定時制の生徒が味わいました。
 違った世界を垣間見て、互いの良さを知り、自分の視野を広げていく。日常の学校生活とはまた違った、それぞれの学校生活があることを肌で感じ、頑張っている姿に互いにエールを送り、尊敬の念を抱く。「オール松山南」の取組がもたらしものは、大きいと感じています。