浦山小学校は石鎚の麓にある小さな小学校です。小学校周辺は木々に囲まれ、豊かな自然の中にそっとあるいやされる小学校です。標高約３００メートル、標高が１００メートル上がるにつれ、気温は０．６度下がるといわれていますが、浦山地区の場合、冬の気温はもう少し下がるように感じられ、氷点下０度以下の日も見られます。
　昨年度一年間、ＮＨＫ「ほりのうち５」で浦山小学校が取り上げられました。小さな学校なりのよさを感じてくださった方もいて、その方々が時折訪ねてくださいました。
　この４月に一人の男の子が転校してきました。児童一人だけの小学校になる可能性があったのですが、４年生男子が転校してきたおかげで、６年女子児童を含め、児童数が２名となりました。
　浦山小学校は独自の活動を行っています。その一つが竹炭活動です。 まず、保護者の方々の協力のもと、竹林（保護者所有）から竹を切り出します。竹の切り出しは案外難しく、どこへ倒すかを考えて切らないといけません。切った竹を枝打ちし、学校へ運びます。運んだ竹を７５�p（窯に入る長さ）ずつに切ります。その竹を４等分に割り、陰干しします。半年以上陰干しして乾燥させた後、２つの窯に入れ、炭焼きをします。中の空気を暖めることで自然に炭化が起こります。そのとき、煙突から上がる煙の色が灰色からきれいな白色へと、不思議と変わっていきます。また、煙が青空めがけて上がると同時にポテポテと、竹酢液が煙突から落ちてきます。それをバケツに受け取り出します。竹酢液は半年間寝かせたものを濾過し、ペットボトルに詰め、商品ができあがります。薄めた竹酢液は、庭木や農作物への消毒用として大変人気があります。
　焼いた後、窯を開け、竹炭を取り出します。うまくできた場合、竹炭と竹炭でたたきあうと何とも言えない澄んだ金属音のような音がします。それらを１５�pずつに切り、ナイロン袋に詰めます。これらの作業も子どもたちと共に行います。
　このナイロン袋の中にはラベルを入れるのです。どういうラベルを作れば、より売り上げが伸びるかを考えさせ、自分たち独自のラベルを作らせます。こういう言葉があったら売れるのではないか、こういうイラストを載せれば売れるのではないのかと夢中になり、自然と工夫する力が身に付いていくように思われます。また、工夫すればするほど売り上げが伸びていきます。できた竹炭と竹酢液は水都市（すいといち）や石鎚ふれあいの里で販売しています。
  暖かい春になると草木がいっせいに芽ぶきます。どこにどんな山菜があるのかもう分かります。そこで子どもたちとともにゼンマイ、ワラビ、タシッポ、タラの芽、竹の子を採りに出発です。浦山地区は山菜の宝庫なのです。
　夏になれば谷川で水泳ができます。学校近くの安全で適度に深さのある秘密の自然プールへと向かいます。自分たちで栽培したプチトマトを手に持って出発です。だんだんと水の音が勢いよく大きく聞こえてきます。自然の中で伸び伸びと水泳です。プチトマトは天然の水により冷やされ、おいしく食べることができます。
　秋になると浦山校区大運動会の始まりです。浦山地区以外にも大保木地区の方々そして交流している神戸小学校の児童も参加してくださいます。浦山に在籍していた先生方も参加されます。この日ばかりは谷間に歓声が響き渡るのです。１０月になると、栗の木から実が落ち始めてきます。毎日毎日、収穫します。銀杏も負けずに大量に落ちてきます。銀杏の場合は手が荒れないように手袋をはめ収穫です。
　この季節、学校周辺の道路で猪がよく見られます。親子で登場したり、一匹で登場したりします。テレビで猪突猛進する姿をよく見ますが、私が会った猪は全て逃げていきました。何かで興奮させなければ、襲われることがないように思われます。また、リスが隠れるようにして、走っていく可愛い姿も見られました。通勤途中でこんなにいろいろな動物にあう経験は今までしたことがありません。真っ白に紅葉するコシアブラのきれいさも見たことがありませんでした。
　冬です。浦山校区は一段と寒さが厳しくなります。辺り一面銀世界です。誰も踏んでいない雪を一歩一歩歩く気持ちのよさ。石鎚スキー場で神戸小学校の児童とともに交流学習として、スキー教室が行われます。朝、全然滑れなかった子が昼には滑ることができるようになります。
　浦山小学校に赴任するまでこれほどまでに四季を感じたことはありませんでした。全く今まで経験しなかった別世界に歩ませていただき、貴重な経験を積むことができました。
　黒瀬ダムの奥にある浦山小学校、よかったら一度訪ねてみませんか。