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翠地区に適した校舎建築に尽力を注いだ
井上熊太郎 |
まずは、「光と風と香りのある翠小学校」からです。
「光と風」は、太陽光と自然の風のことです。昭和7年に落成した現校舎の建築には、井上熊太郎氏(写真)の多大なご尽力が伺えます。
例えば、東西を流れる上灘川と大栄川の二つの川の合流地点に本校は位置しますので、山風と浜風が谷川沿いに吹き込みます。そのため、当時より望ましいとされていた南向きの校舎ですと夏に涼しい浜風と山風を取り込むことができなくなる上、運動場が強風による砂埃に悩まされること間違いなし。
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そこで考えたのが、学校建築としては異例の東向き校舎でした。
今では、その狙い通り、夏は涼風を各教室に運び、冷房設備も不要のため電気代節約と一挙両得。冬は「ほっちょ風(ほっちょとは包丁がなまった言葉とも言われている)」と呼ばれる身を切られるほどの厳しい風を受けるものの、強い寒風から校舎がグラウンドを守ってくれるのです。
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朝日に恵まれた
日向ぼっこタイム |
この東向き故に光のよさも生まれました。午前中の朝日が2階の木質廊下をゆるやかに暖め、三々五々に自由なスタイルで暖を楽しめます。それが、業間時の日向ぼっこタイム、心地よい時間です。
一方、夕日の刻にはすべてのガラス窓が真っ赤に彩られ、幻想的な校舎が浮き彫りになる一瞬を鑑賞もできます。朝日と夕日の光を存分に受けている本校舎のすばらしさは、卒業生代々の語りぐさにもなっています。
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次に、香りのことを。
明治35年に植栽されたギンモクセイの香りです。伊予市の天然記念物にも指定され、9月末から10月上旬にかけてクリーム色を帯びたやや白っぽい花を咲かせます。この香りを言語表現すると「フルーツの爽やかな香り(子ども)」「気品のある馥郁たる香り(大人)」。ぜひ実際に来校され体験して頂きたい香りです。
続いて、建築関係者や多くの有識者(特に大学教授と専門家)の皆様方により実現した、地域と子どもたちの夢また夢物語を受けての学校エコ改修のお話です。
広い廊下と外観はそのままに、「暑い」「寒い」「まぶしい」「暗い」「危ない」「臭い」という悩み、【六つのい】を解決してほしいとの願いを基に、主に以下のような改修が施されました。
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【暑い】→ |
風の入りにくい南向き教室には開閉窓で風を採り入れる工夫。 |
【寒い】→
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寒さ厳しい開放廊下を通らず教室内部で行き来できるよう出入り口を新設。
2階の各教室に冷気を入れないよう、可動式の防風建具(写真)で仕切りを。
古紙利用の断熱材とペアガラス、間伐材チップ使用のペレットストーブの導入。
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【暗い】→ |
一日中照明の必要な箇所にはトップライト・光ダクトで自然光を。 |
【臭い】→ |
和式・別棟のトイレを取り壊し、節水型洋式トイレを校舎内に。 |
【危ない】→
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劣化した構造材は取り換え、シロアリ駆除を。建物全体の水平維持を確保して建て付けの悪さを解決。そして耐震壁を増やし耐震補強を万全に。ポリカーボネート使用で透明・見通しのよい耐震壁も実現。 |
【まぶしい】→ |
校舎西側に西日を遮る落葉広葉樹を植樹。 |
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なお、光は太陽光パネルで、風は風力発電でともに電気をつくり、利用中です。
このほか、多くの方々の知恵が結集してエコで快適な学習環境を手中に収め、なおかつこれまでも木造の頑強さを証明してきた本校としては、今後この校舎を百年後までつなげていくことが次なる課題でもあります。そのため学校や地域を見つめ、未来のエコな実践者となる子どもたちへの環境教育も推進し、子どもたちによる学校案内も行っています。
まだまだつたないエコキッズの案内人ですが、グッズである「光の子」「風の子」「香りの子」の帽子(写真)も整いました。
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本校独自のエコキッズ帽子 |
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子どもたちが設計に加わったエコデッキ(写真)もありますから、子ども目線でのガイドが楽しめます。 |
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子どもたち設計のエコデッキ |
一方、大人も「翠小学校百年構想実行委員会」を立ち上げ、児童数激減の歯止めにと校区の弾力化に意欲を示し、伊予市や教育委員会のお力で、これも来年度からの実施となりました。既に、校区外通学の希望者があり、前向きに進んでいることをお知らせします。
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百年間をカウントする木のバースデーケーキ前での記念写真 |
百年後の未来に向かって、初年となる今年度を確実に歩み始めている元気な翠小学校へ、ぜひ足をお運び下さい。
エコで内装が様変わりした翠小学校ですが、変わることのない翠地区の光と風と香りの翠小学校シャワーは存分に味わっていただけますから。
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満開のギンモクセイ |
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