私の教育実践

自然の中でわくわくどきどき

新居浜市立王子幼稚園 教諭 藤田京子

地域とともに
愛媛県立八幡浜高等学校 校長 吉岡逸郎
自然の中でわくわくどきどき

新居浜市立王子幼稚園 教諭 藤田京子

新居浜市立王子幼稚園 教諭 藤田京子
 私の勤める王子幼稚園の取組みを紹介させていただきます。

本園は新居浜市の北西に位置し、近くにある大型商業施設や公民館、小学校の方々との交流や、広い園庭や裏山で自然とのかかわりをもつことができる恵まれた環境にあります。園児は、明るく話し好きで知識の豊富な子が多く、友達とのかかわりを楽しみのびのびと園生活を送っています。しかし、大人の目が行き届く限られた空間での遊びに偏りがちで、自分の判断で行動したり友達と競い合ったりしながら十分に体を動かして遊ぶ経験が少なくなっています。自然や社会環境の変化は、幼児がたくましく成長する機会を奪っているように思います。そこで、園では「豊かな心でたくましく生きる幼児の育成」を目標に、自然との触れ合いや友達との集団遊び、地域との交流などを大切に活動しています。
 「もっとダイナミックな遊びをさせたいね。」「少しくらいのけが、昔の子は平気だったよ。」「大切な子どもを預かる以上、安全は何より大事。」「小さな擦り傷でも保護者はすごく心配するから、報告が必要。」「動きの心配な子もいるよ。」など、いろいろと話し合った結果、惣開小学校に隣接する王子ヶ丘で遊ばせてもらうことになりました。
 王子ヶ丘にはたくさんの木や植物があり、斜面にはトリム施設が整備され、幼稚園とは別世界です。歩きやすい道に慣れた子どもたちは、山のでこぼこした道や階段に苦戦しながら登っていきます。少し平らな場所になるとホッとしてたくさんの木を見上げたり、枯葉を踏んで「カシャカシャする!」とはしゃいだりしています。それでは子どもたちの姿を紹介しましょう。

子どもたちの様子(わくわく発見!) 木の枝 葉 実 石 虫 秘密の道 基地 木漏れ日

 「先生、こっちに来て!」「こんなものあったよ!」と、自分からどんどん動いて見付けたものを知らせてくれます。四季折々の宝物を見付け「これいいね。」と友達と分け合ったり、大きな枝を担いで見せたり、体が隠れるほどの草むらを秘密基地にしたり、山の上から景色を眺めたりします。

(どきどき挑戦!) 急な坂 でこぼこ道 ぶらぶら橋 ネット

 急な坂、そびえ立つ木、茂った草などを見ると、「気を付けよう。」と誰もが感じます。それぞれの幼児が自分で選んだ場所で、ときに足を滑らせながら必死に踏ん張って進んでいくときの手足の動きや表情は真剣そのものです。怖い子は先生や友達にしがみつきながら進み、自信のある子はより険しい場所に挑戦しています。

(友達といきいき!) 助ける 助けられる 一緒に行動 イメージの共有

 怖くて動けなくなっている子を見付けると、周りの子どもたちが張り切ります。「自分が助けないと大変だ。」と思うのでしょう。先生を呼んだり、「ここにつかまって。」と教えたり、手を引いてあげたりします。「僕は登れるよ。」と自慢気に登って見せる子もいます。少し危険を感じる場所だからこそ、助け合う気持ちが強くなったり周りの子どもたちの様子が気になったりするようです。
 回を重ねるごとに、「先生、○○ちゃん見なかった?」「ドングリを入れる袋をちょうだい。○○ちゃんの分も。」「ぼくらは探検隊よ!」など、友達と一緒に行動することが多くなり、遊びのバリエーションが広がり楽しさも増してきました。

 王子ヶ丘には、五感を使って感じ考えながら挑戦できる環境がいっぱいです。
 これからも、「こんなことをしたい。」「今年の子どもたちはどんな反応をするだろう。」など話し合うなかで幼児理解と情報交換に努め、地域の方々や身近にある自然の力を借りながら、どきどきわくわくできる経験を模索し、幼児がたくましく成長していく姿を求め続けていきたいと思います。



地域とともに
愛媛県立八幡浜高等学校 校長 吉岡逸郎

愛媛県立八幡浜高等学校 校長 吉岡逸郎 前まで歩いた駅で汽車を降り、一泊二日程歩き、最寄りの駅から帰宅するというお四国巡りをしている。数ヶ寺が抜けているが、高知県の大方駅から香川県まで46ヶ寺が納経帳に記帳されている。
 ある年の瀬に一本松町から松尾峠を越えて宿毛市に抜けた。峠を下りると集落には土佐文旦が実り、話し声は土佐訛りであった。1時間前は蜜柑のオレンジだったイメージが文旦の黄色へと変わる。その風土や文化の違いを隔てている、双方の登り口からわずか1.7km標高300mの峠の大きさを感じた。南予と幡多をつないだこの道は、享和元年(1801年)の記録では、旅人や遍路などが毎日200人、多い日には300人が通ったそうである。路の行き止まりが集落の交流を隔てることは山間の地域では多いことではあるが、峠にある貞享4年(1687年)に建てられた「従是伊豫國宇和島藩支配地」と「従是東土佐國」の石碑や深浦登り口にある「松尾坂番所(関所)跡」が持つ大きな意味合いを認識した。しかし、両地とも永年にわたってそれぞれの風土や気候にかなった集団の在り方や規律を模索しながら、機能的で能率的な生活を追求し、独自の産業や伝統、文化を創造し、この地に馴染んだ人にとっては何処よりも居心地の良い場所を作り出しているものと、地域文化について様々な考えが巡った峠越えであった。


 本校の生徒たちは、地域の発展や地域文化の向上を強く意識して勉強と部活動の両立に励んでおり、今年度は例年に増して多くの部が全国大会に出場するなどの活躍をしている。これも努力目標「在に尽くす。」を強く意識しての日々の励みの賜物と思っている。家庭クラブは「先人に学ぶ」という主題を掲げ、「伝統行事を知る」「郷土料理を作る」「昔の生活から学ぶ」などの年間テーマに沿って研究を実践し、文化祭での市内ボランティア団体との連携協力や、老人福祉施設や保育所、幼稚園との交流活動を積極的に行い、年齢や立場の異なった方々との交流を通して、地域の中で共生できる人物の育成を目指している。商業研究部では「AKINDO」というバーチャルカンパニーを設立し、地域の活性化や地域文化の向上を目指している。空き店舗を活用して毎月開店する「商店街AKINDO」、商店街主催「旬彩市」を始めとする各種イベントへの出店、地域情報誌「八幡浜笑人」の共同発行、「八幡浜みかん検定」の実施、「JAみかんボックス」の作製など、長年にわたって幅広い活動を展開しており、今年度は「優良青少年団体知事表彰」などを受賞した。
 また、定時制では、一昨年、昨年と全国定通制生徒生活体験発表大会に2年連続で出場し入賞を果たした。仲間の活躍に刺激を受け、今年度の校内大会は自ら出場を希望する生徒が多く、中身も濃いものになるなど、本校定時制にさらなる特色のひとつが芽吹いていることを喜んでいる。生徒数を上回る来賓にお越しいただくなど、定時制の学校行事には地域の皆様方に多大な御支援と御協力をいただいており、その賜物であろうとありがたく思っている。応援してくださる地域の方々への感謝を忘れず、自らの可能性を信じ、チャレンジしていくその先に、新たな前進があるという思いを強くした。


 「鳥の目、虫の目」の言葉があるが、教育現場には、教育の目標や時の流れを的確に判断する「鳥の目」と、地域に根差した教育活動の在り方を模索する「虫の目」の両方が必要である。教材を地域に求めることで得られる具現性は、生徒の主体性を伸ばし活動を活発にさせる。また、年齢や立場が違う人々との交流や協働は、人間力の向上や地域に根差した特色ある学校作りにつながっていくものと考える。今後とも「現在に全力を尽くし 地域に尽くし 世に翔き 故郷を誇りに思う」人物の育成に励んでいきたいと思っている。