学校紹介
〜「歴史と伝統」を受け継ぎ、
「自律と共生」の精神を培う〜
愛媛県立松山南高等学校 校長 仲田 正夫

はじめに

 本校は「自らを律せよ」を校訓として、自由な校風のもと、勉学と部活動で「高いレベルの文武両道」を目指しており、学習面では質の高い学習指導を通して、ほとんどの生徒が難関大学を含む大学等に進学しています。また、部活動では、登山部、ホッケー部、陸上部がインターハイに出場したり、放送部や弦楽部が全国高等学校文化祭に出場したりするなど、どの部も積極的に活動しています。
 さらに本校は、県下唯一のスーパーサイエンスハイスクール指定校であり、今年度で10年目(三期目)の指定を受け、「生徒と科学を結ぶ絆」の強化策について研究を行うとともに、高校生の科学による社会貢献の在り方等についても研究しており、科学系コンテストで多くの入賞をするなど、すばらしい成果を収めています。

 今年度、本校は創立120周年を迎えるため、よき節目の年となるよう全校あげて創意工夫ある教育活動を計画・実施しており、今回、学校紹介の機会を得たことを利用して、その取組や日頃の教育活動の様子を紹介させていただきます。

1 スーパーサイエンスハイスクール事業(SSH事業)

(1)SSH事業
 SSH事業とは、文部科学省が平成14年度から開始した事業であり、科学技術、理科・数学教育を重点的に行う学校をSSHとして指定し、高等学校及び中高一貫教育校における理科・数学に重点を置いたカリキュラムの開発や、大学や研究機関等との効果的な連携方策についての研究を推進し、将来有為な科学技術系人材の育成に資することを目的とした事業であります。
 本校は、平成14年度に全国で最初に指定されたSSH26校のうちの1校であり、その後平成17年度から5か年の新規SSHに再指定され、さらに平成22年度からの5か年の新規SSHにおいては再々指定を受けています。このように平成14年度から3期連続の指定を受けているのは、本校を含め全国で8校であり、そのうち、公立高校は本校を含め4校だけであります。

SSH生徒研究発表会の様子 国際性育成事業の様子
SSH生徒研究発表会(横浜) 国際性育成事業「中国研修」

(2)本校の取組
 下図が本校におけるSSH事業の概念図です。
サイエンスボンド(絆)プログラムについて

(3)成果
 平成20年、3人の日本人がノーベル物理学賞、さらに1人が化学賞を受賞するという記念すべき年となりましたが、本校SSH一期生が、日本代表として国際科学技術財団から「ストックホルム国際青年科学セミナー」(ノーベル賞授賞式と同時開催)に派遣されるなど、本校のこれまでの地道な取組が実を結ぶ結果となりました。この一期生については、セミナー参加後に来校してもらい、ノーベル賞授賞式の様子や大学での研究発表コンテストで最優秀を受賞した研究内容、将来の自分の夢などについて後輩たちに語る時間を設定し、本校生徒たちは世界を舞台に科学技術の最先端で活躍している先輩の話から、個々のモチベーションを大きく高めることができました。
 さらに、それ以上にすばらしい成果は、このSSHを通して、生徒の学習意欲の向上など科学に対する姿勢の顕著な変容であり、本校の「理科大好き人間の育成」に向けての取組は成果を上げつつあります。

 さらに国際性の育成を目指し実施を開始した中国研修でも、友好の念とともにお互いに高め合う意欲を醸成し、人間的な成長も促しました。まさしく「将来の国際的な科学技術系人材の育成」に向けて成果を挙げつつあると考えます。日本がアジアにおける縁の下の力持ちとして頼りにされる国づくりに真剣に取り組まなければならない現在において、この成果は将来の日本にとって心強いものであると考えます。

2 愛媛県高等学校教育研究会図書部会研究委嘱校

 本校は、平成22・23年度愛媛県高等学校教育研究会図書部会研究委嘱校として、「ライブラリーボンドプログラムの推進〜学校図書館がつなぐ絆の構築〜」の目標を掲げ、
「生徒と質の高い教養の絆」の構築
生徒に質の高い教養を身に付けさせ、確かな学力の定着と向上を図る。
「クラスの絆」「学年を越えての絆」「生徒と教員の絆」の構築
様々な体験活動を通して、豊かな心や情操をはぐくむ。
「生徒と南高の絆」「生徒と郷土の絆」の構築
本校の歴史や郷土の伝統・文化を学ばせ、それらをはぐくんできた本校や郷土を愛する心を醸成する。
「学校と保護者や地域の絆」の構築
学校図書館について保護者や地域住民等の理解を得るとともに、学校、家庭、地域の連携協力により、開かれた学校づくりの推進に努める。
などについて研究を行っています。
 また、職員室や教室のパソコンからも図書館の蔵書を検索できる「校内図書検索システム」を構築するとともに、教職員への使用方法の研修会も実施し、図書館を活用した教育活動の充実を目指しています。

 現在図書館では、読書と言語活動を組み合わせたコミュニケーション型の読書活動を積極的に推進しています。朝日新聞社主催の「オーサービジット」や「どくしょ甲子園」への参加、「ライブラリィ・コンサート」(バイオリンの演奏とブックトーク)、PTAの協力を得ての城戸幹氏(城戸久枝氏の父親)による文化講演会、「ギャラリートーク」(愛媛を舞台に文化発信をしているカメラマンと地方誌の編集者を招いてのトークやコラージュの制作)などの活動は、本や言葉を手がかりにして語り合うことでお互いの考えを理解し絆を深めるとともに、一人では気付かずにいたことに思いを巡らせて、自分の心の世界を広げ、深めていくことを意図しています。

 今回の研究委嘱を端緒として、人と人、人と本が出会い、新時代に求められる「生きる力」を身につける場として、成長し続ける図書館を目指しています。
どくしょ甲子園の様子 ブックトークの様子 ギャラリートークの様子
どくしょ甲子園 バイオリンの演奏と
ブックトーク
ギャラリー・トーク

下図は本校における図書館教育の概念図です。
ライブラリーボンド(絆)プログラムについて

3 創立120周年記念行事
 松山南高校は明治24(1891)年に私立愛媛県高等女学校として開校以来、愛媛県の高校教育の推進の上で大いに貢献してきました。そして、今年、平成23(2011)年に節目となる創立120周年を迎えることになりました。
 この間、明治34(1901)年には愛媛県立松山高等女学校となり、昭和23(1948)年には愛媛県立松山第二高等学校と改称した後、翌年に現在の愛媛県立松山南高等学校となりました。これまで社会に送り出した卒業生は3万4千名にのぼり、全国各地はもとより、世界的な規模において、各界で有為な人材として活躍しています。

記念テーマ
 「120年の軌跡 そして南の新たなる躍動へ」

記念シンボルマーク
120周年記念シンボルマーク
*記念講演会 講師 城戸久枝氏(南高45期) 城戸幹氏(南高定22期)
*記念音楽祭 出演 斉田正子氏(南高28期)

4 120年の軌跡 そして南の新たなる躍動へ
 近年、我が国は知識基盤社会の到来、グローバル化や少子高齢化の進展等を背景に、社会構造が急速に変化しています。そして、このような社会の大きな変化に伴い、学力や体力、道徳性等を確実に育成する質の高い教育が求められています。特に我が国のように資源に恵まれず、少子高齢化の進展が著しい国においては、国際的な競争力を持つために高い資質能力を有する人材の育成が急務であります。
 このような状況と今年度120周年を迎えることから、本校では「本校の『歴史と伝統』を受け継ぎ、『自律と共生』の精神を実践できる人材を育てる〜確かな学力・豊かな心・逞しさの育成〜」を本年度重点努力目標に掲げ取り組むとともに、勉学と部活動での「高いレベルの文武両道」を目指し取り組み、着実な成果を収めています。
 また、本校は、スーパーサイエンスハイスクール事業の伝統校として、その名を全国に轟かせており、この事業への取組の結果、生徒の学習へのモチベーションの向上、プレゼンテーション能力・質疑応答能力の向上、高大連携の充実、科学系コンテストにおける多数の入賞など数多くの成果を上げています。

 今後とも、県下唯一のSSH指定校としてだけでなく、各分野での先進的な取組を行い、その成果を県下の高校に波及させたいと考えています。