私の教育実践


私の教育実践ー高原の職員室ー
久万高原町立久万中学校 校長 新﨑 英司

私の教育実践ー「とびきりの笑顔」に出会いたいー
大洲市立新谷小学校 教諭 谷本 加代子



私の教育実践ー高原の職員室ー
久万高原町立久万中学校 校長 新﨑 英司

 久万中職員室、四国山地の高原にある職員室である。久万高原町の歴史や文化を受け継ぎ、地域の担い手でもある地元の教職員、大学で身につけた最先端の教育理論や教養、未来を目指し生徒と共に成長しようとする情熱の塊の若い先生、色々な地域や学校を経験し、研修を深め力を付けてきたベテラン教職員で構成している。縁があり共に勤める個性豊かな教職員のチームである。今年度は6名の先生を迎えた。新しい風が職員室を爽やかに流れている。

 本校のある久万高原町は、四国山地の山々に囲まれ、豊かな自然環境と多くの歴史文化遺産が残っている町である。町の教育基本方針は、「久万高原町の各地域の歴史と伝統で築かれた地域性を尊重しながら『ひと・里・森がふれあい ともに輝く元気なまち』を築き、活力のある町づくりに努める。学校、家庭、地域社会の教育力の向上と連携を図りながら町民一人ひとりに『生きる力』を構築し、生き生きとした町民の育成を目指す。」である。

 本校では、この方針を受け、久万高原町の次代を担う本校生徒に対し、地域を見つめ、地域の中での自分の役割を自覚し、積極的に地域に関わろうとする心情や態度を育てたいと考え、地域を意識し地域の中で学ぶ教育活動に取り組んでいる。本校の財産として現職員室が受け継ぎ、改善を加えながら実施している取組を少し紹介したい。

 1年生の「集団宿泊研修」。地域の中で学ぶ2泊3日の宿泊研修である。町外で実施していた宿泊研修を見直し、「校区内にある寺の宿坊を使用してはどうか。」というアイディアからスタートした。これを核にして久万高原町を意識し、町内の施設利用や人材活用、自然や歴史・文化等の学習を進めている。今年度は、学びの場を柳谷・美川地区にも広げ、水力発電所や八釜の甌穴群・上黒岩岩陰遺跡の見学も行った。

 2年生の「3出会いウィーク」。連続5日間の勤労体験である。兵庫県南淡町の「トライやるウィーク」視察後に実施検討委員会を立ち上げ、家庭・地域社会・関係機関等の理解を得て平成12年度から実施している。「3出会いウィーク」とは、社会人として生活する中で、①新しい世界との出会い、②他者との出会い、③自分自身との出会い、の3つの出会いを体験する1週間である。活動スタート時の教職員は異動したが、ねらいは確実に受け継がれ、細部に改善を加えながら実施し成果を上げている。今年度は、町内の23事業所に受け入れて頂いた。

 全校生徒の「伝統文化体験講座」。久万高原町や日本の伝統・文化についての体験講座である。体験の内容は家族や地域の方にも大勢見に来て頂き文化祭の中で披露した。昨年度は、地域の伝統・文化や地域の講師を中心に選定し12講座を開設した。一人の教員が1講座を担当し講師の依頼や講座の運営などにあたった。実施後、講師の方から頂いた感想には、「自分自身が身体を使ってやることは、心に残るはず。いずれ誰かが、後継者へ伝える立場になる者が出てきたら最高である。」「大変でしたが、生徒たちの笑顔を見ていると引き受けてよかったと思いました。」など、地域の思い・願いが込められていた。

 年間を通じ、様々な教育活動に取り組んでいるが、その取組の多くは、個人が経験や研修をもとに温めていたアイディアを核として企画がスタート。その後、組織の力で計画を練り上げて実施。さらに財産として次代の職員室に繋いだものである。職員室のメンバーは毎年替わるが、チームとして一人一人の持ち味が発揮され、未来を目指し力を合わせ努力する久万中職員室でありたいと思っている。



私の教育実践ー「とびきりの笑顔」に出会いたいー
大洲市立新谷小学校 教諭 谷本 加代子

 13年前、初めて特別支援学級の担任をすることになった。養護学校の免許は取得していたものの、実際に障害のある子どもたちと接すると、自分の勉強不足を思い知らされる毎日であった。特別支援学級新担任対象の研修会で、「障害特性を理解せずに指導すると、『百害あって一利なし』になる」と聞き、身の引き締まる思いがした。ある研修会で、「何度も同じことを繰り返し言う子は、言わずにはおれない、頭の中で何かおそってくるような感じがあるのだ」と教えてもらい、はっとさせられた。

 自分は、何もわかっていない。中途半端な知識、生半可な気持ちでは指導できない。どうすればよいか。とにかく勉強するしかない。実態を把握するため、その子の入学前の療育機関を訪ね、聞き取りを重ねる。指導してもらえる先生を探し、学校に来ていただき、お話を聞く。本を読む。講演会に参加する。特別支援学校の先生にもたくさん教えていただいた。しかし、新しい知識を得たからといって、次の日からうまく実践できるわけではなかった。毎日、目の前の子どもを見つめ、精一杯向き合うしかない、そう思った。

 子どもの一挙一動を注視する。「行動」には意味があり、訳がある。不安な気持ちを伝えられなかったり、こちらの言葉が理解できなかったりして、結果的に周りを困らせる行動をとることもある。自分の支援の仕方が悪いと気づき、手を変え、品を変えて関わってみる。うまくいくと教室の中の空気が安定し、まるで我が子のように気持ちが伝わってくる。そして、「とびきりの笑顔」に出会えると最高だ。試行錯誤の連続だが、とにかく自分が元気でいること、笑顔でいることが大切だと思う。

 研修会ではよく「Quality of life(生活の質)を上げる」ということが話題になった。障害を克服するだけでなく、その子なりの楽しみ、趣味、余暇の利用なども大切にすることを学んだ。前向きに一日一日を大切に生きている子どもや保護者から、人間の愛しさや命のすばらしさを何度も教えてもらった。小学校を卒業してからも、メールで様子を伝えてもらったり、会って話をしたりすることもある。子どもの成長をともに喜び、喜びを分かち合える、そのような出会いに心から感謝している。

 大洲市では年に3回、特別支援学級の市内交流会を行っている。1学期は中学校と小学校に分かれて制作活動やダンス、2学期はカレー作りと自由遊び、3学期はスポーツ交流を行い、保護者や学校長にも多数参加してもらっている。また、子どもたちの活動中に保護者会を開き、座談会や講演会を行っている。自分の受け持ちの子どもだけでなく、他の子どもたちの成長を認め合える場となっており、ここでも「とびきりの笑顔」に会える。

 学校では、特別支援教育コーディネーターとしての役割も担い、通常の学級の担任から相談を受けることもある。そのたびに勉強不足を思い知らされ、平成18年12月に「特別支援事例研究会」を立ち上げ、講師を招いて勉強会を行っている。講師の熱心なご指導とともに学ぶ仲間に支えられ、回を重ね、この8月下旬に第61回を迎える。

 また私は、現在、市の就学指導委員会や特別支援連携協議会の役員も務めている。他郡市では「発達支援室」等が設置され、特別支援教育の推進体制が整い、うらやましく感じている。学校だけでなく、関係機関との連携を更に深めていかなければならない。今、目の前にいる子どもたちの「笑顔」が生涯続いていってほしい。市内のすべての子どもの自立と社会参加をめざして、推進体制が整っていくように微力ながら力を注いでいきたい。