学校紹介

~ふるさと学習(地域学)に取り組んで~

新居浜市立西中学校 教諭  加藤晋二

1 はじめに

本校は、新居浜市西部に位置し、校区内には「工都新居浜市」を象徴する産業遺産や工場施設、大型商業施設等が点在しています。西中学校区は惣開小・若宮小・金子小で構成されていますが、中学校選択制やその他の理由により、近隣校区からの入学生徒も多く、出身校が10校以上になっています。生徒は生活態度が落ち着いていて、学習や部活動、学校行事に熱心に取り組んでいます。

 本校では、総合的な学習の時間を利用して、毎年1年生がふるさと学習に取り組んでいます。別子銅山の歴史を学習することを通して、郷土新居浜が発展していった様子を知り、郷土を誇りに思い、地域に感謝する気持ちを育てることを目標にしています。その活動の中の幾つかを紹介したいと思います。


2 具体的な活動
(1)遠足
 遠足は、5月に市内にある「山根公園」に行きました。そこには、別子銅山記念館や当時使用されていた機関車、収銅所、山根グランド、製錬所跡の煙突山があります。まず、事前に学年集会をしました。生徒は、現地にある施設や展示物の大まかな説明を受け、何を見てくるか目的意識を持ちました。当日は、午後から3クラスがローテーションを組んで、別子銅山記念館や大山積神社、収銅所を見学しました。機関車の前では、各班ごと記念写真の撮影をしました。日本に機関車が走り始めたころ、既に別子の山奥にこのような機関車が走っていたことが、信じられない気持ちになった生徒もいました。精錬所の名残である煙突山には、時間の都合で有志を募り登りました。別子銅山記念館では、館長さんの丁寧な説明を、生徒は熱心に聞いていました。収銅所では、理科の先生からその仕組みについて説明を受けたクラスもありました。帰校してから、見学して感じたことや学んだこと、疑問点をワークシートにまとめました。山根周辺ドリルも行い、次の学習へのステップにしました。
遠足の様子 遠足の様子 遠足の様子

(2)少年自然の家
 自然の家は、7月に銅山の里自然の家に行きました。まず、旧別子のある登山口から銅山越えを試みました。小足谷地区にある接待館跡や小学校跡、劇場跡、醸造所跡、ダイヤモンド水を巡りました。今年は、その地区に詳しいガイドさんが同行してくれました。それぞれの場所で説明を受け、往年のにぎやかで活気のある様子や、高い生活水準であったことなどが分かりました。現在、杉の木が乱立する寂しい印象とは違うことに、生徒たちは大きな驚きを感じていました。

 ダイヤモンド水は、学年集会で説明を受け、多くの生徒の興味ある場所でした。手を浸して水の温度に感動したり、ダイヤモンド水を飲んで味を確かめる生徒がたくさんいました。なかなか順番が回ってこないので、先生が整理をしなければならない場面もありました。ダイヤモンドが見られるものと勘違いして期待していた生徒もいたようです。シーズンが終わり、もう見えないと思っていた高山植物「あかもの」が咲いていたことには驚きでした。
少年自然の家での様子 少年自然の家での様子 少年自然の家での様子

 残念ながら、悪天候のため、歓喜坑や第三通洞、蘭塔場などを見学することなく下山しなければならないことになってしまいました。しかし、ガイドさんがいなければ何となく通り過ぎてしまい、驚きや感動もない旧別子の見学でしたが、ガイドさんのおかげでいい学習になりました。

 東洋のマチュピチュで有名な東平地区では、インクライン跡(ケーブルカーの一種)や索道基地跡、東平歴史記念資料館等を見学しました。銅鉱石を降ろす重さを利用して生活物資等が上がってくることにすごさを感じるだけでなく、当時の珍しい物資がたくさん運ばれていたことを知りました。新居浜が当時の日本の中で最先端をいく街であったことに驚きを感じる生徒が少なくありませんでした。

 マイントピア別子では、鉱山観光をしました。観光用の鉱山列車に乗り、観光坑道で別子銅山の歴史を学習しながら、銅鉱石発掘の疑似体験をすることができました。実際に見たり体験したりした生徒が少なかったため、意欲的に活動する生徒がたくさんいました。限られている時間が短く感じました。


(3)広瀬歴史記念館・旧広瀬邸訪問
 10月下旬、広瀬歴史記念館・旧広瀬邸訪問を計画していました。台風接近のため大雨警報が発令され、学校が臨時休業日となり、訪問が中止となってしまいました。数日前のグループ別テーマ決定で「広瀬宰平」を選んだグループは残念なことになりました。現在、特別展示会が開かれており、個人的に見学に行くよう生徒に紹介しました。

(4)総合的な学習の時間
 学年集会で共通理解を図ったあと、個人の学習希望テーマを調査しました。その調査を元に、5つの講座を設定しました。全員第1希望で分けることができました。次に、講座別に3名ほどのグループ編成をして、各グループごとのテーマを決定しました。そして、12月中旬の発表会に向けて発表資料を作成する活動をしています。

3 おわりに
 別子銅山については、生徒も教師もある程度知っているつもりでいました。しかし、本格的に学習を進めていくと、新たなる発見やあやふやであった部分が明らかになっていきました。先人たちの努力が実を結び、新居浜市の発展に貢献してきたことに、先人たちの偉大さがよく理解できました。生徒たちは、発表資料を作成しながら更に詳しいことを知り、別子銅山や故郷についての興味を深めています。そのことで、地域を誇りに思い、地域に感謝する気持ちに結び付いてくれればと期待しています。また、本校は「持続発展教育(ESD)支援事業」に応募し、ユネスコスクールに加盟する予定です。このプロジェクトは、学校全体で取り組む事業で、1年生で取り組んだことが、2年生、3年生とつながり発展していきます。そして、その成果を校内発表会だけでなく、ホームページや各種イベントなどで情報発信することを考えています。