学校紹介
「豊かな心をはぐくみ、よく考えて、実践する児童の育成」
ー人権・同和教育の具体的推進ー

今治市立菊間小学校 教諭 松本 拓司


1 はじめに
 本校のある菊間町は、松山、今治両経済圏の中間に位置し、東・西・南の三方は緑豊かな丘陵地、北は斎灘の海を臨んでいます。「みかんと瓦とお供馬」の町と言われ、伝統的な瓦産業と丘陵地を生かした柑橘栽培、養豚業、臨海地の石油関連工場等多様な産業が根付き、歴史ある賀茂神社のお供馬や客神社の弓祈祷など伝統行事が残されています。地域住人の人情は厚く、学校教育を常に温かい目で見まもり支援してくれる環境があります。
 児童は明るく活動的で、素直に物事に取り組んでいます。「豊かな心をはぐくみ、よく考えて、実践する児童の育成」の下、教職員が一丸となり、地域や家庭の教育力を借りながら、一人一人が笑顔になれるよう日々努めています。それらの取り組みの一端を紹介します。
2 本校の教育活動
(1)確かな学力の向上-進路保障の視点-
 さまざまな生活背景を背負って登校してくる児童が、学ぶ目的や必要性を理解し、学ぶ喜びを体感できるよう、具体的な取り組みをしています。その一つが、学び合い学習の推進です。学びは競争ではなく、日常生活に必要な生活力を付けたり伸ばしたりするものです。そのために、日常のコミュニケーションがきちんと取れる言語力を伸ばし、物事を論理的に思考できる基礎的な知識や思考力を育てることが大切です。学び合い学習では、一人一人の考えを基に、他の考えを受け止め比較することで、同意や反対、より高い価値への気づきができます。授業の中、班での意見交換の時間を設定したり、朝の会や帰りの会で意見を表明する場を設けたりすることで、互いを理解しようとする思いからの聴く力や相手に理解してもらおうとする話す力、資料を提示する力などの育成に取り組んでいます。また、基礎的な能力を保証するために、自主学習の時間を設け、一人一人のつまずきを克服する機会にすることで、進んで学ぶ児童が増えています。
 学び合い学習
 
 
 
 
 
 
(2)豊かな心と社会性の育成-人間尊重の人間関係づくり-
 ①命を守る活動:防災・減災教育
  「自分の命は自分で守る」ことを目的に、防災・減災教育に取り組んでいます。菊間町の地形や立地条件から起こりうる災害を想定し、菊間中学校と合同で、ハザードマップを作成したり、保育所と連携して避難訓練をしたりしています。今年度は、予告なしでの避難訓練も行い、とっさの行動訓練に磨きをかける機会になりました。また、交通安全教室や不審者対策安全教室、スマホ・携帯安全教室なども開き、命を守るための学習の機会にしています。  
   避難訓練
②認め合い、戒めあい、支え合う仲間づくり 
 「やさしい心が笑顔をつくる、みんなの愛顔が心をつなぐ」という標語は、いじめ撲滅のために児童が協議し、みんなで選んだものです。互いを大切にし合うために、菊小人権宣言の唱和で一日が始まります。縦割りの異年齢集団「仲よし班」活動では遊びや給食、餅つき集会などを行っています。また、毎月誕生月の児童を対象にお誕生日給食をし、命の不思議や大切さについて考え、互いを大切に思う機会にしています。人権集会では、日常の中の問題を題材にし、解決への道筋を示す人権劇を行ったり、人権標語を発表したりしています。これらは、菊間町の人権フェスティバルでも広く発表しています。
 
仲良し班・餅つき  発表集会
③郷土愛を育てる活動
  6月には、菊間町窯業組合の方々のお世話で、瓦粘土細工コンクールに取り組んでいます。各学年のテーマに基づき瓦粘土を使って作品をつくります。助言はプロの鬼師がしてくれます。瓦造りへの熱い思いに触れることができる活動です。1月の産業文化祭「かわらぬ愛きくま」で、各賞の表彰があります。
 9月には、4年生が亀岡小学校と一緒に「協同学習」を行います。伝統行事「お供馬」を継承するために活動している菊間愛馬会の方々の指導の下、乗馬やえさやりの体験、そして、お供馬に寄せる思いの語りなど、菊間町ならではの体験学習の機会になっています。
 
 瓦粘土細工  協同学習
④環境に学び環境を守る活動

年間を通して、菊間川、長坂川の清らかな流れを守る活動「愛リバーサポーター活動」に取り組んでいます。春には菊間川の河原一面に菜の花が咲き乱れます。また、水面には、年間通してカモが生息し、地域の人たちの心を和ませてくれます。この川を全校児童で清掃し、清い流れを守る活動は、私たちが地域に恩返しをする機会になっています。
 また、菊間町内に渡り蝶「アサギマダラ」が非常にたくさん寄蝶していることがわかりました。そこで、平成25年春、アサギマダラの好むフジバカマを植え付け、菊間小学校に寄蝶してもらえる環境を整備しました。その10月には2頭のアサギマダラが寄蝶しました。そして、平成26年10月、前年に増しての数の寄蝶が観測されました。マーキングも行い、児童の手で放蝶も体験しました。そのうちの一頭は、遠く群馬から30日かけて飛来し、菊間小を経て大洲市柚木で観測されたものでした。大変珍しい観測結果だったそうです。今年度も風が強い中ではありましたが、少し傷つきながらも3頭のアサギマダラが寄蝶してくれました。

   
  愛リバーサポーター活動  アサギマダラ
 
3 まとめ
 自然に恵まれ、長い歴史と豊かな文化、多様な察業の根付く地域の学校として、地域の人々の願いに応え、ここに生まれてよかったと思える、笑顔あふれる児童の育成を今後も継続していきたいと思います。