本園は、平成26年・27年、金銭教育指定校の委嘱を受け、研究主題を「人やものとのかかわりを通して、心豊かな幼児を育てる」とし、研究に取り組んできました。感謝の心をもつ「人とのかかわり」、ものを大切に扱おうとする「ものとのかかわり」、働くことやお金の大切さを実感する「お金とのかかわり」の3つの柱をたて、「気付く・考える・判断し実行する」ことを支援しながら遊びや活動を見直すことにしました。教師の援助として大切にしてきたことは、気付かせるための言葉掛けと、自分たちで考え取り組む時間の確保です。
「人とのかかわり」として、これまでも保育園児や小学生、地域の人たちとの交流を行っていましたが、まずは園内での人とかかわる経験が基礎になると考え、異年齢グループでの活動を計画的に取り入れました。当初は3歳児とうまくかかわれなかった4・5歳児も、目線を合わせて話をしたり一緒に手を繋いで行動したりするようになりました。優しい言葉掛けや行動がたくさん見られるようになり、互いに育ち合う場となっています。5歳児の保護者からは、「3・4歳児のことを褒めることが多くなった。相手を褒める心が養われていると思うと嬉しかった。」という感想をいただきました。
「ものとのかかわり」として、片付けの時には、「これはまだ使えるよ。」と、材料を分類する姿が日常的になっています。また、教師が何かをしていると、「手伝ってあげる。」と、数人が手伝い始めます。「やってみたい。」「みんなですると楽しいね。」このような気持ちや人の役にたつ喜びが、手伝いの大好きな幼児を育てています。様々な活動には準備や片付けが必要ですが、その部分を幼児と一緒に行うことは、活動への意欲を高めるとともに、働くことの大変さやみんなで協力する楽しさを味わう機会になっています。
「人・もの・お金とのかかわり」としての買い物体験では、回を重ねるたびに、公共の場でのマナーを守り、相談して決める姿が見られるようになりました。必要なものは何か、決まった金額の範囲内で買い物をする、ということを知らず知らずのうちに学ぶことができました。また、野菜の栽培や道の駅見学が、お店屋さんごっこに繋がった活動では、5歳児がお店屋さんになり、3・4歳児が手作りのお金を使って買い物をしました。5歳児は道の駅で見たり感じたりしたことを、自分たちもやってみたいと思い、開店までの話し合いや準備を進めました。協力して仕事をする楽しさや大変さ、新たな気付きは、さらに次の活動へと繫がり、働いて得たお金は、次のお店屋さんごっこや郵便ごっこで使うお金になりました。共通の目的をもち活動に取り組むことにより、集団の中で一人一人が自信をもって行動することができ、人とかかわる力の育ちも見られました。さらに、保護者との連携においては、金銭教育に関する講演会を行ったり、幼児の学びの姿を伝え共に成長を喜び合ったりしたことが、金銭教育への理解や意識の変化にも繋がりました。
このような2年間の研究を通して、様々な場面で幼児の心の育ちを見ることができ、幼児期にこそ金銭教育は大切である、ということを実感することができました。幼児のふとした行動や優しい言葉に触れたときには、心が温かくなります。人とのかかわりについてはまだまだ個人差はありますが、今後も家庭と協力し地域のよさを生かしながら、幼児の活動をさらに充実したものにしていきたと思います。
|