特集
県美術館におけるこの一年間の所蔵品展
文化財保護課

文部科学省人権教育指定校事業報告
人権教育課

愛媛県キャリア教育・就労支援充実事業
特別支援教育課


県美術館におけるこの一年間の所蔵品展

 本年度開催したテーマの一覧は次のとおりです。
 展覧会名 会期  展示テーマ 
所蔵品展Ⅰ      平成27年4月1日
~平成27年5月24日
(47日間)      
楼閣と山水/都市と自然 
ブックデザインの森へ 美しき装幀本の世界
自然の中に宿るもの
終らない物語 イメージに遊ぶ
武智光春コレクション 福田平八郎 ―春の風物
西洋の美術:水辺の風景
所蔵品展Ⅱ   平成27年5月26日
~平成27年6月28日
(30日間)   
平成26年度新収蔵品展 
武智光春コレクション 福田平八郎 ―初夏の風物
海外の美術:物語を表現する
所蔵品展Ⅲ     平成27年7月3日
~平成27年9月27日
(75日間)     
近世伊予の書画
風景―実景・絶景・心象風景
武智光春コレクション 福田平八郎―夏の風物
海外の美術:描かれた植物
どこからそう思う?―小学生のための美術鑑賞―
所蔵品展Ⅳ     平成27年10月2日
~平成27年12月27日
(75日間)     
石鎚国定公園指定60周年記念 石鎚と美術 ―霊峰への眼差し
黄昏から夜へ ―暮れゆく時を描く
武智光春コレクション 福田平八郎 ―秋の風物
海外の美術:考える人たち
どこからそう思う?―小学生のための美術鑑賞―
(~平成27年11月13日)
所蔵品展Ⅴ  平成27年11月22日
~平成28年1月11日 
(38日間) 
人 ―そのイメージと表現 
新寄託記念 福井江太郎の駝鳥と菖蒲
 このように、本年度の当館の所蔵品展では、企画展との関連性も考慮しながら、学芸員の調査研究に基づいて、地域の文化芸術の発掘、顕彰、振興に資するような展示に努めてきました。今後も研究を進め、さらに充実した展示作業を推進してまいりたいと考えています。
 
   
 柳瀬正夢〈〈若葉〉〉  下村為山〈〈子規庵句会写生図〉〉 
個人蔵(当館寄託)
※所蔵品展Ⅱ「平成26年度新収蔵品展」で紹介。 ※所蔵品展Ⅴ「人―そのイメージと表現」で紹介。 
文部科学省人権教育指定校事業報告
 
  
互いの人権を尊重し、共に学び合い、高め合う児童の育成
―自他を大切にし、豊かに関わり合う場づくりを通して―

松山市立たちばな小学校
 
 1 はじめに 
  本校は、土曜日に実施している地域の方との体験活動「やるっ子!くらぶ」や高齢者クラブとの交流等、様々な活動に協力を惜しまない温かい地域にある開校42周年を迎える中規模校です。
「豊かな心をもち、よりよく共に伸びる児童の育成」という教育目標の下、『くさんの えを出し合う (場)をつくり かまとともに伸びていく』を合言葉に、人権が尊重される仲間づくり、授業づくり、環境づくりが一体となった取組を進めてきました。
 
 2 支え合い認め合う仲間づくり
 (1)児童の心に寄り添い、個・集団の良さを伸長する生徒指導の推進
 毎月の「学校生活調査」、校内4か所に設置したいつでも相談できる相談箱「はあとぽすと」を基に、児童の教育相談を速やかに実施し、悩みや不安を早く解決できるように努めています。「学校生活調査」については、学校や自分たちの良さにも目が向けられるようにしました。帰りの会でも、児童が友達の良いところに目を向けるようなコーナーを設け、一人一人の良さを学級で積極的に見つけ認め合っています。  
   <はあとぽすと>
 (2)豊かな関わり合いが生まれる特別活動の充実
 ア 構成的グループ・エンカウンター
 学年ごとに作成した年間計画を基に、各学年の実態に合わせて実施しています。自分や他者の良さ・個性への気付きと自己肯定感が生まれ、自分や他者を尊重する態度や温かな人間関係を育み、人権教育の基礎づくりにつながりました。
 イ えがおカード
 してもらってうれしかったこと、見ていて良い気持ちになったことなどを、毎日、昼の校内放送で紹介し、「きらきらスマイル通り」に掲示をしました。「えがおカード」により児童も教師も今まで以上に温かい気持ちになり笑顔が増えました。
 ウ きらスマ班活動
 豊かな人間関係づくりを目指し、温かな出会いの結成式をしたり、運動会で応援合戦を行ったりして異年齢集団で活動する楽しさを味わっています。毎週水曜日を「きらスマの日」とし、第1週「きらスマ会議」(きらスマ遊びを班のみんなで決める話合い)、第2週「きらスマ遊び」、第3週「きらスマボランティア」、第4週「きらスマエンカウンター」というサイクルで実施し、きらスマファイルに交流の足跡を残しました。継続して活動を行うことで、豊かな関わり合いが生まれ、互いを思いやる温かい人間関係が育ってきました。
 エ 委員会活動の充実
 環境委員会とJRC委員会による「エコリンピック」、体育委員会による「きらスマ玉入れ大会」「きらスマ長なわ大会」、運営委員会とJRC委員会による朝の挨拶運動など、関わりの場を充実させました。運営委員会による、全校の児童が一緒に活動する楽しさを味わうことができるような集会活動も行っています。温かい交流の様子が見られました。
   
 <構成的グループ・エンカウンター> <きらスマ班活動> 
 
 <きらスマ長なわ大会>
 
 3 共に学び合う授業づくり
 (1) 実践意欲を高める授業実践
 人権・同和教育年間指導計画に基づき、人権・同和教育のねらいを明確にした授業を積み重ねました。さらに、道徳の授業で学んだことを意識させ行動に結び付いていくようにするために、道徳で学習した内容を学年ごとに廊下に掲示しました。挿絵や友達の感想等に見入る児童の姿が見られ、日々の生活の中で意識化させることにつながりました。
 (2)思いや考えを互いに深め合う場の設定
 自分の思いや考えを自分の言葉で伝えることができるようにするために、「話合いの進め方」や「話合いカード」、「伝え合い振り返りカード」を取り入れました。関わり合いの3観点を意識しながら、自分の伝えたいことをはっきりと話そうとする姿、温かく相手の話を受け止める姿、自分の思いや考えを返して深め合おうとする姿が見られました。友達と共に問題解決をする楽しさを実感し、学ぶ喜びも高まってきました。
   
 <道徳授業後 廊下掲示> <伝え合い振り返りカード 一部抜粋> 
 
 4 心を育てる環境づくり
(1) 人権が尊重される環境の整備
 人権尊重の雰囲気を積極的に醸成するために、「きらきらスマイルコーナー」を設置し、環境整備の工夫に努めました。掲示物作成に当たっては、みんなで笑顔一杯の温かい学級・学校をつくっていこうと呼び掛け、友達の良いところや温かい気持ちになった出来事をカードに書いたものや、みんなが楽しく関わり合う様子を掲示しました。掲示物が展示されるたびに足を止めて見たり、進んでカードを書いて掲示作りに参加したりする様子が見られるなど温かい人間関係づくりへの意識を高める一助となりました。
 
 
 <きらきらスマイル通り掲示>
 (2)言語活動の充実
 豊かな心を育み、より良い人間関係を築いていくために言語活動の充実を図りました。俳句づくり、俳句放送、俳句の感想交流等を継続してきたことにより、生活の中にある様々な言葉を見つめ直し、一つ一つの言葉を大切にすることができました。さらに、朝読書、保護者ボランティア・図書委員による読み聞かせなど、読書活動の充実が、児童の言語環境、心の豊かさにつながっていきました。
 (3)家庭・地域との連携
 人権意識の高揚を図るための授業公開や保護者アンケートの結果の説明も行う学級懇談などを取り入れた人権・同和教育参観日を実施しました。「きらきらスマイル集会」も実施し、各学年の発表、全校合唱、人権標語の発表など、人権尊重に関する思いを積極的に表現することができました。集会後の感想からも、互いの思いをしっかりと受け止め、考えている様子がうかがえました。参観日の後の保護者感想もたくさん寄せられました。また、人権・同和教育講演会では一人の人間としてどう生きていくか、言葉の力の大きさについて、児童・保護者・教職員で考えながら話を聞くことができました。「きらきらスマイル便り」、ホームページ、公民館文化祭の掲示物などで児童の活動の様子を紹介することにより、人権・同和教育の取組に対する理解を促進しました。
 
 5 おわりに
 豊かに関わり合う場づくりに努めてきたことにより、自他の良さや成長に気付き、互いに認め合い高め合う児童が育ってきています。今後も、「たちばな」の温かい風土の下、保護者・地域、関係諸機関と更なる連携を図りながら人権意識の高揚に努め、全ての児童が喜びや楽しみを実感しながら学校生活を送ることができるよう、教育活動を推進していきたいと思います。
 
 
 
人間の多様性を尊重し、
同和問題をはじめとする様々な人権問題の解決に向けて、
ともに学びあい行動する生徒の育成

西条市立丹原東中学校
 
 1 はじめに
 本校では、[第三次とりまとめ]の趣旨を踏まえ、人権に対する知的理解を深めるとともに、様々な交流体験を意図的に取り入れながら、教育目標「心豊かにたくましく生きる生徒の育成」(平成26・27年度)を具現化するために、人間の尊厳の尊重、自他の人権の尊重を図る取組を行ってきました。
 その中でも特に、人間の多様性に目を向け、「性的マイノリティ」の人権を取り上げ、それに対する肯定的評価と差別解消に向けて意欲的に取り組むことに焦点を当てて研究実践をしてきました。
 
2 学びあい、教えあう学習活動の在り方の研究(授業改善部会)
(1) 人権が尊重される「学び合い学習」の展開
 どの生徒も一人にしない授業づくりを目指して、全教科において学習形態(ペア学習、グループ学習)を工夫した場面を必ず1時間に1回は取り入れた授業展開を行い、「学びあい学習」の在り方について研究・実践を進めてきました。
   
 〈「学び合い学習」の展開〉 〈差別を許さない心情を高める授業〉 
 (2) 「性的マイノリティ」の人権問題について考える授業実践
 性的少数者などのマイノリティの人権についての学習を通して、人間の多様性を学び、自己存在感・自己肯定感を育て、生徒同士のよりよいつながりをつくっていくことを目指してきました。その上で、差別を許さないという意思の強さと、そのために自分はどうするべきかという行動化に向けた積極性を養い、様々な人権問題を自分たちの手で解決していこうとする生徒の育成を図る授業実践を重ねてきました。
 
3 支えあい、つながりあう仲間づくりの在り方の研究(集団づくり部会)
(1) 教師・生徒を対象にした現地研修や交流学習会の推進
ア 教師集団がまず体験しそれを生徒につなげる現地研修 
 当事者から真実を学ぶこと、つまり差別の現実に学ぶことが大切だと考え、教師による現地研修から始めました。
イ 交流学習会報告会(全校集会)
 交流学習会において生徒と教師が当事者から差別の実際について学び、性を考える三つの視点や「性的マイノリティ」の当事者の苦しみについて、そして全校生徒の皆さんに気付いてほしいことなどを発表しました。最後に、次回の現地研修への参加の呼びかけを行いました。
ウ 生徒集会での現地研修報告会 
 呼びかけに応じて現地研修に参加した生徒たちは、当事者たちの心に響いた言葉の一つ一つを熱心に聞き、その記録に基づいた事実と率直な感想を一人一人が全校生徒に伝えました。
エ 講演会「人権問題としての性的マイノリティ」 
 人権・同和教育参観日に、参観授業のあと講演会を行いました。全校生徒と保護者、地域の住民が講演を聞き、講演会後、教師と講師で意見の交換をしました。
   
 〈交流学習会〉 〈学習報告会〉 
   
 〈人権啓発劇〉 〈劇後の全校合唱〉 
(2)人権尊重の精神に立ち、行動する生徒を育てる人権劇、生徒集会づくり
ア 平成26・27年度 文化祭 人権啓発劇の上演
 性別違和で悩む主人公とその家族の戸惑いや理解を描いた自作シナリオにもとづいて上演しました。観劇後、全校生徒がステージ周辺に集まり、劇から受けた感動を込めて、主題にあった合唱曲を歌って締めくくっています。
イ 学級・人権委員会による生徒集会の開催
 自分たちが学習してきたことを新入生に正しく伝える集会を開き、知識や思いを受け継ぐ活動をしています。
 
4 家庭・地域との連携と啓発活動の在り方の研究(地域連携部会)
(1)地域連携だより「つながり」の発行による啓発活動
 生徒・保護者を対象としたアンケート調査の結果や考察、生徒・保護者の人権学習の感想、そのほか学校生活の様子、人権に関する内容などを「つながり」に掲載し、全家庭に配布し、啓発活動の要としてきました。
(2)人権・同和教育講演会の運営と実施
 講演内容を「マイノリティの人権」に焦点化し、学校と家庭が連携して学習を深められるように計画、運営しました。
(3)公民館主催の地区別人権・同和教育懇談会への生徒の参加
 ア 平成26年度〈平成26年10月17日~11月25日〉
 地区別人権・同和教育懇談会に生徒29名が参加しました。
 イ 平成27年度〈平成27年10月20日~12月7日〉
 19会場の懇談会に参加を希望する生徒は83名を数え、所属する地区ごとに分かれ、「性的マイノリティ」についてのこれまでの学びと自分の考えについて自信をもって発表し、意見交換にも参加しました。
 
 〈地区別人権・同和教育懇談会〉
(4) 生徒・保護者対象「人権に関する意識調査」から
○ 「これまでの同和問題についての学習から、あなたができることはどのようなことですか」という問いに対して、回数を重ねるに従って、差別をなくすために、みんなで考え、正しい知識を身に付けることの大切さを感じ取っている生徒が増えてきています。性的マイノリティの人権課題を主として研究実践に取り組むことで、同和問題に対しても差別解消への意欲が高まるなど、様々な人権問題の解決に向けた意欲や実践力へと広がっています。

○ 性的マイノリティの人権課題について、当初から「ありのままでよいと思う」と答えている生徒が多くいましたが、「変な感じがする」と答えている生徒がほとんどなくなりました。このことは、学習の成果がうかがえる結果だと捉えており、他者をありのままで受け入れる態度が育ってきています。人権問題の解決には、単に優しさや思いやりの心を身に付けるだけではなく、人権に関する正しい知識・理解が必要であることを改めて実感しました。
 
5 おわりに
 私たちは、人間の多様性に対する理解と性的マイノリティの人権問題を中心に置き研究を進めてきました。その成果として、人間の多様性を個性として認め、現存する様々な差別の解消に向けて行動を起こそうとする生徒が増えてきました。その姿を見た保護者や地域の人の意識も変容しつつあります。しかし、性的マイノリティに関する系統的な学習の在り方については、まだまだ課題も残されています。今回の研究の成果と課題を踏まえて、今後もより一層、人権教育の推進に取り組んでいきたいと思います。
 
 
生徒の感性を豊かにし、実践力を高める人権教育の推進

愛媛県立伊予高等学校
 
 1 はじめに
 本校では、「社会貢献できる人材の育成-志を高くし、切替と継続を駆使した自らの鍛えを通して-」という重点努力目標を掲げています。
 そのような人材の育成のために、自分とともに他者の人権を尊重しようとする態度を養い、生徒自らが考え行動できる実践力を育てていきたいと考え、研究実践を進めてきました。
 
2 ピア・サポート活動
(1)ピア・サポートとは?
 「ピア・サポート」のピアとは、同世代の仲間を指す言葉で、サポート(Support)は支援することを意味します。不安や悩みを抱える人を専門家でない仲間が助ける「仲間支援の力」を生徒の中に育て、活用していこうとする取組のことです。
(2)ピア・サポート活動の取組
 ピア・サポート活動を進めるにあたって、平成26年度の教職員研修では、ピア・サポートの概要理解と実践方法について学び、教職員の資質・能力の向上に努めました。平成26年度は1・2年生全員から希望者を募り、「IYOピア・サポート養成講座」を実施しました。ハートの絵が描いてあるシートに好きな色を塗って「最近の私の気持ち」として振り返ったり、エコグラムという心理検査を行い自分の性格の特徴をつかんだりすることで、生徒は、コミュニケーションスキルや自己理解・自己表現方法を学ぶことができました。
 平成27年度は、養成講座を受講した生徒が月1回集まり、普段の学校生活における月目標を定めて振り返りをするとともに、3つのグループに分かれて、『ぴあっこタイムズ』と名付けた通信の発行、啓発ポスターの作成、アンケートなどを実施しました。
 
 〈ピア・サポーター養成講座の風景〉 
 
 【ピア・サポーターとして活動した生徒の感想】
 ・今回学んだことを生かし、悩んで困っている友達の相談を聞く時に、相手のことを考えながら聞いていきたいと思いました。
 
3 人権委員会の活動
(1) 人権デー
 毎月1回朝のショートホームルームの時間に人権デーを設けています。教員と人権委員の生徒が相談してテーマを決め、作成した資料を配付するとともに全校放送を行い、感想を書いてもらっています。後日、人権委員がクラスの感想のなかから紹介したい感想を選び、まとめたものを全校生徒に配布しています。
(2) 文化祭
 「家族から子へのメッセージ」として保護者から寄稿してもらった文章と「あなたから大切な人へのメッセージ」として生徒が書いた文章を、人権委員が色画用紙に書き写し、教室の壁に掲示しました。
(3) 東日本大震災被災者等の支援
 人権・同和教育講演会がきっかけとなり、東日本大震災被災者等への支援品提供を、人権委員会から全校生徒と保護者に呼びかけることになりました。集まった支援品は人権委員が整理し、被災者を支援している団体に手渡しました。この取組を通して、被災によって困難に直面している方々がどのようなものを必要とされているのか、想像力を働かせることで、人権意識を高めることができました。
 
【人権委員の感想】
・伊予高には助け合いの精神を強く持った人が多いなと思いました。そうでなければあんなにたくさんの物は集まらないし、全部がまだまだ使える物だったので、すごいことだと思いました。
   
 〈文化祭の掲示〉 〈東日本大震災被災者等の支援〉 
 
4 地域教材の開発
 2年生のホームルーム活動では、「人権の歴史」を主題にしています。現在の東温市に生まれ、愛媛県水平社の設立に尽力した松浪彦四郎のことを取り上げました。差別撤廃のために闘った松浪についての教材化を推進することで生徒が同和問題をより身近に感じることができました。
 
【生徒の感想】
・私は、この授業で初めて松浪彦四郎さんを知りました。同じ東温市出身の方が、水平社運動というすばらしい活動をされていたのに感動しました。今まで、部落差別を他人事のように考えてしまったところがありましたが、松浪さんについて学んで、身近な問題だと思いました。私は、差別で苦しむ人のいない世界にしていきたいです。
 
5 人権が尊重される教育環境づくり
 ピア・サポーター養成講座を受講した生徒が活動の一環として、全校集会で、「さわやかな自己表現~三つの言い方~」のテーマでロールプレイをして、ストレスをコントロールしやすい対応の仕方について、全校生徒に伝えました。また、学校近辺の水路の清掃、人権関係図書を紹介するブックトーク、情報モラル教育など、人権に配慮した学習環境づくりに取り組んできました。  
   〈全校集会でのロールプレイ〉
 
6 保護者・地域社会への働き掛け
 文化祭で、PTA人権・同和教育委員の方々と生徒人権委員が一緒に人権委員会の発表の準備に取り組みました。この他にも、人権・同和教育の講演会や公開授業においてPTAや地域の方々に参加いただいています。また、松前町の人権擁護委員の学校訪問では、人権・同和教育の推進について懇談しています。
 
7 おわりに
 2年間の研究に取り組んだ結果、人権が尊重される学校づくりや人権を身近な問題として捉えようとする意識が徐々に高まっています。また、ピア・サポートの取組を通じて、思いやりと支え合いの学校風土がつくられてきています。ピア・サポート活動は生徒の自主性を尊重するものです。今後、教員の適切な助言や指導を加えながら、さらに充実したものにしていきたいと考えております。
  
愛媛県キャリア教育・就労支援充実事業
 
 愛媛県教育委員会では、障害のある幼児児童生徒の自立と社会参加を促進するため、学校と家庭、地域及び労働・福祉等の関係機関とが連携し、障害の状態や発達の段階等に応じた早期からのキャリア教育の充実を図るとともに、産業界と連携した職業に関する指導の充実、職場開拓・職場定着支援等に積極的に取り組み、就労支援の強化を図っています。
 
 平成27年度の主な取組を紹介します。
1 早期からのキャリア教育充実事業
 企業関係者や地域の商店、農業関係者等をキャリアガイドとして、体験活動における指導や進路相談等を行う「キャリアガイド教室」を実施しました。
 社会で働いている人とのかかわりを通じて、社会の仕組みや働くことの意義を理解し、社会の一員として自分の役割を果たし貢献していこうという意欲や態度を育むことを目的としています。
〈〈小学部における取組事例〉〉
◆松山盲学校「うどんを作ろう」
◆キャリアガイド:㈱トリドール(丸亀製麺)エリアマネージャー・トレーナー

 うどん職人に教わりながら、小麦粉に塩水を混ぜて生地に変化していく過程を手の感触で感じたり、大きな包丁で生地を切って麺にしたりする体験をした後、自分たちが作ったうどんを味わうことで、活動することの楽しさや喜びを感じることができました。
 
◆しげのぶ特別支援学校「すし職人の仕事を調べよう」
◆キャリアガイド:寿司弘 店長
 
 寿司職人から仕事についての話を聞いたり、寿司作りの実演を見たり体験したりすることを通して、元気のよい挨拶や早寝早起き、体力作りなど、現在の生活の中で将来のために身に付けておくべきことを学びました。真剣な眼差しで見たり聞いたりしていました。
 
◆新居浜特別支援学校「ケーキ屋さんに聞いてみよう」
◆キャリアガイド:モリタ菓舗 店主 

 初めて見る菓子職人によるケーキ作りの実演に感動したりケーキ作りを体験したりすることを通して、自分たちが普段買って食べているケーキが、働く人の努力や工夫によって作られていることを知りました。
 〈〈中学部における取組事例〉〉
◆宇和特別支援学校(聴覚障害部門)「働く上での心構え」
◆キャリアガイド:宇和国産材加工協働組合 代表取締役

 職場体験先の木材加工の現場を事前に見学し、仕事内容や働く上で必要な心構えについて説明を受ける中で、安全に作業することや職場でのコミュニケーションの大切さを学び、実習に向けての意欲を高めました。

 
◆新居浜特別支援学校川西分校「タブレットって便利だな」
◆キャリアガイド:株式会社ニューウェイブ 執行役

 基礎編、応用編と2回にわたりタブレット端末の基本的な操作方法や機能、様々なアプリの検索方法や入手方法について学びました。端末を使えば気軽に行きたい場所まで出かけたような体験ができると気付いた生徒やニュースの見方が勉強になったという生徒など、端末を活用し、生活を広げていこうとする気持ちにつながりました。

 
◆今治特別支援学校「仕事を体験してみよう」
◆キャリアガイド:日本食研スマイルパートナーズ㈱ 統括部長

 工場見学では、社員の皆さんが黙々と働く様子に見入っていました。会社で働いている卒業生の仕事ぶりを見たり、卒業生の話を聞いたりする中で、働くことの楽しさに加え、厳しさや責任について意識するような感想も出ていました。

 
◆宇和特別支援学校「正しくきれいに清掃しよう」
◆キャリアガイド:㈱トータルビルサービス 代表取締役

 1年生から3年生まで段階にあった内容で指導を受けました。1年生は、ほうきの使い方を中心に正しい清掃の仕方を学びました。専門家から指導を受けることで、清掃に関心が高まり、進んでほうきを正しく持って清掃しようとする姿が見られました。また、清掃の時間以外にも散らかっている場所を片付けたり、落ちているごみに気付いて拾ったりするようになりました。

〈〈高等部における取組事例〉〉

◆松山聾学校「社会に出るまでに身に付けておくべき力」(中高合同)
◆キャリアガイド:㈱旭化成アビリティ水島営業所社員(卒業生)  

 在学時の様々な思い出や困ったことをどうやって乗り越えてきたかなどを、エピソードを交えながら話してくれました。社会に出る前に最低身に付けてほしい事柄について、「挨拶がきちんとできること」「分からないことは積極的に聞くこと」「国語力を高めておくこと」の3つを挙げ、学生のうちにたくさんの失敗を経験しながら成長してほしいという助言をもらいました。今の自分を見つめ直し、将来のことを考える機会となりました。

 
◆みなら特別支援学校松山城北分校「後期実習を振り返って」
◆キャリアガイド:一般社団法人いきる 代表理事

 現場実習の体験発表について、一人一人具体的にアドバイスをもらうことで、自分の課題と向き合い、これからの目標を考えるきっかけとなりました。
 また、卒業後50年は働くという意識をもち、じっくりと自分の人生について考えることや、卒業後すぐの生活ではなく、5年後、10年後のなりたい自分を想像しながら、そのための努力を続けていくことの大切さを知り、卒業後のライフプランについても考える機会となりました。

 
◆みなら特別支援学校「『働く人』講座 職場対人技能トレーニング(JST)」
◆キャリアガイド:㈱アスクリエイト 施設長

 ホテルの清掃業務場面を想定し、ロールプレイを通じて、職場での適切な対応について話し合いました。道具の準備等は、邪魔にならないように廊下の端の方で作業することや場に応じた挨拶を考えて行うこと(ホテル内では会釈や小さな声で)など、お客さんを第一に考えた行動を取ることや上司への報告、自分の判断で行動しないことの大切さなどについて学びました。

 
2 愛顔(えがお)のえひめ特別支援学校技能検定
 特別支援学校の生徒の力や意欲を高めるとともに、働く力を社会にアピールすることを目的に、平成26年度から年2回実施しています。
〈〈技能検定種目〉〉 
 
 部  門 種  目 
 清掃サービス 基本清掃 机拭き 
自在ぼうき
ダスタークロス
水拭きモップ
掃除機
事務所清掃 
 接客サービス 喫茶サービス  
 販売実務サービス 商品化  
 
 第1回は延べ73名、第2回は延べ98名、第3回は延べ136名と、回を重ねるごとに挑戦者が増え、平成27年12月22日に開催した第4回は、162名の生徒が受検しました。当日は、多くの参観者がいる中、緊張しながらも、今まで一生懸命努力してきた自分を信じ、自分の目標を達成するために真剣な眼差しで挑んでいました。
   
 清掃サービス部門(水拭きモップ)  清掃サービス部門(掃除機)
   
 接客サービス部門(喫茶サービス) 販売実務サービス(商品化) 
 
 審査は、各種目2名ずつの実務家によって行われます。プロの視点での非常に厳しい審査をクリアし、第4回は延べ58名の受検者が1級に認定されました。
 1級認定者は、第1回の12名、第2回の13名、第3回の27名、第4回の58名と増えており、審査員からは、毎回、受検者のレベルが上がってきているとの評価をいただいています。また、清掃、接客、販売実務サービスの全ての部門で1級に認定された受検者も出ています。
 当日参観した企業関係者からは、「生徒の一生懸命取り組む姿に感動した」「想像していた以上にレベルが高かった」等の感想が聞かれ、生徒の力をアピールする機会となっています。 1級に認定された受検者には、後日、県庁にて教育長より一人一人認定証が授与されました。
 
 平成28年度から情報サービス部門を新設するとともに、販売実務サービス部門に「運搬・陳列」の種目を導入する予定です。今後も、目標をもって日々学習に励み、そこで培った力を発揮して挑戦し、努力することのすばらしさや達成した時の喜びを味わってほしい、そして、自信と誇りをもって希望する仕事に就き、生き生きと輝いてほしいと願いつつ、技能検定の充実・発展を図っていきます。
 
 受験した生徒の感想です。
 
○ 自分の力を知るよい機会となりました。他の受検者の接客を見て、自分に何が足りないのかが分かりました。
○ 販売実務では、手洗いや挨拶、商品を丁寧に扱うことがとても大切なので、もっと学んで社会に生かそうと思いました。
○ 来年に向け、今回できなかったところを直して、1級をとれるよう練習をしっかりして本番に臨みたい。
○ 検定で身に付けたことが、家庭でも役に立っていて、自分のためになっていると思う。
○ 検定だけ頑張るのではなく、普段の生活の中で、技能検定やキャリアの授業で学んだことを生かしていくことが大切だと思います。
 
 保護者の感想です。
 
○ 何においても自信がなかった子が1級を取得したことで、物事に積極的に取り組めるようになりました。次は別の部門に挑戦したいと言っています。将来の就職に役立てたいと意欲的な発言も見られるようになりました。
○ 家事の手伝いの際に、乾きやすいように洗濯物を干したり、ある程度周りの物を片付けてから掃き掃除をしたりするなど、流れを考えながらするようになりました。
○ スーパーに買い物に行った際、自分の興味のある物に目が行くのではなく、「これはこうするんよ」と、商品の並び方に目がいくようになりました。仕事に対して興味を持つようになりました。
 
★日頃の学習や技能検定で培った力や自信を生かして、地域でも活躍しています。 
   
 みなら特別支援学校では、「喫茶サービス」を学習している生徒が東温市役所の1階フロアで市役所を利用される方にお茶のサービスを、「清掃サービス」を学習している生徒は、公用車の洗車や駐車場のゴミ拾い、除草を行っています。生徒たちは、学んだ技術を活用し、社会の中で貢献することにより、思いやりや奉仕の精神を培い、豊かな心を育んでいます。