松山市から国道33号線を高知方面へ車を走らせること約40km、緑溢れる山あいに久万高原町立美川中学校は位置する。 緑豊かな大自然に囲まれ、面河川や久万川といった美しい川が校区内を縦走する。
面河地区、柳谷地区との統合を経て、西条市や西予市、高知県とも隣接するほど校区は膨大に広がったものの、全校生徒数43名の小規模校である。
この本校の生徒を象徴するこんな場面がある。 朝の登校時、交通量の多い国道を押しボタン式の信号を渡って登校してくる生徒たち。 その際、横断歩道を渡りきった後に反転し、止まっていただいた左右のドライバーの方々にそれぞれ深々とお辞儀をする。 その後、学校までの約500mの坂道を登るのだが、地域の方の車が通るたびにその歩みを止め、道路の端に横一列に並び、深々とお辞儀をする。 一人も漏れることなく、全員がこのように登校してくるのである。教職員に聞いても誰も指導はしていないとのこと。 地域の方に伺っても美川中の生徒は以前からこの状態であるとのこと。生徒たちに聞いてみると、中学入学時に先輩から教わるそうである。 この光景に出会うたびに、今日も一日子どもたちのために頑張らねばと背筋が伸びる思いに駆られるのである。
本校では、〈学び合う・響き合う・挑戦する〉を目指す生徒像として掲げ、日々の教育活動を実践している。
〈学び合う〉
日々の授業における少人数ならではの学び合いは勿論のこと、特筆すべきは地域との学び合いである。 特産品である美川茶の茶摘み体験、地域施設に宿泊しての農業・林業体験、地域の伝統を学ぶ「まなび交流会」等、講師は全て地域人材であり、地域を知り、地域の先人から学ぶ。 まさに地域との学び合いである。
〈響き合う〉
互いに響き合う活動として、週に一度「聴こう!話そう!ハートタイム」を実施している。 決して堅苦しくなく、フレンドリーな雰囲気の中で、互いの意見や主張を学級単位で発表し合い、楽しみながらコミュニケーション能力育成の一助としている。
また、本校では伝統的に全校合唱に取り組んでいる。全校生徒が運動部との二足のわらじで各種合唱コンクールへの出場を目指し、日々校内に歌声を響かせている。
〈挑戦する〉
何事も最後までやり遂げることを目的とし、全校生徒で校内弁論大会に挑戦している。 生徒たちは数か月前から自分の主張を原稿にし、全員が暗記して本番に臨む。
緊張しながらも、身振り、手振りを交えて自らの主張をする姿は圧巻であり、発表後の生徒たちは得も言われぬ安堵の表情を浮かべる。 この緊張と弛緩は、生徒たちを一回り大きく成長させる。
また、地域にそびえる石鎚山系を利用し、非日常的な達成感を目指して全校登山にも挑戦する。 互いに励まし合い、歯を食いしばりながら挑戦した後に待ち受ける雄大な大自然の絶景は、どんな教科書よりもふるさとのすばらしさを教えてくれる。
すばらしい伝統と大自然に包まれ、健やかに、そしてふるさと美川を愛してやまない美川中学生に成長する生徒たちの姿を目の当たりにし、私は日々感動している。
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