私の教育実践

私の教育実践 ~「障がい児教育は、教育の原点である」~
県立しげのぶ特別支援学校 校長 喜安 勝也
私の教育実践 -「特色ある道徳教育推進事業」の実践から-
内子町立五十崎中学校 教諭 冨山 和広

私の教育実践
~「障がい児教育は、教育の原点である」~

県立しげのぶ特別支援学校 校長 喜安 勝也


しげのぶ特別支援学校の桜の前にて
 36年前の新規採用研修の時、「障がい児教育は、教育の原点である」と教えられた。『一人一人の障がいの状態や発達等を見つめ、全ての子供を最大限伸ばし育てる故か』と思いながら、「自分は、この教育のエキスパートになりたい」と決意したことを思い出す。

 私の教員生活は、松山聾学校に始まり、第一養護学校整肢療護園分校、松山盲学校、第三養護学校、愛媛県教育委員会特別支援教育課、今治特別支援学校、みなら特別支援学校、しげのぶ特別支援学校と、全ての障がい種別の特別支援学校及び行政で勤務した。

 その間、平成19年度に特殊教育から特別支援教育への転換。平成26年の障害者権利条約批准に伴い、インクルーシブ教育及び共生社会の実現が目指される等、特別支援教育には種々の変遷があった。

 こうした中、特別支援教育行政に関わり、県下の幼稚園、小・中学校、高等学校、特別支援学校等において、子供の発達や成長を点と線で見つめた経験は大きな財産となった。また、上司から「鳥の目と虫の目の両方の視点を持ちなさい」、「できないのではなく、どうしたらできるかを考えなさい」等、慈にして厳なる助言をいただき、自己の課題への気付きとチャレンジ精神が養われたように思う。

 特に、校長として最初に赴任したみなら特別支援学校では、生徒が福祉の受益者から担い手になることを目指した専門教科「福祉」の導入。技能検定「清掃、喫茶・サービス等」で学んだ技能を活用して、地域に出て行っての社会貢献活動や就労促進。地域資源である坊っちゃん劇場と連携したミュージカルに取り組んだことなどが印象深い。ミュージカルの持つ芸術性や表現力、「雨にも負けず」の主人公の力強い生き様等は、練習を重ねる中で生徒たちを大きく変容させた。それを見た保護者が驚いて協力者になり、関係者が素晴らしい子供たちを広く知ってもらいたいと坊っちゃん劇場公演を実現させ、当日は多くの観劇者とともに感動の涙に濡れた。

 最後の赴任校のしげのぶ特別支援学校では、全国的な喫緊の課題である医療的ケアの子供たちへの適切な対応に全力を注いだ。そして、今年度、文部科学省「高度な医療的ケア等に対応した校内支援体制充実事業」のモデル校となり、子供たちと保護者を支えるために、全教職員及び関係機関が一体となって課題解決に取り組んでおり、成果報告会を2月に開催することとしている。この愛媛での実践が、全国の同様の子供たちへの支援の一助になることを心から願っている。

 終わりに、障がい児教育に尽力した先人の不撓不屈の歩みと業績に触れておきたい。三重苦を克服し多くの障がい者に生きる希望を与え、日本の障がい福祉の向上にも多大な貢献をされたヘレン・ケラー女史。視覚を失うも自らが「一粒米」となって、私立愛媛盲唖学校の設立や貧しい人々の救済に尽力した元余戸村村長の森恒太郎(盲天外)先生。その他多数の偉人の足跡を、私たちは道標として歩んできた。「教育の不易」「教育は人なり」の原風景をこうした先駆者に見ると共に、それを伝承・発展させていくことが後進の私たちに託されている。

 思えば、「自分がどれほど専門性を深めたか」という点では、道半ばの浅学でしかなかった私だが、多くの方々に支えられ「教員生活を全うできた」ことに、心からの感謝を述べてペンを置きたい。


私の教育実践
-「特色ある道徳教育推進事業」の実践から-

内子町立五十崎中学校 教諭 冨山 和広

 道徳教育は、「生き方」を考え、「よりよく生きる」ために重要なものである。教師になって、これまで数多くの生徒たちと関わってきたが、そんな中で思うのは、自分が教えてきた生徒たちの「生き方」にどれだけ関わることができたのだろうか、ということである。反省されることばかりではあるが、生徒の感想や便り、再会したときの会話などで、救われることがある。それが、教師としてのやり甲斐でもある。

 一昨年度、五十崎中学校に赴任して道徳教育推進教師となり、文部科学省委託「道徳教育の抜本的改善・充実に係る支援事業」、愛媛県教育委員会指定「特色ある道徳教育推進事業」の実践研究を中心となって推進することになった。道徳教育の大切さを実感するとともに、教科化に向けて、一層、研修を深めていかねばならないと感じた。今年度は、生徒指導という立場に替わったが、学校教育活動を進めていく上で、道徳教育の重要性は変わらない。今回、改めて道徳教育について考える機会を与えていただき感謝している。それでは、本校の「特色ある道徳教育推進事業」の教育実践を紹介したい。

 まずは、生徒及び教職員、保護者への意識調査等の結果を分析し、道徳の教育目標を「よりよい生き方を求め、たくましく生きる生徒を育てる」に変更した。それに伴って、全校重点指導項目、学年重点指導項目を見直し、全て視点を「主として自分自身に関すること」に統一した。新学習指導要領への移行を意識して指導項目も変更し、もう一度、道徳教育諸計画の見直しを行った。

 次に道徳の時間を充実させるため、新学習指導要領の解説の言葉を引用しながら、本校の学習指導案例を作成し、発表ボードを利用した班での話合い活動や終末での感想用紙の使用など、共通意識をもって取り組んでいくことを確認した。

 各教科においても、班やペアでの話合い活動、協働学習を積極的に導入し、共に考え、学び合える集団づくりや授業づくりに努めた。また、道徳的視点(生き方)を重視した授業実践も試みた。

 各学級においては、朝の会や終わりの会で、道徳的な価値22項目をテーマにした1分間スピーチを実践した。道徳的な価値を基に自分の生活を振り返って見つめ直し、その体験を級友たちの前で語り、級友は、そのスピーチを聞いての感想を発表する。このように、共に考え、悩み、感動を共有することで、生徒間の信頼関係も増すものと考えた。教室背面には、道徳の時間の感想や各行事の思い出の写真を掲示し、廊下には道徳コーナーを設置するなど、環境整備にも力を入れた。

 家庭や地域との連携においては、本校独自の活動である「凧行事」や「人の輪集会」等を通じて、道徳教育の啓発活動を進めた。ホームページや各種通信を使って、情報発信もした。

 このように研究実践を進めていった成果として、アンケート調査の結果から、「自分の生き方について考えたり話したりできている。」、「よりよい生き方をしたい。」と答えた生徒の割合が着実に増加していた。さらに「学校が楽しい」と答えた生徒の割合も増加していた。

 これを本研究の成果と捉え、今後も更に道徳教育の充実を図っていきたい。そして、生徒たちの「よりよい生き方」に少しでも関わっていきたい。