学校紹介
― 地域社会に根ざした魅力ある農業高校を目指して ―

愛媛県立伊予農業高等学校 教頭 早瀬 英司

1 はじめに

(正門から見た校舎)

 本校は、大正7年に伊予郡立実業学校として地域の産業を発展させるべく創立されました。昭和27年に愛媛県立伊予農業高等学校として独立し、現在は全日制農業科6学科(生物工学科、園芸流通科、環境開発科、食品化学科、生活科学科、特用林産科)から成る西日本でも有数の農業高校です。本年5月には台湾台中市立新社高級中学との姉妹校提携が結ばれるなど、創立 100周年を迎えるあたって学校内外の諸環境の充実が図られています。
 本年度は、全日制3学年18クラス 601名が在籍しています。これまでに17,000名を超える卒業生を輩出し、多くの同窓生が愛媛県内外の様々な分野で活躍しています。

2 本校の教育活動
(1)校 訓  向学・自律・勤労
(2)重点努力目標と創立 100周年記念テーマ
 本年度は『地域社会に根ざした教育の推進 - 100周年にふさわしい校風づくり-』を重点努力目標に掲げました。マニフェストには、次の世紀の地域を担う人材を育成するために必要な心構えである、「認め合い、称え合い、支え合い、相手を思いやる心を大切に-生徒のため、地域のため、未来のために-」を加えました。生徒は将来の地域を担う一人として、日々の学習と実習、そして特別活動に努力を重ねており、教職員はあらゆる機会を通じて生徒に正対し、生徒の力を更に少しでも伸ばすべく日々奮闘しています。
  100周年記念テーマとシンボルマークは、生徒のアイディアによって作られました。

(シンボルマーク)

 記念テーマは「我ら100年 農と共に ~新たな光 伊予に輝く~」で、創設から受け継がれた伊予農業高校の 100年の歴史と伝統を守り、生徒一人一人が更なる飛躍を果たし、伊予の地から未来の日本の農業を照らす光となりたいという思いを込めて作成しました。
 シンボルマークは、次の二つのモチーフで構成されています。

① 稲穂で農を、中央の花は愛媛県の花であるみかんの花をイメージしました。

② 丸味を帯びたデザインは100を表しています。

 マーク全体としては、稲穂のように成長する生徒を表現しました。

(3)教育活動の展開
 生物工学科は、植物バイオテクノロジーに関する基本的な知識と技術を習得し、生物産業の進展に積極的に対応できる人材の育成を行っています。農業高校では少なくなった家畜飼育の技術についても学ぶことができます。特に豚の出産に立ち会った際には、生命の誕生という貴重な体験をしています。さらに、地域の福祉施設や公共機関と連携した事業を展開しています。
 園芸流通科は、園芸作物(野菜・草花・果樹)の栽培、施設の利用や流通・販売に関する知識と技術を習得し、農業経営者及び農産物流通・販売分野の業務に従事する技術者の育成を行っています。特に、毎週1回行われる校内生産物の販売(いきいき市)は好評で20年を超えて続いています。さらに、毎年県庁で行われる愛媛県功労賞授賞式等で飾られる菊は本科生徒が実習で栽培したもので、奥道後菊花展でも連続して総理大臣賞を受賞しています。
 環境開発科は、環境保全や緑地計画をはじめ、家庭菜園での鑑賞菜園(ポタジュ)づくりなど生涯学習に生かせる知識・技術を学ぶとともに、関連産業に従事する技術者の養成を行っています。2020年東京オリンピック・パラリンピック選手村に米を送るプロジェクトに数年前から取り組んでおり、無農薬米の栽培と共に愛媛県で初めて米のGLOBALG.A.P.を取得しました。また、資格取得にも力を入れており、本年度は測量士1名、測量士補8名を合格させるなど様々な資格を取得させています。
 食品化学科は、急速に発展している食品製造業及び食品流通業に関する基本的な知識と技術を習得し、地域食品産業に関わる仕事に従事する技術者育成を行っています。1月に静岡で行われた全国高校生パンコンテストでは出場した4人全員が入賞し、2部門では最優秀賞を受賞しました。特に最優秀賞を受賞した地産地消部門では、伊予市の特産物である中山栗を使った菓子パンを製造し、そのレシピは静岡でも活用されています。また、今年度「地域に生き地域とともに歩む高校生育成事業」を実施しており、地域特産品であるハダカムギやユズを使って、自然循環型作物であるムクナ豆を利用した商品開発も行っています。
 生活科学科は、農業科目と家庭科目を中心に体験的に幅広く学習し、将来、楽しく豊かに生きていく力を身に付けるとともに、地域社会に役立つ人間に育てることを行っています。伊予絣の研究や、伊予市で生産される農産物や海産物を使用し、本科の生徒が加工品等を作り、松山大学の学生がマーケティングや広報を考えていく「iProject!」事業、伊予彩まつりや子ども食堂への参加等、地域と密着した学びを進めています。
 全国でも唯一の特用林産科は、特用林産物の栽培や加工・利用に関する基礎的な知識を身に付け、森林・林業についての理解を深め、地域農林業に役立つ技術者の育成を行っています。フィールドワークに力を入れており、皿が峰や石鎚山の登山や、愛媛県と共同して林業後継者の育成事業を実施しています。また、キノコ栽培については、愛媛大学の学生の学びの場にもなっています。
 学習指導要領にも指導内容の一つとして位置づけられている農業クラブ活動においても生徒は熱心に活動しており、フラワーデザイン競技県大会、家畜審査競技県大会、各種発表県大会及び四国大会、農業鑑定競技全国大会で入賞を果たしています。
 さらに、生徒が自主的に運営している学校行事は充実しており、部活動も熱心に活動しています。今年度は県総体へ 125名の選手を送ることができ、更に四国総体には、陸上競技部、女子卓球部、ライフル射撃部が出場できました。特に、女子卓球部は県新人大会3位、ライフル射撃部は来年3月行われる選抜大会に4名が出場するなど、今後更なる活躍が期待されます。
3 創立100周年記念事業
☆ 台湾台中市立新社高級中学との姉妹校締結 平成30年5月9日
姉妹校締結の経緯
 1930年、本校第1期生である山岡栄先生が、当時勤務していた東勢農林国民学校(現 台湾台中市立新社高級中学)において、自然災害に遭遇した生徒を救助しようとして殉職し、現地と伊予市中山で今もなお、追悼行事が行われています。この山岡先生のご遺徳により、2007年頃から、台中市立新社高級中学との交流が始まり、伊予農業高校創立 100周年をえる本年、同氏の命日である5月9日に本校校長他教職員及び代表生徒が現地を訪問し、姉妹校提携を締結しました。
☆ 航空写真撮影 平成30年5月17日
☆ 記念講演会 平成30年5月22日
☆ 記念運動会 平成30年9月11日
☆ 運動部フェスティバル 平成30年10月28日
☆ 記念式典 平成30年11月10日
☆ 記念農業祭 平成30年11月11日

4 おわりに
 伊予農業高等学校は、教職員と生徒とが一緒になって地域を活性化するためには、という課題に対して真摯に取り組む姿勢にあふれています。様々な場で活躍されている卒業生が築いた伝統を受け継ぎ、次の 100年に向けて地域から信頼され、地域を担う人材を育成する魅力ある学校を目指して、教職員全員が邁進します。

(姉妹校締結式)

(航空写真撮影)

(記念式典)
 本校ホームページもぜひご覧ください。 https://iyo-ah.esnet.ed.jp/