まずは、平成30年7月豪雨により、お亡くなりになられた方々のご冥福を心からお祈りするとともに、被害に遭われた全ての方々に心からお見舞いを申し上げます。一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。
まずは教員生活を振り返り、素晴らしい生徒・教職員はじめPTA・同窓会等の皆様と触れ合い、一体感のもと「感動と感謝」の日々を送らせていただいたことに対し、深く感謝を申し上げます。
微力ではありますが、これまで38年間自分なりに全力で走ってまいりました。英語の教科指導では辞書や解説書等を調べに調べるなどして「分かる授業」を目指し、私自身も英検を受検するなど自己研さんに努めました。進路指導にも精力を傾け、生徒の夢の実現のために日夜努力をしました。また、弓道部の顧問として、自らも稽古に取り組むなどして指導法を学び、全国大会上位入賞も果たしました。
しかし同時に、「教師が教えて生徒が学ぶ」という考えには限界があると感じる場面も多く、思案と模索の日々が続きました。そしてそれは「人間とは何なのか」という問いと真正面から向かい合うきっかけにもなりました。
私はそれまでの様々な学びから、「心を開発したい」という思いを持って、創立92年の伝統校である本校に赴任しました。本校は校訓「鍛」のもと、文武両面で意欲的に取り組んでいる学校ですが、入学当初のアンケート等から、自己肯定感に課題がある生徒もいる現状を知りました。ご存知のように、日本の高校生の自己肯定感は低く、「私は価値のある人間だと思う」という項目に対し「そうだ」「まあそうだ」と答えた高校生はわずか44.9%という意識調査報告も出ています。今、自分を否定して「うつ」になったり、また、他人のよいところが見えず「いじめ」たりしてしまう例も少なくありません。
種々検討の結果、他の取組とともに、教育の原点に立ち返り、生徒の「本来の素晴らしさ」を引き出すことを本校教育の柱の一つとし、その具体的手法として、自他のよいところに焦点を当てる「美点の発見」に取り組むこととしました。
各課、各教科、各学年等において様々な取組がなされましたが、特に人権・同和教育課や学年の取組は、人間関係の改善に大きな効果を上げました。また、私自身、相手を褒めるペアワークを全校生徒対象に二度行いました。「本当に幸せな時間でした」「自分の長所を認められるようになり、自分が好きになりました」「相手との仲がさらによくなりました」・・・そのような感想が驚くほど多くありました。ペアワーク後の生徒の変容も顕著で、持続的でした。
現在本校では、先生方や関係の皆様のご尽力のおかげで、生徒のよさが引き出され、目覚ましい成果を上げています。平成30年度は県総体で団体4競技が優勝・準優勝、団体6競技が3位以上、四国総体への出場者数は57名、四国総体では団体2競技が優勝、全国総体は団体1競技が準優勝。国体にも6名が出場し、優勝、準優勝を含み全員が入賞。文化部、農業クラブも全国レベルで活躍しています。クラス数が減少しているにもかかわらず、過去10年間で突出した結果となっています。また、学習への取組も大変前向きです。学校の雰囲気はとても清々しく、「笑顔で挨拶」が特徴となっており、来校者の驚きの声もよく聞かれます。「この学校で自分のよさを十分引き出すことができました。大きく成長できたと思います」と多くの生徒が述べています。
また、国際舞台で自信を持って活躍できる人材に育ってほしいという願いから、英語4技能のエキスパート等として活躍されている先生の講演会を実施し、生徒たちはその先生の音声指導法から多くのことを学びました。その先生は、英語を聞きとれない・話せないことが日本人の自己肯定感の低さにつながっている、と言われましたが、同感です。4技能習得のコツを身に付けた本校生の今後の活躍を楽しみにしています。
これまでの教育実践から、今後の教育は、知識を学ぶ「インプット教育」から、自他のよいところを引き出す「アウトプット教育」へと向かうべきだと私は考えています。
遅まきながら「引き出す教育」に取り組んで、生徒の素晴らしさを改めて認識し、本当は生徒が先生だったのではないか、と感じています。今後は、人が「本来の素晴らしさ」「本当の自分」を発見・開発できるようご支援させていただきたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
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