私の教育実践

私の教育実践 ―地域を学び、地域に学び、地域と共に学ぶ学習―
松山市立道後小学校 校長 鵜久森 克

私の教育実践 ~「引き出す教育」へのシフト~
愛媛県立今治南高等学校 校長 藤田 克昌

私の教育実践
―地域を学び、地域に学び、地域と共に学ぶ学習―

松山市立道後小学校 校長 鵜久森 克

1 はじめに
 本校は、道後村、石手村、持田・一万村そして祝谷村の各所にあった小学校が明治23年に1つになり、組合立道後尋常小学校としてスタートしました。その時点を創立の年としていますから、来年は創立130周年を迎えることになります。
 学校の北には道後温泉や伊佐庭神社があり、東には四国八十八箇所第51番札所の石手寺があり、南には石手川が流れ、西には湯築城跡や子規記念博物館のある道後公園があります。本校は、まさに有形無形の重要な文化財に包まれた地域、数々の偉業を成し遂げた先人の息遣いの感じられる地域、さらに、松山市の観光・産業を支える重要拠点地域にある学校と言えます。
2 地域を学び、地域に学び、地域と共に学ぶ学習の推進
(1)  地域を学ぶ
各学年においては、生活科や社会科、あるいは総合的な学習の時間等において、松山市教育委員会が作成した「ふるさと松山学」(全8冊)を中心資料として積極的に活用した学習を展開しています。また校長は、いわゆる朝礼にあたる「道後タイム」において、「衛門三郎」、「道後温泉の歴史」、「伊丹十三と伊予弁」、「道後の文化財」、「道後小学校の変遷」など、対象学年に応じて地域を学ぶスライドを作成し、児童の地域理解を図っています。
道後タイム
(2)  地域に学ぶ
児童には、地域の活性化に熱い思いを抱いて今を生きている公民館や道後オンセナートや道後旅館組合等の地域の人たちや、様々な地域から来松した観光客等外部の人たちとの積極的な交流を勧めています。様々な体験と共に多様な考えに触れ、自己表現をしていくことで、肯定的に他者の考えを受け入れることができるようになるからです。心と心を通わせることで、人を尊敬し、他に感謝することのできる人材に、ますます育ってくれることを願っています。
観光キッズ
(3)  地域と共に学ぶ
児童には、地域の多くの大人たちが、自らの人生や自らの生き方をより豊かにするために、あるいは自己実現を図るために、様々な学習の活動(勉強)に取り組んでいることについて、機会をとらえて知らせています。そして、可能な限り、そうした方たちとの学びを楽しむよう呼びかけています。さらに、学習機会や学習成果の場といった生涯学習の場として、学習に支障のない限り学校を開放し、地域の方たちを応援しています。
お母さんコーラスの発表の場
3 おわりに
 私の教育実践は、各段取り上げるほどのものではありません。ただ、本校の大きな特徴の1つとして、転出入の児童の多さが挙げられます。ここ5年間で500名の児童の転出入がありました。その一方で、近年の少子化の流れの中で、平成13年以降、毎年、750~800人の児童数を確保しています。このため、道後を知らず道後小で育ち、そして地域を愛する心を育むことなく道後小を去って行く児童が出てくることがあっては残念で仕方ないのです。
 だからこそ、道後小で生活をする全ての児童には、「今住んでいるこの地域の歴史や暮らし方について、可能な限り地域からダイレクトに学んでほしい。先人の偉業を探ったり地域の方々と交流したりする中で、人々に流れている価値観に触れ、敬意と感謝の念を抱き、さらには郷土道後・郷土松山への誇りを抱いてほしい。児童に足元(生活の場)をしっかり学ばせ、何が大切であるのか考えさせ、さらには自分の立ち位置に気付かせ、ひいては自己肯定感や自己有用感を育ませやりたい。」と思っています。そして、児童一人一人が、道後小での生活を通して、たくましい志を抱いてくれることを期待しています。

私の教育実践
~「引き出す教育」へのシフト~

愛媛県立今治南高等学校 校長 藤田 克昌

 まずは、平成30年7月豪雨により、お亡くなりになられた方々のご冥福を心からお祈りするとともに、被害に遭われた全ての方々に心からお見舞いを申し上げます。一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。

 まずは教員生活を振り返り、素晴らしい生徒・教職員はじめPTA・同窓会等の皆様と触れ合い、一体感のもと「感動と感謝」の日々を送らせていただいたことに対し、深く感謝を申し上げます。

 微力ではありますが、これまで38年間自分なりに全力で走ってまいりました。英語の教科指導では辞書や解説書等を調べに調べるなどして「分かる授業」を目指し、私自身も英検を受検するなど自己研さんに努めました。進路指導にも精力を傾け、生徒の夢の実現のために日夜努力をしました。また、弓道部の顧問として、自らも稽古に取り組むなどして指導法を学び、全国大会上位入賞も果たしました。
 しかし同時に、「教師が教えて生徒が学ぶ」という考えには限界があると感じる場面も多く、思案と模索の日々が続きました。そしてそれは「人間とは何なのか」という問いと真正面から向かい合うきっかけにもなりました。

 私はそれまでの様々な学びから、「心を開発したい」という思いを持って、創立92年の伝統校である本校に赴任しました。本校は校訓「鍛」のもと、文武両面で意欲的に取り組んでいる学校ですが、入学当初のアンケート等から、自己肯定感に課題がある生徒もいる現状を知りました。ご存知のように、日本の高校生の自己肯定感は低く、「私は価値のある人間だと思う」という項目に対し「そうだ」「まあそうだ」と答えた高校生はわずか44.9%という意識調査報告も出ています。今、自分を否定して「うつ」になったり、また、他人のよいところが見えず「いじめ」たりしてしまう例も少なくありません。
 種々検討の結果、他の取組とともに、教育の原点に立ち返り、生徒の「本来の素晴らしさ」を引き出すことを本校教育の柱の一つとし、その具体的手法として、自他のよいところに焦点を当てる「美点の発見」に取り組むこととしました。
 各課、各教科、各学年等において様々な取組がなされましたが、特に人権・同和教育課や学年の取組は、人間関係の改善に大きな効果を上げました。また、私自身、相手を褒めるペアワークを全校生徒対象に二度行いました。「本当に幸せな時間でした」「自分の長所を認められるようになり、自分が好きになりました」「相手との仲がさらによくなりました」・・・そのような感想が驚くほど多くありました。ペアワーク後の生徒の変容も顕著で、持続的でした。

 現在本校では、先生方や関係の皆様のご尽力のおかげで、生徒のよさが引き出され、目覚ましい成果を上げています。平成30年度は県総体で団体4競技が優勝・準優勝、団体6競技が3位以上、四国総体への出場者数は57名、四国総体では団体2競技が優勝、全国総体は団体1競技が準優勝。国体にも6名が出場し、優勝、準優勝を含み全員が入賞。文化部、農業クラブも全国レベルで活躍しています。クラス数が減少しているにもかかわらず、過去10年間で突出した結果となっています。また、学習への取組も大変前向きです。学校の雰囲気はとても清々しく、「笑顔で挨拶」が特徴となっており、来校者の驚きの声もよく聞かれます。「この学校で自分のよさを十分引き出すことができました。大きく成長できたと思います」と多くの生徒が述べています。

 また、国際舞台で自信を持って活躍できる人材に育ってほしいという願いから、英語4技能のエキスパート等として活躍されている先生の講演会を実施し、生徒たちはその先生の音声指導法から多くのことを学びました。その先生は、英語を聞きとれない・話せないことが日本人の自己肯定感の低さにつながっている、と言われましたが、同感です。4技能習得のコツを身に付けた本校生の今後の活躍を楽しみにしています。

 これまでの教育実践から、今後の教育は、知識を学ぶ「インプット教育」から、自他のよいところを引き出す「アウトプット教育」へと向かうべきだと私は考えています。
 遅まきながら「引き出す教育」に取り組んで、生徒の素晴らしさを改めて認識し、本当は生徒が先生だったのではないか、と感じています。今後は、人が「本来の素晴らしさ」「本当の自分」を発見・開発できるようご支援させていただきたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。