本年度新規事業



「早寝早起き朝ごはん」フォーラム inえひめ

 令和元年10月9日(水)エスポワール愛媛会館において、「早寝早起き朝ごはん」フォーラムinえひめが開催されました。「家庭教育支援」をはじめとする「学校・家庭・地域連携推進事業」関係スタッフや、学校関係者、PTA役員、子育て支援関係職員等、子どもの健全育成に携わる様々な関係者の皆様133名の方に参加いただきました。
 このフォーラムは、専門家による講演や事例発表を通して、地域ぐるみで健やかな子どもの育成を推進するための取組の機運の醸成に努めるとともに、ワークショップにより、「早寝早起き朝ごはん」等の活動に取り組む団体等の交流の場を創設し、相互の連携・協力を進めることによって、活動の充実を図ることを目的として開催しました。

「早寝早起き朝ごはんフォーラム」inえひめの概要

その1 戒田節子さんと「はやね はやおき 朝ごはん」の歌とダンス


 開会行事のアトラクションでは、平成24年度「優れた『早寝早起き朝ごはん』運動の推進にかかる文部科学大臣表彰」受賞団体のみかん一座から、座長の戒田節子氏による、「はやね はやおき 朝ごはん」の簡単なダンスのレクチャーがあり、みきゃん、ダークみきゃん、こみきゃんも登場して、みんなで楽しくリズムに乗って体を動かしました!

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その2 「早寝早起き朝ごはん」のスペシャリスト鈴木みゆき氏による講演


 「早寝早起き朝ごはん」の提唱者の一人でもある、独立行政法人 国立青少年教育振興機構理事長鈴木みゆき氏により、「子どもの生活習慣に関する課題~睡眠習慣と家庭教育~」について、御講演をいただきました。現代の子どもの生活習慣の課題を科学的に調査・分析し、睡眠が子どもの体や脳に与える影響及び睡眠のメカニズムについて、より身近な話題と共に、参加者にとって分かりやすく、丁寧にお話しいただきました。また、子どもの正しい生活習慣の習得には、学校・家庭・地域の様々な立場の人たちがつながり、社会総がかりで取り組んでいくことの大切さや、家庭教育支援が果たす役割についても呼びかけられました。さらに、幼児期において自然体験等の豊かな体験活動をさせることは、子どもに様々な力を身に付けさせるということ、そして保護者においても体験が不足しているという現状から、親子で一緒に多くの体験を積み重ねていくことの大切さ等、多くのヒントをいただきました。鈴木先生の素敵なお人柄が伝わり、会場は終始愛顔の絶えない和やかな雰囲気の中であっという間の90分間となりました。

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【講演から】
○日本は世界の中で最も睡眠時間が少ない国。
○睡眠をとる理由
・脳を休ませ、体が元気でいるための機能をきちんと働かせるため。
・人間は昼行性。体内時計をもっているため。
○睡眠の役割
・ノンレム睡眠…脳を休ませる深い睡眠
・レム睡眠…大脳を活性化させる浅い睡眠
○セロトニンとメラトニン
・セロトニン…朝の光によって脳幹から出される情報伝達物質。これが不足すると意欲が低下し、切れやすくなる。
・メラトニン…暗い環境でより多く分泌され、よい睡眠を導く。スマホやタブレット等の光に含まれるブルーライト系の強い光は、睡眠の質を低下させる。
○必要とされている人間の年齢別の睡眠時間。
・幼児期…10~13時間 学童期…9~11時間
  ティーンエイジャー…8~10時間
○家庭教育支援の役割
・科学的根拠のもとに、正しい情報を地道に伝えていくこと。
○学校・家庭・地域が、みんなで、できることから始めていこう。

その3 シンポジウム
「優れた『早寝早起き朝ごはん』運動の推進にかかる文部科学大臣表彰」受賞歴のある、学校・家庭教育支援チーム・県外の発表者による実践事例発表及び質疑・応答


 シンポジウムでは、「優れた『早寝早起き朝ごはん』運動の推進にかかる文部科学大臣表彰」受賞歴のある、学校・家庭教育支援チーム・県外の発表者による実践事例発表と質疑・応答を、鈴木氏のコーディネートのもと行いました。早寝早起き朝ごはん運動に係る様々な取組を聞き、参加者と一緒に子どもの正しい生活習慣について考え、多くの方の積極的な質問や発言により、実りあるシンポジウムとなりました。


伊予市立郡中小学校(平成30年度受賞)
「学校・家庭・地域の力で元気な郡中っ子」
発表者:教頭 灘岡 雅人氏

  • 市内全小中合同で「生活リズムや食生活に関するアンケート」を実施し、基本的生活習慣に係る児童の実態や課題を明らかにし、家庭や地域との連携・協力を図りながら、全校体制で取組を進めている。
  • 保健だよりに「ノーテレビ・ノーゲームにチャレンジ」のアンケート結果や、「早寝早起き朝ごはん」に関するコーナーを掲載したり、毎年6月に「健康教育参観日」を開催したりするなど、様々な工夫をしながら実施している。
  • 地区別懇談会等で話し合う場をもち、家庭での生活改善に関する意見交換を行うだけでなく、児童の実態や課題を紹介することで、関係機関や地域の方との連携推進に努めている。

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大洲子育てサポート“そよ風”(平成28年度受賞)
「早寝早起き朝ごはん」運動の取組
  発表者:家庭教育支援員 久保田孝子氏

  • 平成20年4月から、幼稚園・保育所、学校、子育て支援センター等の各種施設・機関、団体等と連携・協力し、子育て・家庭教育支援の開催や相談活動等に継続的に取り組み、「早寝早起き朝ごはん」運動等に係る学習機会を年間30回提供。子育て講習会、就学時検診での子育て学習会、親子学習会、児童館でおしゃべりカフェ等、様々な場所で実施している。
  • 情報紙「そよ風通信」を年11回作成・発行し、市内の幼稚園・保育所・学校等に配布することにより、子どもの生活習慣定着の重要性や「元気が出る朝ごはんレシピ」等の具体的な取組の普及に努めている。

大阪府堺市教育委員会(平成28年度受賞)
「みんいくのすすめ~睡眠が変われば子どもが変わる」
発表者:指導主事 木田 哲生氏

  • 「みんいく(睡眠教育)」研究・実践者。「みんいく」とは、子どもの睡眠を中心とする生活習慣を改善し、心身の健康を増進させ、不登校をはじめとする子どもの課題を改善する教育のこと。三原台中学校在勤中(平成27年)に、不登校改善を目的に導入。教育と医療の連携「教医連携」を軸とし、具体的な睡眠改善に取り組む。
  • 学校内では、コーディネーターとして校内の指導体制を組織化し、睡眠朝食調査、みんいく授業等を実施。校区内では、「みんいく地域づくり推進委員会」を組織し、地域全体で「みんいく」の実践に取り組む。さらに堺市全域での取組に発展し、児童生徒の生活習慣の改善に効果を上げている。

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 また、質疑・応答には、みかん一座座長の戒田節子氏にも参加いただき、「はやね はやおき 朝ごはん」の歌とダンスのエピソード等をお話しいただきました。

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その4 ワークショップ
踊った! 学んだ!最後は、考えて、つながろう!


 ワークショップでは、子どもの健全育成に関わる様々な方とつながり、一緒に子どもの正しい生活習慣についての各自の取組や課題解決に向けて話し合いました。参加者には2つのミッションが与えられ、一つ目は、「早寝早起き朝ごはん」に関する○×クイズで、今日の学びを振り返りました。二つ目は、「早起き朝ごはん」プロジェクトと称し、各班(計17班)がプロジェクトチームとなり、それぞれの立場で知恵とアイデアを出し合って、子どもの正しい生活習慣づくりについて考えました。

 【各チームが考えた「早寝早起き朝ごはん」プロジェクト】
  • 朝カツプロジェクト~朝を制するものは、一日を制する~
  • よく食べ よく動く 体力アップ大作戦!
  • 笑顔で親子遊びプロジェクト
  • ぐっすり寝るためにみんなでよく遊ぶプロジェクト!

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参加者の感想


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  • 鈴木先生のユニークな人柄、聞き取りやすく、分かりやすい表現、本当によかった。もっとたくさんの方に話を聞いてほしい。「しんどい」家庭にも届けたいと思った。
  • 科学的根拠やたくさんのデータに基づいた話であり、生徒に伝えたら自分自身に起こることとして捉えることができると思う。現場で睡眠指導を実施する際、鈴木先生の著書を教科書として取り組んだが、それを直接教えていただき、本当に感謝している。
  • 「みんいく」について知ることができてよかった。全てはつながっている。 保護者も地域も学校もつながれば相乗効果でよくなりそうである。
  • 郡中小学校や大洲の家庭教育支援チームの発表は、各地域でいろんな角度から様々な取組が実践されていて、地道に行うことで少しずつ身になっていくということが分かった。
  • ひとつのテーマを一緒に考え、人間関係=つながりを感じた。
  • 異なる職種の方々と知恵を出しながら、子どもたちのことを考えてするワークショップは、明るい未来を考えることにつながっていると思う。
  • 全ての方がイキイキした研修会だった。盛りだくさんのお土産をいただいた気分である。

終わりに


 県内各地から子どもたちに関わる様々な立場の方に多数御参加いただきました。今回のフォーラムを通して、学校・家庭・地域がつながり、社会総がかりで子どもの正しい生活習慣づくりが推進されるよう期待しています。今後はリーフレットを作成してそれを活用した普及啓発に努め、引き続き「早寝早起き朝ごはん」運動の推進に取り組んでいきます。

令和元年度特別支援教育理解促進フォーラム

 特別な支援を必要とする子どもに対する切れ目ない支援体制の構築に向けて、家庭と教育と関係機関がより連携を深めていくことが求められているところです。
 県教育委員会では、特別支援教育に関する理解啓発や関係機関との連携を推進し、障がいのある子どもたちの教育の一層の充実を図るため、『特別支援教育理解促進フォーラム』を開催しました。
 当日は、発達障がいへの正しい理解を求めて活動している 立石 美津子 氏の講演のほか、家庭や関係機関の代表者によるシンポジウムも行い、一般、保護者、教育及び医療・福祉・労働等の関係機関の関係者、約300名の参加がありました。

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【行政説明】


 本県における特別支援教育の現状、特別支援教育に関する国や県の動向について、「法令等の改正」「トライアングルプロジェクト」「愛媛県の特別支援教育重点目標」などのキーワードに沿って説明しました。

【講演】


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 立石氏には、お子さんとともに歩む日々の中で得た子育てのポイントについて、語っていただきました。「子どもの将来の幸せのため、今辛くても頑張らせる」のではなく、子どもが、「生きていて楽しい」経験を積み重ね、未来への希望を見出すことができる子育てに辿り着くまでの、様々なエピソードを紹介していただきました。子どもの住む世界に歩み寄り、平均値を押し付けたり、他の子と比較したりせず、「~したい」という動機を育てること、長期的な目線で子どもにとって最善の選択をしていくことなど、子どもへの関わり方や子育てのヒントをたくさん示していただきました。

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【シンポジウム】

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≪シンポジストの主な発表内容≫

<西原 勝則氏(新居浜市教育委員会発達支援課主任専門員)>
 特別支援教育の中核を担う部署として設置された発達支援課の業務の中から、「相談業務」について詳しく説明していただきました。様々な関係諸機関が、園や学校に入り、子どもの成長の視点で話し合うことが、教職員の理解の深まりや授業や保育の改善につながり、園や学校が変わっていくことにつながる、その一助を発達支援課が担っていきたいとのお話でした。

<堀内 史枝氏(愛媛大学医学部附属病院・子どもこころセンター長)>
 子どもこころセンターの設立目的や診療体制についての説明のほか、不登校の子どもを例に、個々の子どもに合った支援やステップアップの方法を柔軟に設定することの意義と大切さ、教育と医療の連携の課題についてお話をいただきました。教育・福祉・医療の連携で重要な視点について、事例を基に具体的に説明していただきました。

<江戸 卓郎氏(児童発達支援センターくるみ園児童発達支援管理責任者)>
 福祉の立場での国の動向や「児童発達支援」についての説明のほか、くるみ園での実際の受け入れ体制や支援の様子について紹介していただきました。保護者に対する関係者の支援と連携、連携の共通のツールとしての児童支援利用計画書や個別の支援計画等の活用、ステージごとの確実な引継ぎ、相談支援専門員が連携のキーマンであることなどについてお話をいただきました。

<田中 輝和氏 (ダンボクラブ会長、ペアレント・メンターえひめ副代表理事)>
 2歳から12歳までの子どもをもつ親のためのプログラムであるペアレントトレーニングや、発達障がいのある子どもの子育て経験のある親が、その経験を活かし、子どもや発達障がいの診断を受けて間もない親などに対して相談や助言を行うペアレント・メンターについて紹介していただきました。今後も、メンター養成を図りながら、カフェ開催地の拡大、個別相談の実施などに取り組んでいくとのお話がありました。

<立石 美津子氏(講演講師、指定討論者)>
 お子さんの特別支援学校入学、併せて放課後等デイサービスの利用により、理解ある先生やスタッフのもとで過ごすことができ、子育てが楽になった体験についてお話をいただきました。

<吉松 靖文氏(愛媛大学教育学部教授、コーディネータ―>
 吉松教授には、それぞれの発表内容から課題を整理し、今後の取組の方向性を示唆していただきました。教育と福祉の連携については、互いの活動内容や課題、担当者の連絡先などが共有されるよう、円滑なコミュニケーションを図っていくこと、保護者支援については、各段階で必要な支援が受けられるよう、保護者の相談窓口を整理していく必要があることなどについて、助言をいただきました。
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【参加者の感想】


  • 障がいの有無にかかわらず、子どもを育てる上で大事なことを学ぶことができた。
  • 子どもとの関わり方や支援の在り方を見直したい。
  • 関係機関の方の話を聞き、心強い味方がたくさんいることを実感できた。
  • 若い保護者の相談相手になりたい。
  • 様々な分野の現状や新しい情報を得ることができた。
  • 関係諸機関についての情報を提供し、保護者が困ったときにつながれる場の一つになるようにしたい。
  • 家庭、教育、福祉で同じ方向を向いて、障がいのある子どものありのままを受け入れて、愛し愛される喜びを感じられる教育を行いたい。
  • もっといろいろなところで、教育、福祉、医療等の関係者が、話す機会があればよい。
  • 日々の生活に追われ、子どもに対して向き合うことができない。
  • 子どもの障がいへの周囲の理解について、悩むことが多い。
  • 子どもの障がいを受け入れているつもりでも、「普通」を目指す自分がいる。
  • 親亡き後が心配である。
  • 関係機関との連携に難しさを感じている。
 このほか、アンケートでは、今後取り上げてほしい話題についても、提案いただきました。
 
 今後も、特別支援教育に関する理解啓発と関係機関の連携推進に努めていきたいと思います。