新規事業

愛媛県美術館・博物館・小学校共働による人材育成事業
文化財保護課
えひめ英語力向上特別対策事業
高校教育課

平成29年度文化庁・地域の核となる美術館・歴史博物館支援事業
愛媛県美術館・博物館・小学校共働による人材育成事業
児童・生徒の「思考力」を育むナビゲーター育成事業

1 はじめに―学びの回復、A君の真っ直ぐな手

 「A君最近よく手が挙がるんよ!他の授業でも!」これは今から5年前、小学校での対話型鑑賞授業(10回)の試みに協力してくれた教室で、クラスメイトの少年が笑顔で教えてくれたA君の学びの様子です。幸いこの連続授業は毎回録画していたので、再度授業の様子を見直してみました。すると、なるほどA君5回目以降、どんどん手が挙がっています。そして回を追うごとに手が真っ直ぐに伸びていったのです。
 対話型鑑賞は美術史等の知識だけに偏らず、鑑賞者どうしのコミュニケーションを通して、美術作品を読み解いていく鑑賞方法です。アメリカのニューヨーク近代美術館から始まったもので、当初は美術作品の鑑賞力の向上が目的でした。その後、実践と研究が積み重なるにつれ、観察力・批判的思考能力・言語能力・コミュニケーション能力といったいわゆる「生きる力」の育成にも役立つことがわかってきました。この学び手が主体となって「みる→考える→話す→聴く」という思考サイクルと「どこから、そう思う?」という根拠を問う質問を中心に、子どもたちのものの見方・考え方を広げることができる対話型鑑賞は、日本に導入後、特にこの近年は、他分野・他教科に応用する動きが各地で始まっています。愛媛県美術館でも県内の博物館・小中学校の有志とともに、平成27年度より文化庁の補助を得て4か年計画で、この対話型鑑賞を取り入れ、全教科を見据えた授業実験を開始しました。




2 文化庁事業プロジェクト(27~29年度)

 これまでのことを少しご紹介すると、まず準備段階として、平成27年度に①『教員対象ナビゲーター・トレーニングプログラムの開発』と②『公開セミナー“ともにみる、ともに学ぶ”』(定員100名・参加者113名)を開催しました。




 対話型鑑賞をとりいれた授業では、子どもたちの意見を引出しながら、その「場」を見極め、進行していくナビゲーター(ファシリテーター)の存在が欠かせません。そこで初年度は小中学校・博物館の現場、及び外部専門家等の声を交えて、対話型鑑賞の基礎理論と実践について学ぶためのトレーニング内容の検討を行いました。
 次いで、平成28年度には①『ナビゲーター・トレーニングプログラム』(全6回開催、県内小中学校教員・博物館学芸員30名参加)、②『プログラムの評価会議』(計4回)更に、③『トレーニングで学んだことを活用し、授業実践に取り組む各研修生の声を聴く現場調査』(県内小中6校が調査協力)を実施しました。その結果、28年度の終わりには、他教科での質の高い授業をデザイン・試行し始めた学校や博物館が現れる等、今後の県内小中学校・博物館への普及に向けての成果を得ました。ここまでが昨年度までの活動の様子です。







 そして本年度―平成29年度は、次期学習指導要領のテーマとなっている「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて次の3つの活動を行いました。まず、一つ目は①昨年度より対話型鑑賞(朝鑑賞)を取り入れて全校的に実践している松前町立北伊予小学校の全校的な協力と、本事業の実行委員の所属先である西条市立神戸小学校・周布小学校・愛媛県総合科学博物館(東予)、松山市立堀江小学校・松前町立北伊予中学校・愛媛大学教育学部附属小学校(中予)、西予市立多田小学校・宇和中学校、伊方町立三崎中学校、宇和島市立明倫小学校、愛南町立一本松中学校・高知県宿毛市愛媛県南宇和郡愛南町篠山小中学校組合立篠山中学校・愛媛県歴史文化博物館(南予)の協力のもと、全教科を視野に入れた授業実践研究を1年にわたって実験しました。その結果、ナビゲーターの基本的な視点の整理や授業内容をより深めていくための多くの知見を得ることが出来ました。また二つ目は②対話型鑑賞(美術)を対話型授業(他教科)で実践していくための、題して『美術と理科の親和性』という研修会(全2回開催、小中学校教員・学芸員30名参加)を行い、現在、多くの先生と学芸員のみなさんから、次につながる興味深い授業が報告されています。そして3つ目は③来年度刊行予定となっている「対話型授業」のテキストと内容について主な読者対象を「誰」にするか、コンセプトは?そして読者にとってどういった構成が読みたくなるものなのか等を話し合いながら、検討会議(全5回)を開催しました。







3 「A君」待っててね

 最後に、このプロジェクトの最終年度となる来年度―平成30年度は、これまで培ってきた知見を全県・全国で同じように授業に取り組んでいるみなさんと、子どもたちのもとに届けるため、次の3つのアウトリーチ活動を柱に尽力する一年にしたいと考えています。具体的には①美術館・博物館で開発された「対話型授業」を希望校・館で実施・普及する出前授業を開催します。更に②東予・中予・南予の愛媛県内3地域での教員・学芸員を対象とした「対話型授業」の実践とコミュニティ作りのための研修会を開催し、最後に③より多くの教員・学芸員への普及を目的とした「対話型授業」を理論・実践の両方からみつめ、この活動の根っこ―「哲学」についてお伝えするテキスト刊行の三柱を総仕上げの活動として位置づけたいと考えています。なお3つ目のテキストには「対話型授業」で使われる基本の質問「どこからそう思う?」の効果についての調査・分析結果も掲載したいと考えています。「A君」の手元に成果が届くまで、あともう少しです。


 平成28年度に作成した「対話型鑑賞」の紹介パンフレット。お問い合わせは愛媛県美術館まで。






えひめ英語力向上特別対策事業

 本事業では、中学校における検証テストの実施や、高校におけるICTを活用した英語教育の実践・研究、外部検定試験を活用した生徒の英語力の検証、英語キャンプ等の実施を通して、「読む、書く、聞く、話す」の4技能をバランスよく身に付けた生徒の育成を目指しています。
1 英語力検証テスト

 愛媛県教育委員会が、独自に英検3級・4級相当の問題を作成し、県内全ての市町(学校組合)立中学校・県立中等教育学校前期課程・県立特別支援学校中学部の第2・3学年の生徒を対象に、検証テストを実施しました。3年生は7月と11月の2回、2年生は2月に1回、実施しました。

2 英語教育推進校(今治西高校)

 英語の授業全般において、タブレット端末を活用し、その視覚的要素を最大限に活用して、特に、「聞く」「話す」の技能の向上を図るとともに、「バランスのとれた4技能の育成」「英語によるコミュニケーション能力の育成」「グローバル人材の育成」のための研究を行いました。

<タブレット端末を使った外国人講師との1対1の英会話>
3 英語教育フェスタ

 8月7日(月)に、にぎたつ会館(松山市)において、英語教育フェスタを開催しました。高大接続改革等に関する最新の英語教育についての講演や、大学入試等における外部検定試験の活用状況についての説明を行いました。また、今治西高校の先生からは、英語教育推進校としての取組状況について報告がありました。県内全ての県立高校及び中等教育学校の生徒・教員133名が参加予定でしたが、台風の影響のため、参加者は46名でした。
 参加した生徒の皆さんからは、「実際に英語を使う場面で必要とされている英語力を、普段の授業の中で身に付けていきたい。」「外部検定試験が大学入試や就職のときに重要であることが分かった。」などの感想が寄せられました。

4 チャレンジサマースクール

 8月2日(水)から4日(金)まで、えひめ青少年ふれあいセンター(松山市)において、2泊3日の英語キャンプを実施しました。県内の高校及び中等教育学校の生徒90名が参加し、12名の外国人英語指導者と英語を使って様々な活動を行いました。
 参加した生徒の皆さんからは、「外国人英語指導者の方に積極的に話しかけられるようになった。」「言いたいことを伝えられるようになった。」「間違いを恐れなくなった。」などの感想が寄せられました。また、実施後のアンケートでは、参加した生徒全員から、「チャレンジサマースクールは楽しかった。」と回答がありました。

<活動の様子>
5 外国人講師等による英語力向上講座

 この講座は、県立高校・中等教育学校が、授業、ホームルーム活動、放課後の部活動等に、県内在住の外国人の方(留学生、英会話学校講師等)などを講師として招き、英会話の練習やディスカッションを行ったり、異文化交流を行ったりするものです。
 実施した学校からは、「異文化に興味を持ち、積極的に意思疎通を図ろうとする態度が育成できた。」「他国と密接なつながりがあることを理解し、様々な価値観を尊重する態度を養うことができた。」「単に『英語を話す』のではなく、『英語で議論』を交わすことができた。」などの感想が寄せられました。

6 TOEICチャレンジ(チャレンジ校:今治西高校・松山東高校・宇和島東高校)

 チャレンジ校の普通科・理数科に在籍する高校3年生が、7月から9月にかけて、TOEIC(公開テストまたはIPテスト)を受検しました。
 チャレンジ校からは、「行間を読んだり、背景を考慮して理解したりすることなど、より実用的な英語運用力に目を向けるよい機会になった。」「英語の資格取得に対する生徒の興味・関心が高まった。」「生徒たち自身が、今後の英語学習の取り組み方を考えるよい機会になった。」などの報告がありました。

7 愛媛県小中高生英語力向上委員会

 2月23日(金)に、えひめ青少年ふれあいセンター(松山市)において、愛媛県小中高生英語力向上委員会を開催しました。82名(小学校・中学校・高等学校・中等教育学校の教員、教育事務所・市町教育委員会の職員)が参加し、講演、成果報告、研究協議を行いました。
 参加者の皆さんからは、「小中高の学習指導要領の改訂内容等がよく分かった。」「TOEICチャレンジ校の成果を聞くことができ、参考になった。」「小中高の連携の必要性を強く感じた。」などの感想が寄せられました。


<愛媛大学 池野修教授
による講演の様子>

<成果報告の様子>

<研究協議の様子>