学校紹介
「好きです!松中」

松野町立松野中学校 教頭  松本 恵一

1 はじめに

 松野中学校は、愛媛県の南西部に位置し、人口4千人あまりの愛媛県で一番小さい自治体松野町にある唯一の中学校です。学級数4、生徒数92名の小規模校です。5年前に冷暖房完備の木造校舎が新築されました。素晴らしい環境の中で、生徒会が「好きです!松中」のスローガンを掲げて、生徒はのびのびと学習や運動に取り組んでいます。
松野町からは、「子どもたちの夢が広がる“森の国”」を教育・子育ての重点施策として、学校教育に物心両面の惜しみない支援をいただき、多様な教育活動を展開することができています。

2 繋ぐ伝統、創る未来

 (1)創立50周年

 本校は、昨年創立50周年を迎えました。歴代PTA会長を中心とした実行委員会を立ち上げ、1年にわたる松野中学校区切りの行事を企画しました。生徒会で決定した「繋ぐ伝統 創る未来 さらなる高みへ 燃やせ 松中魂」のテーマのもと、5つの記念行事を行いました。

① 各部活動の招待試合

    

 本校5つの運動部が、他校チームを招き練習試合を行いました。女子バスケットボール部は、人数が少なくチームが組めないため、「本物実感体験」として、愛媛オレンジバイキングスの選手と交流しました。

② 記念体育祭の実施
 生徒が創った生徒会の歌「空へ」の創作ダンスを披露しました。午前最後の演技は、保護者、地域住民と共に「松野音頭」を踊りました。その後、人文字をドローンで空撮しました。
③ えひめ国体の応援
  隣町が会場となった愛顔つなぐえひめ国体少年女子バレーボール決勝戦を観戦し応援しました。トップレベルのプレーを目の当たりにして、会場の雰囲気も味わうことができました。

④ 記念式典・記念文化祭の実施

 11月18日に創立記念式典を挙行しました。松野町長を始め多数の御来賓をお迎えして厳粛に行いました。その後、株式会社プロテックスジャパン社長の講演、記念もちまきで保護者や地域の人と50周年を祝いました。
 翌19日は、文化祭です。50年の歩みを紹介する展示や舞台発表を行いました。とても賑やかで盛り上がった1日を過ごしました。

⑤ 記念誌発行

 1年をかけて松野中学校50年の歴史を93ページに凝縮した記念誌を編集して発行しました。昔を知る保護者や地域の方にはとても懐かしんでいただき好評でした。


 創立50周年という記念すべき1年、温故知新のとても充実したものでした。松野中学校は、松野町やたくさんの人に見守られ、支えられているということを強く実感することができました。

 (2)中学生の会社

 本校は、3年前に株式会社を立ち上げました。といっても起業家教育として3年生が社員であり、株主となる仮想の会社「株式会社松野中学校」をつくり、松野町の特産「しいたけ」等の生産から販売までを手がけるというものです。活動は以下のとおりです。

① 職業調べ

 本物との出会いとして、行政や会社社長、銀行支店長、しいたけ生産者の講演を聴き、職業や起業に対して知識を広げ、意識を高めます。そして、社長、部長の選挙を行います。

② 会社の設立
 いよいよ会社の立ち上げです。入社式では、教育長をはじめお世話になる方々をお迎えして、社長所信表明、「製造管理部」「経理会計部」「企画開発部」「広報宣伝部」の部長及び所属社員の発表をします。生徒は、気持ちを引き締め、これからの活動に期待を抱いて参加します。この時期に企業見学も行います。

③ 社員研修

 職場体験学習を組み入れます。町内外のいろいろな職場に分かれて2日間の実習を行います。今年度は、ジョブチャレU-15に絡めて、出向して5日間の職場体験学習を行います。そして、文化祭で研修発表と情報発信として、舞台発表を行います。

④ 販売活動とまとめ

 会議で販売価格を決め、販売戦略を練ります。販売は文化祭です。並行して育てたさつまいもやだいこんも販売します。平成29年度は、道の駅にも出品しました。原木しいたけは評判でした。

    
 また、森の国ホテルの計らいで、テーブルマナー教室を開いてもらい、生産したしいたけを使った本格的なコース料理を堪能しました。
 年度末に社員(株主)には給料(配当)として図書カードが渡されます。社員は、1年間頑張った報酬に喜びもひとしおです。最後にお世話になった関係者を招いて、報告会を開きます。その道のプロからいろいろな意見をいただき、反省は来年度へとつなげます。
 3年目ともなると先輩の活動を見た生徒達は、自らこうしたいという思いが表れています。栽培や販売、収益向上への工夫や発想の展開に期待が持てるところです。加えて、昨年度はこの活動で、キャリア教育文部科学大臣表彰を受けることができました。
 しかし、忘れてはならないのは、たくさんの方の支えで活動が成り立っているということです。松野町教育委員会や松野町林業研究グループをはじめとする関係機関の方々のお陰です。感謝の気持ちを忘れないようにしたいものです。

 (3)自分たちにできること

 多方面からたくさんの支援を受けている松野中学校です。今年度は、地域貢献を教育の重点にしています。生徒総会において“「やらされる」活動から「やる」活動へ”をスローガンに積極的にボランティアに参加しようとまとまりました。





① ボランティア通帳
 自分が活動したボランティアの内容を記録し貯めることにより、自分がどれくらい学校や地域に貢献したか、目に見えて分かるものです。
② 今こそ松中生の力を
 6月28日から7月8日頃にかけての豪雨は、西日本に甚大なる 被害をもたらしました。松野町も多くの方が浸水被害に遭われました。9日午後は、全校生徒が、地域でボランティアをしました。生徒自ら地域の方に声を掛け、率先して活動しました。御高齢の方から「この歳になってなぜこんな目に遭うのか生きる希望も失せていたが、子ども達に元気をもらいやる気が出てきた」とおっしゃいました。ボランティアをした子ども達にとって、このような言葉は一番のねぎらいだと思います。
3 おわりに

 創立50周年のテーマ「繋ぐ伝統 創る未来 さらなる高みへ 燃やせ 松中魂」は、松野中学校の目指す姿です。過去に浸るだけではなく、さらに前を向き成長する松中生が見えてきます。「身はたとえ 武蔵の野辺に朽ちぬとも 留めおかまし 大和魂」は、吉田松陰の「留魂録」に残されている句です。先輩が培った松中魂、さらにこれから創られる松中魂は、いつまでも心に引き継がれていくのではないでしょうか。
 教職員一同「今日も行きたい学校 今日も行かせたい学校 今日も働きたい学校」のため、松野中学校の教育に全力を尽くします。
 本校ホームページもぜひ御覧ください。
 https://matsuno-j.esnet.ed.jp/