特集

平成30年度西条高校 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業紹介
高校教育課
文部科学省人権教育研究指定校事業報告(伊予市立郡中小学校)
人権教育課
文部科学省人権教育研究指定校事業報告(今治市立大島中学校)
人権教育課
特別支援学校文化芸術支援事業「雨ニモマケズ」
特別支援教育課
平成30年度西条高校
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業紹介
1 スーパ―サイエンスハイスクール事業について
 この事業は、文部科学省の支援を受け、高等学校等において先進的な理数教育を実施するとともに、大学との共同研究や国際性を育むための取組を推進するものです。
 また、創造性、独創性を高める指導方法や教材の開発等に関する研究も目的としています。
 この事業では、文部科学省から、科学技術振興機構(JST)を通じて、研究のための資金及び情報の提供等、事業推進に必要な支援を受けることができます。
2 西条高校スーパーサイエンスハイスクールのコンセプト
 西条高校では、本年度から平成35年度までの5年間SSHの指定を受け、総合高校として学校全体で課題研究に取り組むことで、探究心と国際的視野を広げるとともに、地域を誇りに思い、地域に貢献し、世界で活躍できる総合力を身に付けた「マルチリーダー」の人財育成を図ることを目的としています。そして、この目的を達成するためのカリキュラム開発と、生徒全員が課題研究に取り組むことができる支援体制、組織づくりについて実践研究していきます。
3 今年度の活動紹介
《SSHロゴマーク》   テーマ「水・宇宙・DNA」
 Sは、水の都西条の水の流れと宇宙をイメージしています。また、縦長のSとHは、生命の源DNAと雲から頭を出す石鎚山を表しています。宇宙と生命が織りなす世界観と、探究を通して新たな真理を発見する西条高生の取組をシンボリックに表現しています。
《地域課題入門講座》
 5月1日に、西条市との連携キックオフイベントとして、市役所若手職員の方々に、「防災」「経済」「国際」「医療」の4分野に関する地域課題についてリレー講演を行っていただきました。

(生徒から職員の方々への質問事項)
・西条市では、どの程度の火災発生が予想される?
・どの産業分野の人材が最も不足しているの?
・国際交流の意義や利点って?
・外国人の子どもたちへの日本語教育の対策はどうなっているの?
・高齢者など、体の不自由な人が健診に行くことができない場合はどうするの?
・西条市の医療機関は、全国的に見て充実している?
《防災基礎講座1・2》
「西条市の防災~死ぬな・逃げろ・助けろ~」
西条市役所危機管理課 課長 森本 素史 氏
 5月8日、10日の2回に分けて、防災に関する基礎講座を実施しました。
 この講座では、南海トラフ地震における西条市の被害想定について詳しく教えていただきました。西条市では、震度6強となり、津波の被害も甚大で、浸水や液状化現象が広範囲で発生すると予測されているそうです。実際に、東日本大震災や阪神淡路大震災での揺れを映像で見せていただき、地震の恐ろしさを改めて感じました。
《防災基礎講座3》
「リスク・コミュニケーションと災害シミュレータによる地域防災の向上」
愛媛大学防災情報研究センター 二神 透 氏
 5月24日、第3回目の防災基礎講座が実施されました。防災計画の策定では、国が計画を立案するトップダウン型から、地域住民が自分たちの地域に合った計画を立案するボトムアップ型へと移行しているそうです。そのため、地域において、防災意識の普及啓発と人材育成のための活動が必須であると教えていただきました。
《企業見学》
 7月10日、企業訪問を行いました。現場の研究者や技術者の方から、具体的な業務内容や仕事のやりがい、魅力について説明を受けた後、施設を見学させていただきました。
・1組:花王サニタリープロダクツ愛媛株式会社
・2組:今治造船株式会社
・3組:住友重機械工業株式会社愛媛製造所
・4組:株式会社サイプレス・スナダヤ
・5組:株式会社トップシステム
・6組:四国電力株式会社本川発電所
・7組:株式会社クラレ西条事業所
《経済基礎講座》
 西条地域の経済や観光に関する現状や今後の課題について、3名の講師の方に講演を行っていただきました。
「地域産業と仕事について」 西条市役所産業振興課産業人財係 副主査 久保 結貴 氏
「観光振興と課題について」 西条市役所観光振興課観光戦略係  係長 越智 浩二 氏
「科学と社会の連携-地域社会の持続可能な発展に貢献するために-」
愛媛大学社会共創学部長 西村 勝志 氏
《科学体験研修》
 夏季休業中、関東・関西・九州方面へ科学体験研修に行ってきました。先進的な科学技術研究を行う大学や施設等を訪問し、講義や体験活動を通じて科学技術への関心が高まりました。


(関東研修:8月1日~3日)
 ・日本科学未来館
 ・宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 ・国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)
 ・東京大学本郷・柏キャンパス
(関西研修:8月7日~9日)
 ・理化学研究所
 ・大型放射光施設
 ・SPring-8
 ・計算科学研究センター
 ・SSH生徒研究発表会
(九州研修:8月15日~17日)
 ・福岡ヤクルト工場
 ・福岡市科学館
 ・エフピコ九州選別センター
 ・中四国九州理数科課題研究発表大会
《国際基礎講座》
 今回は、「防災」「経済」に続き、3つ目のテーマである「国際」について、西条市役所地域振興課の石村 美歩 氏に基調講演を行っていただき、「地域における外国人と防災」や「国際交流と地域課題」について学習しました。
《医療基礎講座》
「地域課題連携講座~西条市の医療・福祉~」 西条市健康医療推進課 三瀬 愛美 氏
「西条市を取り巻く医療環境と地域医療への取組」 西条市健康医療推進課 白石 元   氏
「医療職現場から伝えたいこと」 西条市健康医療推進課 伊藤 ゆり  氏
《プレ課題研究》
 「防災」「経済」「国際」「医療」をテーマとした学習を踏まえて、さらに知りたいことや解決すべきことなどについて、これから3学期にかけてグループで研究を進めていきます。
 この活動は、2年生の「マルチサイエンスⅠ」に向けた事前学習であり、2年生では、1年間を通じて、生徒全員が週2時間、課題研究に取り組みます。
《オンライン英会話》
 1年生は、月に1回、インターネットを介して、フィリピン人の講師の方とマンツーマンで英会話レッスンを行っています。
《イギリス・スタディーツアー》
 1年生18名が、12月3日~12日の間、イギリスを訪れ、ケンブリッジ大学をはじめとした英国の研究機関及び現地の教育機関等で研修を行いました。


文部科学省人権教育研究指定校事業報告
自分も周りの人もかけがえのない存在であることを自覚し、
具体的な態度や行動に表すことができる児童の育成

伊予市立郡中小学校

1 はじめに
 本校では、「人権教育の指導方法の在り方について[第3次とりまとめ]」の趣旨を踏まえ、全ての児童の自尊感情を高め、様々な学習を通して、正しく理解し、判断し、自分も周りの人も大切に思うことができるようにするとともに、その思いを具体的な態度や行動に表すための方法や技能を児童に身に付けさせたいと考え、人権・同和教育を推進してきました。
2 実践内容
(1) 教職員研修
ア 日常研修
 校内の人権・同和教育の研修の他、伊予市内で開催される「伊予市教職員人権・同和教育研修会」「伊予市オピニオンリーダー研修会」「伊予市地区別人権・同和教育懇談会」「人権啓発土曜講座」「扶桑会館人権教育講座」等だけではなく、市外で開催される研修会にも人数割り当て等を図ることなく、自然な形で教職員が声を掛け合って参加し、学習を深めています。学習後は、職朝、校内LANなどで、学んだことを伝え合うようにしています。

<大島青松園現地研修会の様子>
イ 国立療養所大島青松園現地研修(H29.9)
 本校教職員有志が、現地研修を実施しました。フィールドワークをするためには、事前の研修が必要です。そこで、校内研修で入所者の方に対する差別について学習した後、研修に臨みました。今回初めて現地を訪れる教職員もおり、差別の現実を目の当たりにし、差別への憤りを心に刻むことができました。
(2) 授業づくり部の取組
ア 人権が尊重される授業づくりの視点
 授業づくりに際しては、「人権が尊重される授業づくりの視点」を作成し、本校教職員の指針としました。これは、「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]実践編」(文部科学省「人権教育の指導方法等に関する調査研究会議」H20.3)にある「人権が尊重される授業づくりの視点例」を参考に本校において加筆、修正し、作成したものです。
イ 授業実践

<第6学年道徳科の意見交換の場面>
 人権教育を通じて培われるべき資質・能力について、三つの側面(知識的側面、価値的・態度的側面、技能的側面)から各学年の同和問題学習の系統性を図りながら授業づくりを進めました。具体的には、1年生(大切な自分、異学年交流)、2年生(家族、高齢者との交流、命)、3年生(仲間づくり、ふるさと)、4年生(障がい者理解と交流、LGBT)、5年生(HIV感染者・ハンセン病に関する問題、情報社会における人権、男女の協力)、6年生(同和問題、アイヌ、外国人、拉致問題)などです。
 日々の授業実践はもとより、2年間で計7回の人権・同和教育授業研究会をもち、指導主事、他校の人権・同和教育主任のご参加、ご指導を受けながら、授業づくりに全校体制で取り組みました。社会科や総合的な学習の時間では「正しい理解」を図り、学級活動では「一人では困難と思えることも、仲間と一緒なら行動できる具体的実践」を体感し、道徳科では「何が正しいかは分かっているが、態度や行動に移すことができない自分」を振り返ることができるような授業ができつつあります。
(3) 仲間づくり部の取組
ア 学級における構成的グループエンカウンターの推進
 月に1回、朝の時間(10分程度)を「きらきらタイム」と設定して、各学級において構成的グループエンカウンター(以下、学級エンカウンター)を行いました。本校は、各学年が約150名以上在籍しており1年ごとにクラス替えがあるため、毎年、新しい友達関係をつくり、素直に自分を表現できるような支持的風土を育む必要性があります。学級エンカウンターは、児童や教師からもコミュニケーションを深める方法として定着してきました。

<集会で人権劇を発表する様子>
イ 人権集会の取組
 児童が主体的に活動し、人権課題の解決に向けた実践力を高めるために、児童会組織の中に「なかよし人権委員会」を位置付け、児童会で決めたスローガン「いじめなし 笑顔あふれる 郡中っ子」の実現を目標に活動しています。ここ数年は、児童にとって一番身近な人権課題である「いじめ」をテーマとして取り組んできました。人権委員の視点で捉えた「いじめ」の問題を、人権創作劇にして全校児童に発表し、共感的に理解しながら、課題解決に向けた意見交流ができるようにしました。
(4) 地域連携部の取組
ア 家庭と連携した同和問題学習をはじめとする様々な人権学習
 保護者の受けてきた同和教育と現在のものとは違いがあるため、保護者は児童と同和問題について話すことへの不安があるようです。そこで、子どもたちが実際に受けている人権・同和教育の現状について理解してもらうために、6年生の同和問題学習『百年のバトンを受け継いで』の授業への参加を全家庭及び地域に呼び掛けました。
 授業では、まず、これまでの同和問題学習を児童に想起させました。そして、被差別部落出身のゲストティーチャーの話を聞き、児童自身の考えを深め、今後、自分たちがどのように取り組めるか話し合いました。その後、家庭に学習を広げるために家庭で同和問題について話し合うという課題を設け、保護者を巻き込んだ展開にしました。この学習に保護者・地域の方・他校の人権・同和教育主任も参加し、学校での人権・同和教育の取組について理解を図りました。
イ 人権・同和教育参観日、人権・同和教育学習会

<人権・同和教育学習会の様子>
 参観授業後、PTA成人教育部と連携して、人権・同和教育学習会を実施しました。200名近くの保護者、地域の方、教職員が参加し、講話という形ではなく、郡中校区民生児童委員、郡中小PTA会長、郡中小PTA成人教育部副部長、郡中小教諭、子ども会保護者の方によるパネルディスカッションを行いました。今まで自分が経験、体験したことを交えながら、それぞれの立場で同和問題学習に対する思いを述べ合いました。
3 おわりに
 児童が将来部落差別と出合った際、「それは間違っている。差別である」と言える人間であるためには、今、正しい人権・同和教育を行う必要があります。それは「部落差別を教える」だけでなく、「この問題は、差別をなくそうとする仲間がいれば解決できる問題である」という解決に向けて明るい展望に立った確固たる意識を形成することです。そのための同和問題学習であり、仲間づくりであり、地域連携であると考えます。このことについて、今後も教職員が共通理解を図り、取り組んでまいります。

文部科学省人権教育研究指定校事業報告
互いの人権を認め合い、他者と共に学び合い支え合う生徒の育成
~自尊感情を高め、誰もが自分のよさや可能性を発揮できる集団づくりを通して~

今治市立大島中学校

1 はじめに
 本校が、研究を進めるにあたって特に意識したことは、「自分のよさや可能性を発揮できる集団づくり」です。共に学び合い支え合う生徒や集団を育てることで、互いの人権が尊重される、みんなが楽しい学校が実現でき、人権課題をはじめ、様々な課題の解決に向けて主体的に行動する意欲・態度・実践力を育成できると考えました。また、学習指導と生徒指導の一体化を図り、生徒が興味・関心をもって自ら学習に取り組むように意欲を喚起するとともに、互いのよさを認め合うことのできる指導方法の改善を進めました。これらを実践することにより、自他共にかけがえのない存在であることを実感できる自尊感情を育むことで、人権意識を高め差別解消への実践力を身に付けた生徒が育つと考え、次のような取組を行いました。
2 授業改善部会の取組
(1) 生徒の実態把握とその変化
 昨年度の生徒を対象に実施した授業に関するアンケート結果を基に、本校の課題や問題点を把握し、今年度、同時期に行った調査結果との比較を試みました。
(2) 人権・同和教育全体計画及び年間指導計画の見直し改善
 生徒や地域の実態を踏まえ、同和問題学習を始めとする様々な人権学習を明確に位置付けるとともに、各教科等と人権・同和教育との関連の明確化を図りました。
(3) 人権が尊重される授業づくりのための工夫と改善
 ユニバーサルデザインの観点からの授業改善や自分の考えや思いを表現し合う場の設定の工夫等を中心として、生徒の自尊感情を育成するために「ユニバーサルデザインの観点を取り入れた人権が尊重される授業づくりの視点」を作成し、教職員の意識統一を図りました。
(4) 道徳・特別活動等における取組
 各学年の発達段階に応じた学習の実践について研究推進委員会で検討し、人権参観日や研究授業を基に、各学年部で学習内容・授業展開の工夫と改善について研究しました。
(5) 参観授業後アンケート
 教科の授業と同様に道徳の時間の授業参観後にも保護者・地域・関係機関の方々にアンケートによる評価をしていただき、以後の授業改善に役立てました。保護者もただ自分の子の様子を見るだけでなく、授業の評価者として参加してもらうことで、保護者・地域の人権教育への理解が深まったように思われます。
3 集団づくり部会の取組
(1) 生徒の実態把握と考察
 「互いに認め合い支え合う集団づくり」を目指し、生徒個々の状況をより詳しく把握するために、Q-U調査や自尊感情調査を行いました。
(2) 生徒が主体的に取り組む生徒会活動の充実
 生徒の提案により、人権スローガンや「大島中人権宣言」を作成し、生徒集会で唱和したり、校内に掲示したりして、人権意識の高揚を図っています。
(3) 自他を認め合い思いやりの気持ちを育てる異年齢集団での行事への取組
 運動会、文化祭での合唱コンクール、吉海認定こども園・吉海小・大島中学校合同避難訓練では、3年生のリーダーを中心に意欲的に活動しています。互いに協力することで、仲間意識が育ち、自己有用感や集団への帰属意識も培われたように思われます。
(4) 人権についての豊かな感性を養う体験活動
 高齢者疑似体験、車椅子体験、トラストウォーク、手話・点字体験、認知症サポーター養成講座、ツインバスケット等の体験を行い、地域の福祉の現状を知ることができました。ました。その後、地域の高齢者福祉施設を訪問し、施設利用者や職員の方々とコミュニケーションを図りました。これらの体験を通して、生徒一人ひとりの相手の立場を考えた言動や、思いやりの心が育ってきました。
(5) いじめをなくすための各校との交流
 今治市小中学生会議やいじめSTOP愛顔(えがお)の子どもフォーラムへ代表者が参加し、いじめをなくすための各校での取組や今後の活動について話し合いました。代表として、堂々と自校の取組を発表したり、他校の活動から学んだりしながら、いじめ防止について自分のこととして考えることができました。
(6) 人権を尊重する環境づくり
 校内の掲示板や生徒玄関等に人権コーナーを設け、人権だよりや人権メッセージ・人権標語等の生徒作品を提示し、生徒の人権に対する意識を高めています。また、各学級で工夫して、一人一人を大切にした人権コーナーの充実を図っています。
4 地域連携部会の取組
(1) 地域の実態把握と考察
 学校で学ぶ人権教育をより効果的で深まりのあるものにするためには、生徒を取り巻く家庭・地域の人権啓発を、生徒を通じて進めることが必要であると考えました。また、生徒たちには人を集める力があり、伝える力をもっていることに気付かせ、そのことが自らが主体となれることを実感し、差別解消への実践力の育成になると考えました。
(2) 保護者との連携
 毎年、夏休み前の地区別懇談会では、保護者と教職員で人権に関する研修を行っています。研修内容は、毎回保護者が人権について興味や関心をもつような資料や話題を取り上げ、意見を出しやすいように工夫しています。また、人権・同和教育参観日を学校・保護者・地域の人たちの研修の機会と捉え、当日は行政や人権協議会などの関係諸機関の人たちにも参加していただいています。ホームページでは、人権に関する行事や授業の様子等、学校での学びを保護者・地域へ発信しています。
(3) 地域との連携
 毎年、夏休みに吉海町の高齢者総合福祉施設と特別養護老人ホームで夏祭りのボランティアを行っています。吉海地域では、年に1回開催される人権フォーラム(地区別懇談会)に全教職員が参加しています。学校での人権学習や生徒の活動の様子を伝え、地域の方から直接意見を聞くことができる貴重な研修の機会となっています。今治市人権教育協議会吉海支部主催の「人権フェスティバル」に、全校生徒が参加しています。人権福祉委員会と3年生有志による人権啓発劇を上演しています。
5 おわりに
 以前から取り組んできた全ての行事、生徒会活動、日々の授業等を人権・同和教育の視点から見直し、改善を重ねることで教職員の意識が変わり、生徒一人一人の意識の変化を感じることができました。差別をしない生徒ではなく、差別解消のために行動しようとする生徒を、これからも育てていきたいと思います。今回の研究の成果と課題を踏まえ、これからも全教職員で更に人権・同和教育の推進に努めます。よりよい社会の実現に向けて行動を起こすためには、身の回りの差別や偏見をおかしいと思える人権感覚が必要です。今後も、実践の根拠となる学習を重ねながら、人権感覚をさらに磨いていきたいと思います。そして、差別解消に向けて立ち上がった先人を郷土の誇りとし、その思いや行動を受け継いで、正義を通す実践力の育成に努めたいと思います。

特別支援学校文化芸術支援事業「雨ニモマケズ」
 県教育委員会では、知的障がい特別支援学校高等部の生徒と地域の高等学校の生徒を対象に、坊っちゃん劇場の協力のもと、オリジナルミュージカル創作のためのワークショップを計画的・継続的に実施することで、社会性や豊かな人間性を育むとともに、障がい者理解の促進を図ることを目的として、「特別支援学校文化芸術支援事業」に取り組んでいます。
 今年度は、県立宇和特別支援学校知的障がい部門高等部2年生と県立宇和高等学校2年生が合同で、年間を通じたワークショップを受け、活動を通して創り上げたオリジナルミュージカルを公演しました(両校とも「総合的な学習の時間」等に一つの単元として本ワークショップを位置付け)。それでは、その取組について紹介します。

<ワークショップの実施> 生徒が変わった!?ミュージカル公演を目指して
 両校合同でのオリジナルミュージカルの公演を目指し、坊っちゃん劇場の劇団員等の指導のもと、4月から翌年1月までの間、演技や歌唱練習、舞台稽古などのワークショップと公演後の活動の振り返りを行うワークショップを、全17回実施しました。
 最初のうちは講師の質問や呼び掛けに対して、声も小さく恥ずかしそうにしていましたが、ワークショップを重ねるごとに交流の雰囲気に慣れ、活動を楽しめるようになりました。特に、宇和高校の生徒は、恥ずかしさのあまり、人前で自己表現することにためらいがありましたが、宇和特別支援学校の生徒の意欲に感化され、積極的な姿勢が見られるようになりました。そのうち、両校の生徒が打ち解けあい、楽しく会話する姿や、互いのよいところやがんばりに気付き、認め合う姿も見られるようになりました。5月の終わりには、キャストの発表があり、6月からは本格的な練習が始まりました。

生徒全員による合唱練習

個別の演技練習
 9月からは、グループに分かれての台詞や演技のやりとり、本番さながらの演出が加わっていきました。グループ内で両校の生徒が、互いに助け合う姿が見られるようになり、自分たちがミュージカルを創るという自覚を強くもつようになってくると、自分の力が必要だと感じ始め、自信をもって取り組むようになりました。

グループ別練習

講師による演技指導
 なお、これらワークショップを実施するに当たっては、両校教員と講師等関係者による担当者会議を活動終了ごとに開き、そこで活動の振り返りや今後の取組について情報共有を図りました。また、本人が得意としているところや苦手なところ、負担に感じているところなど、生徒全員がよりよい活動となるよう細部まで確認を行いました。

<成果発表> 不安から自信へ!一人一人の可能性を地域へ発信!
 12月14日、西予市宇和文化会館大ホールにおいて、オリジナルミュージカル「雨ニモマケズ~雨山と賢治の夢100年~」を上演しました。当日は、保護者や地域の方々など県内から約1,000人もの来場がありました。会館を埋め尽くした観客からは、称賛の拍手や多くの言葉を掛けられ、生徒たちは練習の成果を最大限発揮できた喜びにあふれ、大きな達成感を感じることができました。

【観覧された方々(一般来場)の感想】
〇 心のこもった演技、セリフ、歌に感動し、心が震えた。子供たちそれぞれが輝き、とてもよい顔をしていた。
〇 いろいろな生徒がいて、楽しそうにミュージカルに取り組んでおり、素晴らしいと思った。最初からできないと思いがちの私の心に響いた。
〇 たくさん練習したことがよく分かり、両校の生徒が共に創り上げたことが素敵だった。互いに交流することができ、よい機会になったと思う。

 観覧された方々の感想にもあるように、生徒が自分の力を発揮し、力いっぱい表現する姿を見て、一人一人のもつ可能性を広く知ってもらう機会となったことは、地域社会への障がい者理解の促進につながったと思います。

宣伝ポスター

ミュージカル公演のワンシーン

<取組を終えて> 同じ仲間たち、共に支え合う社会へ!
 本事業に参加した生徒たちは、互いに交流を深めながら、オリジナルミュージカルを創り上げ、大舞台での発表を体験することができました。それぞれの役割を遂行する中で、学校を超えた連帯感が生まれ、互いの得意なことや苦手なことを認め合い、協力し合う姿が随所に見られるようになりました。
 宇和特別支援学校の生徒からは、「自分なりにできて最高のミュージカルとなった。これからの学校生活でも自信をもって取り組んでいきたい。」という感想を聞くことができ、活動を通して自己肯定感を高め、将来的な自立と社会参加に向けた主体的な態度を身に付けることができたのではないかと思います。
 宇和高校の生徒からは、「最初の頃、特別支援学校の生徒への関わり方に困っていたものの、交流する回数を重ねるうちに相手のことが分かってきて活動することが楽しかった。」という感想を聞くことができ、生徒が体験の中から視野を広げ、豊かな人間形成を図ることができたのではないかと思います。
 両校には、互いを尊重し合い、共に支え合う意識が醸成しています。